えすどぅあ

コンサートやオペラの感想を中心とした音楽日記になったかなあ・・・。

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二期会 椿姫 佐々木典子/アッレマンディ/東フィル

椿姫といえば先月のフェニーチェ歌劇場の上演も記憶に新しいところ。今日は栗山昌良のオーソドックスな演出による二期会の上演を聴きに後楽園へ。
二期会オペラ劇場 椿姫

ヴェルディ椿姫

ヴィオレッタ佐々木典子
アルフレード井ノ上了吏
ジェルモン直野資
フローラ堪山貴子
ガストン子爵小林大作
ドゥフォール男爵久保和範
ドビニー公爵峰茂樹
医師ウランヴィル高橋啓三
アンニーナ三橋千鶴
ジュゼッペ伊藤俊三
仲介人笹倉直也

アントネッロ・アッレマンディ指揮東京フィルハーモニー交響楽団
(コンサートマスター:清水醐輝)
二期会合唱団
(合唱指揮:佐藤宏)

演出栗山昌良

2005年6月5日 14:00 文京シビックホール 大ホール
まずはアントネッロ・アッレマンディの指揮からいきましょうか。第1幕前奏曲の途中までは弦を美しく歌わせていて良かったのだけれども、幕が上がるとまあ威勢良く煽る煽る(笑)。「どーしてそんなに振り急ぐのマエストロ?」みたいな。テンポがいくら速くても(そして煽っても)歌手の自然な呼吸の邪魔をしなければ良いのですが、しっかり邪魔していたような気がします(オーケストラは何とか付いていっていましたが・・・)。個々の歌手の持ち味を生かした棒ではありませんでした。舞台上がピットに振り回されたような感じが拭えません。繊細な表情が消し飛んでしまっていたところがそこここに聞かれましたし、アンサンブルの齟齬の要因はこの人の棒に起因するところが大きいと思います。(歌手次第ですが)イル・トロヴァトーレあたりの作品ならば持ち味を発揮できる指揮者のように思いました。

そんな歌いにくそうなアッレマンディの棒に影響されず、自分の歌を表現できていたのはタイトルロールを歌った佐々木典子ただ一人といっても過言ではないかと。その圧倒的な存在感と幅広い表現力は今日のキャストの中でも図抜けていました。第1幕「そはかの人か」では持ち前の技術を駆使し、音ころがしにもきちんと対応していました(カデンツだけは歌い急いだような気がしますが・・・)。全域で豊かな声量を誇る彼女ですが、中低域の豊かな響きが高音域にスムースに受け継がれないところがちょっと気になります。それに起因して声を張った高音域である種のやかましさを感じてしまうのは惜しいところ。声をセーブして歌う技術は持っている歌手ですので、うまく使って表現をして欲しいと思います。声を張り上げる必要のない第3幕は素晴らしい歌唱と演技。唯一、声を存分に使った「こんなに若くして死ぬなんて」の表現の強さは素晴らしい限りでした。

井ノ上了吏の歌うアルフレードは一番アッレマンディの棒に影響されてしまったような気がします。高い声が決まらないのは調子が悪いのか、棒のせいかは判断が難しいところですが自分のペースでは歌えていませんでした。

個人的に一番印象の良かったのは父ジェルモンを歌った直野資。アッレマンディの棒の影響はありましたが、第2幕の厳しい表現は私の好みに近い歌唱。プロヴァンスも前半は平坦になってしまいましたが、後半は自分のペースに引き込んで素晴らしい歌を披露してくれました。

栗山昌義の演出は紫系統の色使いが好悪を分けるかもしれませんが、隅々まで神経の行き届いた演技付けで安心にして音楽に浸れるもの。和のテイストにも通じるような繊細な味わいがありますね。それを思うと、アッレマンディの棒が繊細なものだったらと思わずにはいられません。

今日の上演は慣習的なカットを殆ど実行していたように聴きました。フェニーチェ歌劇場の素晴らしいほぼノーカットに近い上演を聞いた後では、ちょっと物足りない印象を与えてしまうのは仕方ないところでしょうか。
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