SKF2005 ふれあいコンサートII アルティカルテット/ロバート・マン/SKO ベートーヴェン/モーツァルト
サイトウ・キネン・フェスティバル松本 ふれあいコンサートIIプログラムの前半は京都府立府民ホール アルティのレジデント・カルテットとして活動しているアルティカルテットのベートーヴェン。メンバはSKFでおなじみの面々で構成されています。首都圏では昨年10月にフィリアホールで演奏会を行っていました。メンバの配置は1Vn-2Vn-Vc-Vaで、この曲では矢部達哉が第1ヴァイオリンを演奏していました。
1. ベートーヴェン : 弦楽四重奏曲第14番嬰ハ短調作品131 休憩 2. ベートーヴェン : 弦楽四重奏曲第16番ヘ長調作品135(弦楽合奏版) より 第3楽章 3. モーツァルト : 交響曲第35番ニ長調 K.385「ハフナー」
アルティカルテット(1)
第1ヴァイオリン : 矢部達哉 第2ヴァイオリン : 豊嶋泰嗣 ヴィオラ : 川本嘉子 チェロ : 上村昇
ロバート・マン指揮 サイトウ・キネン・オーケストラ(2&3) (コンサートマスター:川崎洋介(2)/渡辺實和子(3))
2005年8月20日 19:00 ザ・ハーモニーホール
矢部達哉の細身ながら緊張感のあるきりっとした音で開始された第1楽章。恐ろしいほどの緊張感を湛えながらメンバが音を重ねてゆきます。4人の描く線が明確に聞こえつつ絡み調和していく。第2楽章~第4楽章は繊細さと暖かさの共存が聞き手をほっとさせてくれます。そしてスケルツォ的な第5楽章は動き続ける音楽を見事なアンサンブルで展開。細かい動きの中にも、程良い遊びを加え4人のやりとりが楽しく思わず頬が緩む。特に、チェロの上村昇がアクセント的な役割を果たしていたのが印象的。そして再びやってくる第6楽章の緊張感と美しくも崇高な歌。表現の振幅を最大限にとり激しいパッションを感じさせてくれた終楽章。最後の2つの楽章では涙腺が・・・。約40分強、矢部達哉の繊細で美しくしかも強い演奏を軸にし、繊細さと暖かさ、緊張と弛緩そして愉悦と激情をバランス良く聞かせてくれた素晴らしい演奏でした。明日の15番の演奏も非常に楽しみです。
休憩の後はロバート・マン指揮がサイトウ・キネン・オーケストラの演奏。オーケストラの配置はヴィオラ外側の通常配置で、弦楽は12-10-8-6-4の編成。最初はベートーヴェンの最後の弦楽四重奏曲から第3楽章。マンの指揮によるSKOの演奏は初めてですが、暖かくかつ厚みがあって滋味豊かで一体感を持った弦の響きがとても印象的。音楽が一端空中に昇華した後、ゆったりとしたテンポで歌われた下降音形のメロディー、滔々とした流れがまたなんともいえません。逡巡するような淀みを超えてヴァイオリンが徐々に天上への階段を登りつつ奏でる歌の美しいことといったら。最後の平穏な暖かさもまた素晴らしいものでした。
最後は管楽器とティンパニが加わって、モーツァルトのハフナー交響曲。冒頭から充満したエネルギーをパッと解き放ったような迫力と前へ前へという推進力が素晴らしい。縦の線をあわせるよりも曲の持つエネルギーの表出に意をおいた、太い筆致で描いた力強いモーツァルト。細かなアンサンブルは指示しなくてもオーケストラ側でやってくれるという安心感もあるのでしょう。SKOの弦のぶ厚いサウンドと良好なアンサンブルとマンの骨太なアプローチが見事に合致していました。第2楽章のゆったりとした大きな流れとリズム、第3楽章のトリオの優雅さも印象的でした。
松本滞在初日から聴き応え充分の演奏を聞くことが出来て嬉しい限り。明日も後半は同じプログラムですが非常に楽しみ・・・。
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