ヴァンスカ/読響 横浜名曲 バーバー/ベートーヴェン/ニールセン
昨年7月に1番と6番そして4番「不滅」を披露してくれたヴァンスカ/読響のニールセン・ツィクルス、今年の5番そして2番と3番と二つのプログラムで完結。昨年は4番「不滅」の素晴らしい演奏に接することが出来ました。来週の2番と3番は残念ながら聞くことが出来ないので、今日はニールセンとベートーヴェンの5番が並べられたプログラムを聴きに今週もまた桜木町へ。
読売日本交響楽団 横浜みなとみらいホリデー名曲コンサートプログラムの前半はバーバーとベートーヴェン。オーケストラはコントラバスを左にした1Vn-Vc-Va-2Vnの対向配置で、弦の編成は16型。弦楽器だけでなく、管楽器のメンバも最初から席に座っています。
1. バーバー : 弦楽のためのアダージョ 2. ベートーヴェン : 交響曲第5番ハ短調作品67「運命」 <休憩> 3. ニールセン : 交響曲第5番作品50
オスモ・ヴァンスカ指揮 読売日本交響楽団 (コンサートマスター:デヴィッド・ノーラン)
2005年10月1日 14:00 横浜みなとみらいホール 大ホール
最初は有名なバーバーのアダージョ(ちなみにこの曲は「アニュス・デイ」の歌詞を付した合唱曲としてのアレンジも存在します)。ヴァンスカが読響から引き出す、ひんやりとした感触の透明な響きが美しくも悲しい。クライマックスでも感情をぶつけるのではなく、ひたすら純音楽的な美しさを追求した素晴らしい演奏でした。
バーバーの次はベートーヴェンの運命。ヴァンスカの振るは古典派交響曲は初めてなのですが、きっと他の曲も対向配置でやるんでしょうね。全体に早めのテンポをとり、きりっと造形で聞かせるヴァンスカらしい演奏。両端楽章の提示部等リピートは(恐らく)すべて実行していましたが、いささかも冗長を感じさせません。リズムの切れ味、響きの見通しもすこぶる良いのにオーケストラ全体としては溶け合ったまろやかな響きが特徴的。弱音方向に着目した緻密なダイナミクスのコントロール、表裏問わずひとつひとつのフレーズに施されたフレージング。切れ味のよさや力強さだけに焦点を当てた演奏に陥りがちなこの曲に瑞々しさや潤いを与えます。特定のフレーズをここぞとばかりに強調したり、テンポをいじったりするようなことまったくありません。「ここでこのパートはこんなことしてるんだあ」とあちこちで気付かせてくれるような、隅々まで神経の行き届いた演奏でした。彼の振るベートーヴェンの他の交響曲も是非聴いてみたいなあ、と思わせる見事な演奏でした。
後半はニールセンの交響曲第5番。弦の編成は16型のままですが、オーケストラはコントラバスを右にそしてチェロを外側にした通常配置へ。弛緩のない引き締まったテンポとフォーム、細部に渡り緻密な表情付けによる表情の多彩さ、スーパーピアニッシモに代表されるダイナミズムの幅広さ、そして最後まで決して途切れない緊張感。ヴァンスカらしいエキサイティングともいえる見事なニールセンでした。第1楽章の最後で消え入るように吹かれるクラリネット(藤井洋子さん)が味わい深さは格別。この部分ではクラリネット奏者が後ろ向きに座って演奏、これはヴァンスカのアイデアでしょうか?この曲に生で接するのはこれで3度目ですが、はじめての光景でした。第2楽章は4つの部分の性格付けが見事。特に第3部は絶品の美しさ。固めの鉛筆で描いたような硬さとひんやりした感触の弦を中心に紡がれるつむがれる音の綾。続く、第4部のフィナーレも輝かしく締めくくられました。
ヴァンスカは来年ラハティ響との来日が予定されているようで楽しみ。読響への客演もまた期待したいものです。
Comments
...でも、あんまり、ミューザ川崎には来ないんですよね。
私は家族と聴きに行く事になるので、月に1度行ければ良い方です。たくさんは無理だけど、良い演奏を選べば、それなりに楽しめると思っています。
ご家族とのミューザ、良いコンサートになると良いですね。
ミューザ川崎は私ども一家のホームグラウンドです。(私は川崎市の遠くの端っこに住んでいるのですが...)
今月は15日のストラディヴァリウスサミットコンサートに行くんですが、eplusの先行予約で外れて、結局連番では席が取れず、家族バラバラ飛び飛びの席になってしまいました。それでも、と~っても楽しみな演奏会です。
普通、競技場に集まる観客の数は、競技場から半径○Kmが何人、というように推定し、観客動員計画を練るそうで、それは川崎フロンターレも同じです。所でフロンターレが本拠地とする等々力競技場は、他のところと決定的に違うところがあります。それは、等々力から200m北側は多摩川、その向こうは東京都であり、南に4km行けばそこはもう横浜市なのです。つまり、半径4Kmの円を描いても、その中で川崎市が占める割合は約半分になってしまうのです。サッカーであれば、東京ヴェルディとFC東京がある東京都、横浜マリノスと横浜FCを擁する横浜市から、わざわざ川崎のチームを応援しに来る人は殆どいませんし、それは野球であっても同じわけで、音楽ホールにしても同じ条件です。
この、地理的な要因による集客率の悪さ、が、川崎にプロのホームが定着しない理由なのでした。
それでも、私は応援しますよ、ミューザ川崎を(ついでにフロンターレも)。
東西方向ではなく南北方向の人の流れが出来るといいんでしょうね。