えすどぅあ

コンサートやオペラの感想を中心とした音楽日記になったかなあ・・・。

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バイエルン国立歌劇場 タンホイザー R.ギャンビル/メータ

昨日の一本目に続き、2005年秋冬ワーグナー三昧シリーズ早くも2本目。バイエルン国立歌劇場来日公演のオープニングを飾るタンホイザーを聴きに上野へ。
ミュンヘン・オペラ バイエルン国立歌劇場日本公演 2005 タンホイザー

リヒャルト・ワーグナー「タンホイザー」全3幕

領主へルマンマッティ・サルミネン
タンホイザーロバート・ギャンビル
ヴォルフラム・フォン・エッシェンバッハサイモン・キーンリサイド
ヴァルター・フォン・フォーゲルヴァイデウルリッヒ・レス
ビッテロルフトム・フォックス
ハインリッヒ・デア・シュライバーケネス・ロベルソン
ラインマル・フォン・ツヴェータースティーヴン・ヒュームズ
エリーザベトアドリアンヌ・ピエチョンカ
ヴェーヌスワルトラウト・マイヤー
羊飼いテルツ少年合唱団メンバ
4人の小姓TOKYO FM少年合唱団メンバ

ズービン・メータ指揮バイエルン国立管弦楽団
バイエルン国立歌劇場合唱団
(合唱監督:アンドレス・マスペロ)
バイエルン国立歌劇場バレエ団

演出デヴィッド・オールデン

2005年9月24日 15:00 東京文化会館 大ホール
全曲を聴き終わって頭の中に浮かんだ言葉は「底力」。バイエルン国立歌劇場というカンパニーの揺ぎ無い「底力」を存分に堪能させてくたタンホイザーの上演。何といってもメータ指揮するオーケストラと合唱の素晴らしいことといったらない。「うーむ、もっとこだわってくれい!」とコンサートを聞くたびに不満に感じていたメータの指揮、今日は骨太で逞しいスケール感の大きな音楽作りを徹頭徹尾貫いた棒、こういう音楽をあなたから聴きたかったんですよマエストロ。その気迫溢れる棒にオーケストラも渾身の演奏で応え、深く暖みのある音色と腹にずしり堪える迫力、様々な場面で大きなスケール感が矮小化されない的確な表情付け。メータとのコラボレーションもお互いの良い面をうまく補う方向に作用していました。合唱もオーケストラ同様に深々とした声、ピアニッシモからフォルティッシモまで圧倒的なスケール感で歌われる素晴らしさ。女性はややヴィブラートがややきつい感じがありますが、男声合唱は第2幕後半のソリストとのアンサンブルの迫力、第3幕の滔々とした流れを聞かせてくれたを巡礼の合唱と格別の味わいを聞かせてくれました。オーケストラと舞台上の合唱とのアンサンブルのずれも若干ありましたが、小手先で合わせるようなことはしないで堂々と。双方共にゆるぎない自信に満ちていていて感心しきりでした。

これほど確固たる土台を基に歌うソリスト達も端役に至るまで粒揃い。しかもその粒が大きい(でかいというべきか)、不安定さはいささかも感じさせません。第1幕のテルツ少年合唱団のメンバの一人が歌った羊飼いでさえも、実にしっかりとした歌唱で暗めの雰囲気が漂う舞台に一筋の光をもたらしていました。それに較べると歌合戦の開始を告げる小姓を歌ったTOKYO FM合唱団メンバの4人はちょっと音程が低めだったかなあ、あと2公演頑張って(笑)。

タイトルロールのタンホイザーを歌ったのはロバート・ギャンビル。他の主役級の歌手達がなんとも素晴らしすぎるので、ほんの少しだけ聴きおとりがするのは致し方ないところ。でも力強さと憂いを感じさせる声で、現代人の病んだ心をタンホイザーひとりに背負わせたような演出に合致した歌と演技を披露してくれました。特に、ローマ語りは素晴らしい歌唱だったと思います。高い声の安定性がもっと増せば、更に素晴らしい歌唱になったと思います(もちろん充分水準は高い歌唱なのですよ、聞き手の欲です(笑))。

領主へルマンはマッティ・サルミネン。堂々とした風格を持つ声は領主へルマンにぴったりの素晴らしさ。昨日のマイスタージンガーでポーグナーを歌ったハンス・チャマーも素晴らしかったけど、この人は今日の印象からするとそれ以上の素晴らしさ。

