えすどぅあ

コンサートやオペラの感想を中心とした音楽日記になったかなあ・・・。

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目白バ・ロック音楽祭 中世の秋・歌の花束 アンサンブル フォンス・フローリス

4月に聴いたヴォーカル アンサンブル・カペラのオブレヒトを中心とした演奏会で賛助出演していたのがアンサンブル フォンス・フローリス。女声3名によるアンサンブルのデビュー・コンサートを聴きに上野から護国寺へ。
目白バ・ロック音楽祭 デビューコンサートシリーズ カテゴリーB
中世の秋・歌の花束 14・15世紀のモテットとシャンソンの数々

第1部 宗教曲
 
1.作者不詳「フォーベル物語」より
自然の業/ああ民よ/週の初め早く
anonymousCondicio nature/O Nacio/Mane prima,
Le Roman de Fauvel
2.グレゴリオ聖歌アレルヤ
Gregorian chantAlleluya
3.フィリップ・ド・ヴィトリ「フォーベル物語」より
堅固な心/いらしてください/アレルヤ
Phillipe de VitryFirmissime/Adesto/Alleluya,
Le Roman de Fauvel
4.フィリップ・ド・ヴィトリ堅固な心/いらしてください/アレルヤ
(ロバーツブリッジ写本より)
Phillipe de VitryFirmissime/Adesto/Alleluya
(Robertsbridge codex ca.1330)
5.グレゴリオ聖歌マニフィカトのアンティフォナ
マギは星を見て
Gregorian chantAntiphona ad Magnifcat
Magi videntes stellam
7.ギョーム・デュファイ第八旋法のマニフィカト
Guillaume DufayMagnificat octavi toni
8.ジョスカン・デ・プレ原曲アヴェ・マリア
(クレーバー・タブラチュアより 1520年頃)
Josquin des PrezAve Maria...virgo serena
(Kleber Tabulatur ca.1520)
9.ギョーム・デュファイめでたし天の元后
Guillaume DufayAve regina celorum
10.ヤコブ・オブレヒトめでたし海の星
Jacob ObrechtAve maris stella
11.アントワヌ・ブリュメル父なる神の母にして娘
Antoine BrumelMater Patris et firia
 
休憩
 
第2部 世俗曲
 
12.ギョーム・ド・マショーロンドー いとしい御方、まだ気付いてくださらないのですか
Guillaume de MachautRondeau Dame,se vous n'avez
13.ギョーム・ド・マショーバラード 心なしで/嘆く友よ/愛しい方、あなたによって
Guillaume de MachautBallade Sanz cuer/Amis, dolens/Dame, par vous
14.ギョーム・ド・マショー原曲恥ずかしさと恐れと
(ファエンツァ写本より 1420年頃)
Guillaume de MachautHonte Paour
(Faenza Codex ca.1400)
15.ギョーム・デュファイ私の気高くも愛しい人よ
Guillaume DufayMabelle dame souverainne
16.ギョーム・デュファイ哀れにもおのれを嘆く
Guillaume DufayJe me complains
17.ギョーム・デュファイ原曲私の顔が蒼ざめているのは
(ブクスハイム・オルガン曲集より 1470年頃)
Guillaume DufaySe la face ay pale
(Buxheimer Orgelbuch ca.1470)
18.ジョスカン・デ・プレ愛しい方を失ったら
Josquin des PrezSi j'ay perdu
19.ジョスカン・デ・プレ美しい人が塔の下に
Josquin des PrezLa belle se siet
 
アンコール
 
20.アダン・ド・ラ・アルこの家に神が住まいますよう
Adam de la HalleDieus soit en cheste maison

アンサンブル フォンス・フローリス稲田知子/今江奈緒子/金子千晶
(1-3,5-7.9-11,12,13,15,16&18-20)
ポジティーフ・オルガン花井哲郎(賛助出演)
(4,8,12,14,17,他)

2005年6月4日 19:00 同仁キリスト教会
護国寺駅を降りて講談社前を進んで右手に曲がり坂を上がっていくと、ほどなく会場の同仁キリスト教会に開場数分前に到着。当日券を買い求めて開場を待つ列へ並ぶ。開場して中に入ると目黒の聖アンセルモ教会とは違って、100人程で満杯になるような比較的小さな空間。教会らしく天井は高めに作られています。ただ、床に絨毯が張られているのが響きの面でちょっと気になるかも。

今日演奏されるのは14~15世紀にフランドル地方で作られた作品から、前半は宗教曲そして後半は世俗曲(シャンソン)を中心とした作品の数々。個人的にも女声三声のアンサンブルを演奏会で聴くのは恐らく初めてなので興味津々。

ヴィヴラートを抑えて声の自然な鳴りを生かしたまっすぐな声、上澄みをうまく使い声を空間に解き放つ響かせ方。基本的には4月末に聞いたヴォーカル・アンサンブル カペラ同様の歌い方。最初の数曲では固くなってしまったのか、縦の線のずれ、歌い回しのぎこちなさ、経過音(句)の音の甘さが気になります。でも、要所のハーモニーはばっちり決まっていてよく鳴っています。曲が進むにつれて固さも徐々に解消していき、デュファイの第八旋法のマニフィカトあたりからは彼女達の通常のペースでの歌になってきたのではないでしょうか。

宗教曲といえども当然ながら作曲家の個性は出るもので、デュファイあたりは独特の艶っぽさがあるのが面白いですね。後半はシャンソン集にしては少しまじめな感じ。マショーやデュファイの作品ならば、もっと妖しく艶っぽく思い切った表現でも良いかなあ。でも、あまりやりすぎると曲のフォルムを崩しかねないし難しいところでしょうね。少し気になったのは3人のパート割。その人の持ち声と声域に必ずしも合っていないなあと思える曲がありました。3人全員がしっくりくる割振りは難しいにしても、パート割の工夫(途中で巧妙に入れ替えるとか)が必要なのかもしれません。一番良いのは個々の技量向上なのでしょうけど・・・。

賛助出演の花井哲郎のポジティブ・オルガンの演奏が良かったですね。沢山の装飾を付けしなやかかつ軽やかに歌う演奏は、彼女達へのデビュー祝いと生きたお手本を示しているようでした。

最初に書いた会場の響きですが、やっぱりあんまり響かないですね。器楽のコンサートならうってつけかもしれませんが、彼女達のようなメソッドで歌う場合、会場の響きをうまく利用することができるほうが本領を発揮できるような気がします。目黒聖アンセルモ教会のような豊かな響きは不要ですが、もう少し響きの楽しめる会場であったら聞き手の印象も異なっていたかもしれません。

そういえばプログラム最後に置かれたジョスカンの2曲、発声がそれまでの曲とは異なっていたように聞こえました。(様式の違いから)意図的なものだったのでしょうか、それとも・・・・・・。なにはともあれ女声三声のアンサンブルは貴重な存在ですので、彼女達の今後の成長と活躍に期待したいと思います。
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