SKF2005 オーケストラAプロ ロストロポーヴィチ/SKO チャイコフスキー
2日間の山篭りのあと松本へ降りてきて、再びSKFのコンサート。josquinがロストロポーヴィチが指揮する演奏会を聞くのは、新日本フィルを振った1998年3月のショスタコーヴィチ・フェスティバル開幕コンサート以来では。オーケストラコンサートAプログラムを聴きに、松本の街中から路線バスに乗って総合体育館前へ。
サイトウ・キネン・フェスティバル松本 オーケスラトコンサートAプログラムプログラム前半は「くるみ割り人形」の組曲。オーケストラはヴィオラを外側にした通常配置で、弦の編成は16-13-12-10-8(2Vnが一名欠員でした)。コンサートマスターはジェニファー・ギルバート。早めのテンポで始まった「小序曲」、そのテンポのせいかアンサンブルがやや乱れましたが、トライアングルが入ってくるあたりからしっくりと。でも早いテンポでさらっと流す演奏ではなく、音楽の表情付けは結構念入り。このテンポの中、クラリネットのウィリアム・ハジンズのソロが鮮やか。「行進曲」から「あし笛の踊り」までは逆に遅めのテンポ設定で念入りに曲を描いた演奏。この演奏で踊れるかは別にしても、普通の演奏からは耳にすることが出来ない風情が聞こえてくるのが興味深いですね。ピアニッシモ方向のダイナミクス設定にこだわり、思い切ったルバートを多用しているのが特徴。高弦の厚手で磨かれた響きが聞けた「行進曲」、チェレスタに付けられた念入りな表情付けが新鮮だった「こんぺい糖の踊り」、整然と突き進む戦車のような「ロシア舞曲」、まるで葬送行進曲にも聞こえた「アラビアの踊り」、しっかりとはじいたピッツィカートと木管のコントラストで聞かせた「中国の踊り」、「あし笛の踊り」もフルートと弦楽との対比が印象的でした。終曲の「花のワルツ」は中庸のテンポ設定で、決して煽らずにクライマックスを構築する確かな構成感が光った演奏でした。最後に大見得を切るのはこの人のスタイルなんでしょうね。吉野直子のハープソロも表情豊かで実に華やかな演奏を披露。全体的にはところどころオーケストラ側がロストロポーヴィチの棒にやや戸惑いを憶えているような部分もありましたが、指揮者ロストロポーヴィチの個性がきちんと刻印された演奏でした。
1. チャイコフスキー : バレエ組曲「くるみ割り人形」 作品71a 休憩 2. チャイコフスキー : 交響曲第5番ホ短調作品64
ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ指揮 サイトウ・キネン・オーケストラ (コンサートマスター:ジェニファー・ギルバート(1)/豊嶋泰嗣(2))
2005年8月25日 19:00 長野県松本文化会館
後半は第5交響曲。この曲でのコンサートマスターは豊嶋泰嗣、弦楽の編成は16型(欠員なし)。充実した分厚い弦をベースとしたやや暗めのサウンドと悠然としたテンポ設定で浪々と歌い上げた演奏。念入りで濃い表情付け、ピアニッシモへのこだわりとダイナミクス変化の多用、大きなルバート等の特徴は前半の「くるみ割り」同様。この曲ではややスタイルが古風かなあとも思わないでもない(笑)。冒頭のほの暗いピアニッシモとずっしりとした主部の歩みの重さが印象的だった第1楽章。第2楽章はクライマックスへ向ってじわじわとテンポを上げ弦を中心にオーケストラがうねるさま、そしてティンパニと金管で現れるモットーの強烈さ、ジュリア・パイラントのホルンソロも音楽の流れに沿った見事さでした。アタッカで続けられた第3楽章を経て、間をおかずに第4楽章へ。弦楽器の弓を目一杯使って歌わせた雄大なスケール感と重み。途中拍手の名所での大きな間、誰か叩かないかと心配になる程(笑)。そして最後の最後での大きな見得切りでフィニッシュ。実に聴き応え満点の演奏でしたが、欲を言えばロストロポーヴィチとオーケストラの意思疎通がもう少しこなれてくると、もっと説得力がある演奏になったのかなあとも思いました。
このプログラムのコンサートは明日も予定されていますが、指揮者とオーケストラの関係が今日よりも馴染んでいることを期待したいと思います。
Comments
この音楽祭、当初から関心は持っていたのですが、未だに実態が分かっておりません。大分と定着して来ているようですが、今後の発展も含めて興味ある所です。「グレの歌」の公演なども未だ完売していないようですし、最後に総評も期待しています。
何はともあれ引き続き旅をお楽しみ下さい。
夜にコンサートがあると、どうしても(普段と変わらない)夜型生活になってしまいますね。
今年のSKFは例年よりチケットが売れていないようで、当日券も発売されているようです。ただ、その辺の情報がうまく伝わっていないように感じられました(特に地元の人に)。私が聞いたコンサートでは客席はほぼ埋まっていましたので「閑古鳥」ということはなさそうです。
まだまだ小澤征爾が元気なうちに次の旗頭を見つける(または育てる)ことが肝なのかなあと思います(もうあまり期間的な余裕はないのですが・・・)。