市野あゆみ/安永徹/石坂団十郎 ドビュッシー/マルティヌー/チャイコフスキー
市野あゆみ 安永徹 石坂団十郎 演奏会チェロの石坂団十郎は広上/N響とのチャイコフスキーとシェーファー/東響とのハイドンの演奏に接して、正攻法で演奏する良い若手チェリストだなあと思った人材。今日のプログラムで全曲演奏するのは石坂団十郎だけなのは、彼を知らしめたいという意図なのでしょう(違うかな?)。
1. ドビュッシー : チェロとピアノのためのソナタ 2. マルティヌー : ヴァイオリンとチェロのためのデュオ第1番 -休- 3. チャイコフスキー : ピアノ三重奏曲イ短調作品50「偉大な芸術家思い出のために」
ピアノ : 市野あゆみ(1&3) ヴァイオリン : 安永徹(2&3) チェロ : 石坂団十郎
2005年8月13日 15:00 フィリアホール
プログラムの最初はその石坂団十郎と市野あゆみによるドビュッシーのソナタ。うむ、やっぱりいいですねえ団十郎君。低音の明快な歯切れのよさと適度なゴリゴリ感、そして高音の艶やかな音色が魅力的なこと。どの音域でももごもご感がなく明瞭に響き、楽器(1969年製ストラド"Lord Aylesford"だそう)がよく鳴っている。第1&2楽章のぶつぶつとした独白の寂寥感、打って変わった第3楽章の生き生きとした音楽の魅力、そして前編に渡って時折現れる物憂げ表情もよく出ていました。彼の奇をてらったところのない正攻法な音楽作りは相変わらずで、とても好感がもてます。市野あゆみのピアノも明瞭度の高い音で、団十郎君と一体感の強い音楽を作り出していました。
ドビュッシーに続いては、安永徹と石坂団十郎でマルティヌーのデュオ。この曲を耳にするのは初めてですが、前奏曲(アレグロ・モデラート)とロンド(アレグロ・コン・ブリオ)から成る2楽章で構成されています。安永さんと団十郎君が対等の立場で適度な距離感を持った好演。時に追いかけ、寄り添い、特にロンドのスリリングさはまた格別。安永さんのBPO以外での演奏を聞くのは初めて(かも)ですが、全域に渡って厚みを持った充実したサウンドと骨格のしっかりとした音楽作りが印象的。スケール感のある石坂のチェロと対等に渡り合える存在感はさすが重責を務めてきただけのことはありますね。ロンドの中間部にあるカデンツァでも、団十郎君が実に見事な演奏を聞かせてくれました。短いながらも大きな満足感が得られる優れた演奏だったように思います。
プログラムの後半は3人が揃って、ニコライ・ルビンシュテインに捧げられた長大なチャイコフスキーの「偉大な芸術家の生涯」。3人のうち一人でも四つに組めない人がいるとこうはいかないと思うのですが、市野あゆみ、安永徹そして石坂団十郎ががっちりと四つに組んだスケール感豊かで聴き応え十分の演奏。骨格のしっかりとした安永さん、スケール感と明確なサウンドの団十郎君、そして透明でくっきりとした音色と力強い演奏で充分に拮抗した市野さん。もちろん安永さんと団十郎君も良かったのだけれども、私が感心したのは市野さんのピアノ。第1部冒頭はやや明る過ぎるかなとも思ったのもつかの間、弦で告別のテーマが入ってくるとすっと陰影が付いてくる機敏な順応性。第2部の変奏曲で時折聞かせるチャーミングな表情も魅力的。第2部冒頭のくっきりとした透明感のある明るさ、変奏曲との対比を明確に印象付ける終結部の開始を告げる和音の気迫。要所要所で音楽の転換点を指し示していたのは明らかに市野さんのピアノでした。
このトリオの演奏をまた聞きたいなあと思いつつ青葉台駅から帰路についたjosquinでした。あと、団十郎君のリサイタルも是非聞いてみたいものです。
Comments
青葉台って、田園都市線ですよね。
本当に神出鬼没!
殆ど病気、だからでしょうか?
すっごく、良い病気ですね。
治らないことを祈っております!(笑)
> 治らないことを祈っております!(笑)
私も祈ってます・・・(爆)。