えすどぅあ

コンサートやオペラの感想を中心とした音楽日記になったかなあ・・・。

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犬飼新之介/金聖響/都響 響の森 モーツァルト/ベートーヴェン

オーケストラアンサンブル金沢や大阪センチュリー響で古典派の交響曲を取り上げている金聖響。一度聞いてみたいと思っていたのですが、なかなか首都圏では機会に恵まれません。その貴重な機会を逃すまいと、今日もベートーヴェンを聴きに上野へ。
東京文化会館 響の森 vol.18 2つのニ短調

1.モーツァルトピアノ協奏曲第20番ニ短調 K.466
休憩 Intermission - 20min
2.ベートーヴェン交響曲第9番ニ短調作品125「合唱付き」

ピアノ犬飼新之介(1)

ソプラノ番場ちひろ(2)
メゾ・ソプラノ山下牧子(2)
テノール望月哲也(2)
バリトン山下浩司(2)

金聖響指揮東京都交響楽団
(コンサートマスター:山本友重)
国立音楽大学合唱団(2)
(合唱指揮:田中信昭/永井宏)

2005年6月11日 15:00 東京文化会館 大ホール
金聖響が指揮するベートーヴェンを聞くのは、2003年3月の都響定期以来。ギル・シャハムを迎えたヴァイオリン協奏曲で緊密なコラボレーションを聞かせてくれたのが印象に残っています。

舞台上のオーケストラはヴィオラを外側、コントラバスを右側にした通常配置。金聖響の振る古典派作品で対向配置でないのは初めてですが、リハーサルの日程等を考慮してのことでしょう。弦はモーツァルトが10-8-6-4-3、ベートーヴェンが12型とやや小さめの編成でした。ナチュラル・トランペット等は使用せず普通の現代楽器をそのまま使用していました。

プログラムの前半は今年2月のラザレフ/読響の演奏会に名前が載っていた、1982年生まれの犬飼新之介を迎えたモーツァルトのニ短調協奏曲。金/都響のヴィヴラートを控えめにした清清しい響き、多彩なフレージングとリズム感覚の良さ。生き生きとした表情でピアノが出てくる前のお膳立ては万全。オーケストラだけ聴いても充分に楽しめそう。犬飼新之助は前へ前へと進む若々しい推進力と、妙な癖のない素直な歌い口が好感度大。音の粒立ちも良く、短調らしい陰りのある音色が魅力となっています。猪突猛進にならない適度なメリハリや疾走感、デモーニッシュな味わいも程々に感じさせてくれました。これに音色のうつろいで表現出来るともっと魅力的な演奏となるでしょう。金聖響は犬飼新之介に機敏に反応して棒を操り、都響がそれに鋭敏に反応する。逆に金聖響とオーケストラからの触発に対しての反応という点では、犬飼新之助にもう少し感じて欲しいところ。素性は非常によさそうですので、今後の成長を望みたいと思います。まだステージ慣れていないのか、ぎこちないカーテンコールの仕草が実に初々しかった(笑)。

後半はもうひとつのニ短調、ベートーヴェンの第九。合唱は女声が前、男声が後ろの並び。ソリストは合唱とオーケストラの間に配置されていました。古楽奏法を適宜取り入れ、かなり早めのテンポで全曲をきりっと引き締めた演奏。全曲60分ちょっとだったのではないでしょうか。速いテンポでも奏者に十分に呼吸をさせ、音が広がる空間を感じさせるフレージングを丁寧に施す。弾き飛ばしているとか、弾き急いでいるという感じを与えさせません。力強さ、優美さ、愉悦、リズミカルな楽しさをバランスよく表現。がつがつと拍を刻まなくても、しっかりとしたぶれない芯を提示する棒。オーケストラの自主性を生かしつつ、欲しい表現を的確に示していました。ピリオド奏法を取り入れながらオーケストラの弦楽と木管のバランスも、木管が出過ぎることのないウェルバランス。時々金管を強く吹かせてアクセントを付けていました。

第1楽章は冒頭の弦の刻みを明確に聞かせ、12型のオケから充分な力感を引き出していました。第2楽章は力強さとリズミカルな動きの切れと面白さを堪能。第3楽章は深遠さよりもすっきりとした歌い口で親密さを表現。フィナーレは各部分の間をほとんど取らず、全体のスムーズな流れを重視していました。低弦が歓喜の主題を歌いだす前や、"vor Gott!"の後は本当にすっと先に進んでしまうので「あっ、もういっちゃうの?」という感じがしないでもない(笑)。フルトヴェングラーの呪縛から離れられない聞き手の感覚が古いのかもしれません(爆)。

若手メンバーを揃えた独唱陣では、山下浩司が明るく伸びやかな声を楽しませてくれました。望月哲也もいつもながらのノーブルな歌い口がいいですね。番場ちひろと山下牧子も力を充分に発揮していたと思います。国立音楽大学の合唱は及第点といったところ。若々しいエネルギーが放出されていたのは良かったのですが、何箇所かある難所では馬脚が現われてしまいましたね。音程の支え、声の深み、男声の力強さの向上を望みたいと思います。

首都圏でも金聖響の古典派作品を聞く機会が増えることを望みます。紀尾井シンフォニエッタあたりで実現しないかなあ・・・。
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