H.ベルナルディ/大野和士/ベルギー王立歌劇場管 ラヴェル/リムスキー=コルサコフ
海外の一流オペラハウスへの登場が次々と決まり、今後の活躍が大いに期待される指揮者大野和士。その大野和士が現在シェフを務めているのが、ベルギーの通称モネ劇場。待望の凱旋好演は23日に愛知で開始されたオーケストラ・コンサートからスタート今日はその大野/モネ管の横浜公演を聴きに桜木町へ。
大野和士指揮 ベルギー王立歌劇場管弦楽団大野和士の指揮でコンサートを聞くのは久しぶり。昨年1月の新日本フィルのサントリー定期に登場し、川島基晴とモーツァルトのプログラムを披露してくれた演奏会以来。
1. ラヴェル : ラ・ヴァルス-舞踏詩 2. : シェエラザード -トリスタン・クリングゾールの詩篇による声とオーケストラのための3つの詩 3. : ボレロ ----- 4. リムスキー=コルサコフ : 交響組曲「シェエラザード」作品35 -アンコール- 5. リムスキー=コルサコフ : 交響組曲「シェエラザード」作品35 から 第3楽章
ソプラノ : エレーヌ・ベルナルディ(2)
大野和士指揮 ベルギー王立歌劇場管弦楽団 (コンサートミストレス:タチアナ・サムイル)
2005年9月25日 16:00 横浜みなとみらいホール 大ホール
ベルギー王立歌劇場管弦楽団(モネ管)はチェロを外側にした通常配置、弦の編成はラヴェルのシェエラザードが14型だった以外は16型での演奏。
プログラムの前半はオール・ラヴェル。まずはじめはラ・ヴァルスから。ごちゃごちゃしてなんとなく混沌としたまま過ぎ去ってしまいがちな冒頭、大野とモネ管は木管を中心に各モティーフを明確に浮かび上がらせながら、舞踏会が始まる前のがやがやした雰囲気を見事に醸し出します。そして弱音器付の高弦に明確なメロディーが現れると共に漂ってくる香り。大野は音楽が単調にならないように緩急を付け適度なメリハリやセンスの良いルバートを付けながら曲を進めていきます。それに応えるモネ管はメリハリやルバートのたびに、なんともいえない香りを立ち上らせるんですわ。あちこちに香気を振りまきながら舞踏会が進んでいく、こりゃたまらんばい(笑)。最後のフィニッシュもよくありがちな盛り上がればいいじゃん的な演奏ではまったくなく、大野の巧みな設計による自然な盛り上がりがとても好ましかったですね。
前半の2曲目はベルギー生まれのエレーヌ・ベルナルディを迎えたシェエラザード。巧みに歌手にぴったり寄り添いバランスを取りながら、生き生きとした音の彩を紡いでいく大野とモネ管の素晴らしいこと。その素晴らしいバックに支えられたベルナルディの歌もまた秀逸。落ち着いた風情と声の艶、フランス語の発音も美しく、オリエンタルな風情を見事に表出していきます。声量も豊かで、プロフィールによるとドラマティックな役柄もこなす様子。2曲目も素晴らしい演奏でした。
前半のおしまいはボレロ。小太鼓はオーケストラのほぼ中央、オーボエとフルートの前の第1ヴァイオリンとヴィオラの間で演奏。小太鼓は明確に聞こえるギリギリの最弱音で開始。まずは木管を中心にしたソロがリズムを崩さずに節度を持って個々の持ち味を発揮。特に応答で吹いた小さめのクラリネット(正式名称なんだったっけ?)が表情豊かでしたし、フルートと弱音器付のトランペットが一緒に奏でるメロディーが美しかった。チェレスタとピッコロの不思議音程もまずまずかなあ。アンサンブルでメロディーを奏でるようになってくると華やかな色彩感が一層増してきます。弦は美しい艶と香りを放ちながら、大野のセスの良い節回しと共に注入されるパッションが表に出てくる。小太鼓が2台になり金管も一緒にメロディーを吹き始めると、一層輝かしい色彩の世界へと。そして色彩と熱っぽさを孕みながら大団円へと。最後のリズムもバッチリ決まりました。
コンサートの最後に置かれてもおかしくないラ・ヴァルスとボレロの2曲を、シェエラザードを挟んで組んだ前半のプログラム。単なるお祭り騒ぎになってもおかしくない構成ですが、きちんと違和感なくプログラムとして聞かせてくれる大野和士はさすが。もちろん、そういう演奏が出来る自信があるからこそ、このプログラミングなんでしょうけど。
後半はリムスキー=コルサコフのシェエラザード。大野は要所要所をぴしっと締めながらも、モネ管の個性と自発性を最大限に生かして、アラビアンナイトの世界を色彩感豊かに描いていきます。必要以上に威圧的にならずに豊かな響きを重んじて始まった第1楽章。コンサートミストレスのタチアナ・サムイルのソロも細身ながら美しい音色で曲の世界へいざないます。彼女はここだけでなく随所で見事なソロを聞かせてくれました。そして弦を主体にした旋律がしなやかにかつ香り豊かに流れ、緩やかなアーチを描いてゆく見事さ。第2楽章も随所に散りばめられた各楽器のソロを奏者に任せながら、手綱をしっかりと握った大野のコントロールの見事さが光ります。第3楽章は大野のセンスの良いリードのもと、優美かつしなやかにそして艶と香りを放つ弦の美しさは出色。第4楽章はオーケストラのサウンドは美しさを保ったまま、ドラマティックな味付けを施しスケール感と迫力も充分。木管も妙技を聞かせてくれましたし、最後のサムイルのヴァイオリン・ソロがまた美しかったですね。きめ細やかな配慮を欠かさない大野の棒、それに応えて自発性を存分に発揮するモネ管の面々。両者がお互いを信頼していることが良くわかる素晴らしい演奏でした。
鳴り止まない拍手に応えて大野は指で「3」と楽員に指示して演奏しはじめたのは、シェエラザードの第3楽章。あの優美で香り立つような演奏をまた聞かせてくれました(^^♪。
モネ管を生で聞くのは初めてですが、下手なフランスのオケよりもフランスらしい香りを持った機能性の高い魅力的なオーケストラですね。その中心で棒を振っているのが大野和士なんですよね。彼の対応力の幅広さというか懐の広さに改めて感心した演奏会でした。
Comments
本当に素敵な演奏会でしたね。洒脱なとかセンスがいいとかいった誉め言葉はああいうオケのためにこそ使いたいです◎
>チェレスタとピッコロの不思議音程
あの箇所、私の座っていた席ではかなりピッコロが前面に出て聞こえて、正直びっくりしました。
> 洒脱なとかセンスがいいとかいった誉め言葉はああいうオケのためにこそ使いたいです◎
同感です(^^♪
> かなりピッコロが前面に出て聞こえて
音量バランス的にはそうだったかも。もう少し弱めだといいバランスになったかもしれませんね。
あの弦のサウンド、とても魅力的でしたね。
今後もよろしくお願いします。
1月の新日フィルと仙台でありますね・・楽しみ
大野氏 個人HPで感想文 募集してますよ
ご存知でしたか・・お知らせまで。
モネ劇場の来日公演、ドン・ジョヴァンニ(まだ感想をアップできていおりませんが)も含めて素晴らしい出来栄えでしたね。
大野さんのファンサイトでの感想文募集はもちろん存じています。ここで書いておけばいいかなと思っております(^^ゞ。
来年1月の公演、さすがに仙台へはいけませんが新日本フィルとのタコ4は聴きに行く予定です。非常に楽しみにしています。