ヴォルフラム・フォン・エッシェンバッハはサイモン・キーンリサイド。はっきりとした輝きとまろやかな響き、その両方を巧みに使い分けていました。あるときは厳しく、またあるときは優しく。タンホイザーに対するヴォルフラムの心情を見事に歌い演じた素晴らしさ。今日一番感心したのはこの人。モネ劇場来日公演のドン・ジョヴァンニも楽しみ。

エリーザベトはアドリアンヌ・ピエチョンカ。この人も豊かな声量に裏付けられた表現力豊かな歌唱が素晴らしいですね。意志の強さを持った女性を見事に歌い演じておりました。

ヴェーヌスはワルトラウト・マイヤー。最初はやや声の潤いに欠けるきらいがあったものの、徐々に調子を上げていくところはさすが。演出との関係もあるのでしょうが、妖艶というよりは男に対して強く厳しく迫るイメージのヴェーヌスでしたね。

演出はデヴィッド・オールデン。全幕全場面において廃墟をイメージさせる舞台装置、第2幕の歌合戦にしても第3幕の幕切れにしても美化されたところは皆無。妖艶さとは無縁のヴェーヌスブルク、巡礼の人々が運ぶ大きな石、歌合戦でエリーザベトにちょっかいを出そうとする人達、等々人間の陰の部分にフォーカスを当ててあぶりだした演出だったように感じました。こういう演出は演奏に強さがないと、舞台に負けてしまうような気がします。今日の上演は舞台の表現の強さと音楽の強さが合致した素晴らしい上演だったと思います。
らいぶ | comments (9) | trackbacks (4)

Comments

コバヤシ | 2005/10/03 00:47
私もこの日見に行きました。私自身はあの演出は「??」でした。虚無感が強すぎるような。ギャンビルは今後期待ですね(連れは「タンホイザー」をルネ・コロで2回観てしまっていたので、「いまいち」とのことでしたが、比べるのが酷です)。キーンリサイドのヴォルフラムは少し線が細いのですが、現世のしがらみとタンホイザーとの友情、エリーザベトへの愛情との間で揺れ動く心を表現していたのがいちばん印象に残りました。
 実は「マイスタージンガー」も観に行ったのですが、どうも「紅白ホール」は音が悪くて……でした。
josquin | 2005/10/03 00:59
コバヤシさん、こんばんは。

> 虚無感が強すぎるような。

そうかもしれません、あの演出では誰も救われるような気がしませんから。

> 実は「マイスタージンガー」も観に行ったのですが、どうも「紅白ホール」は音が悪くて……でした。

私は昨日紅白ホールで聞いたのですが、残念ながらあまり楽しめませんでした・・・。

コバヤシさんの記事にTB打たせていただきました。
Honey | 2005/10/03 06:30
ふ~む、・・・こちらはマッティ・サルミネン氏を覚えておくよう努力します。
沢山覚えられそうもないので。f^^;
まーどんな | 2005/10/03 13:09
こんにちは、
いつも同様 josquin さんの鑑賞記を拝見して「タンホイザー」最終日に行ってきました。 整っていて上手いのですが、ガツンと来るものが無かったように感じました。メータの棒はこういうものなのかな・・・という気がします。たいした内容ではありませんがTBさせて頂きます。
josquin | 2005/10/03 21:59
Honeyさん。

> 沢山覚えられそうもないので。f^^;

外人さんの名前を覚えるのは難しいですよね。

まーどんなさん。

> 整っていて上手いのですが、ガツンと来るものが無かったように感じました。

初日は気迫が感じられたのですが、徐々に減衰していってしまったのでしょうか?メータ最終日のマイスタージンガーはいまひとつでしたし・・・。

TBうまくいきませんでしたか?gooさんからなら大丈夫だと思うのですが・・・。
まーどんな | 2005/10/03 23:02
粗忽者の私は、Trackback URL : という文字をも含めてコピペしてしまったので1回目はTBに失敗してしまってようです。今度はうまくいきました…。
josquin | 2005/10/04 00:05
スパム対策が悪さをしていたら申し訳ないと思っておりましたので安心しました。
神木 | 2005/10/09 13:30
いつもTBを返していただきありがとうございます。
勝手ながらリンク集に入れさせてもらいました。
《聞き手の欲》というものは罪深いですよね。もちろん水準以上だというのはしょうちしているのですけど。
今後ともよろしくお願いします。
josquin | 2005/10/09 23:38
神木さん、コメント&いつもTBありがとうございます。
そしてリンク集への追加ありがとうございます、もちろん無問題です。
「聞き手の欲」、本当に良いもの&好みのものを聞いてしまうと・・・余計に罪深くなってしまいます(笑)。

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