目白バ・ロック音楽祭 中世の秋・歌の花束 アンサンブル フォンス・フローリス
4月に聴いたヴォーカル アンサンブル・カペラのオブレヒトを中心とした演奏会で賛助出演していたのがアンサンブル フォンス・フローリス。女声3名によるアンサンブルのデビュー・コンサートを聴きに上野から護国寺へ。
目白バ・ロック音楽祭 デビューコンサートシリーズ カテゴリーB護国寺駅を降りて講談社前を進んで右手に曲がり坂を上がっていくと、ほどなく会場の同仁キリスト教会に開場数分前に到着。当日券を買い求めて開場を待つ列へ並ぶ。開場して中に入ると目黒の聖アンセルモ教会とは違って、100人程で満杯になるような比較的小さな空間。教会らしく天井は高めに作られています。ただ、床に絨毯が張られているのが響きの面でちょっと気になるかも。
中世の秋・歌の花束 14・15世紀のモテットとシャンソンの数々
第1部 宗教曲 1. 作者不詳 : 「フォーベル物語」より 自然の業/ああ民よ/週の初め早く anonymous Condicio nature/O Nacio/Mane prima, Le Roman de Fauvel 2. グレゴリオ聖歌 : アレルヤ Gregorian chant Alleluya 3. フィリップ・ド・ヴィトリ : 「フォーベル物語」より 堅固な心/いらしてください/アレルヤ Phillipe de Vitry Firmissime/Adesto/Alleluya, Le Roman de Fauvel 4. フィリップ・ド・ヴィトリ : 堅固な心/いらしてください/アレルヤ (ロバーツブリッジ写本より) Phillipe de Vitry Firmissime/Adesto/Alleluya (Robertsbridge codex ca.1330) 5. グレゴリオ聖歌 : マニフィカトのアンティフォナ マギは星を見て Gregorian chant Antiphona ad Magnifcat Magi videntes stellam 7. ギョーム・デュファイ : 第八旋法のマニフィカト Guillaume Dufay Magnificat octavi toni 8. ジョスカン・デ・プレ原曲 : アヴェ・マリア (クレーバー・タブラチュアより 1520年頃) Josquin des Prez Ave Maria...virgo serena (Kleber Tabulatur ca.1520) 9. ギョーム・デュファイ : めでたし天の元后 Guillaume Dufay Ave regina celorum 10. ヤコブ・オブレヒト : めでたし海の星 Jacob Obrecht Ave maris stella 11. アントワヌ・ブリュメル : 父なる神の母にして娘 Antoine Brumel Mater Patris et firia 休憩 第2部 世俗曲 12. ギョーム・ド・マショー : ロンドー いとしい御方、まだ気付いてくださらないのですか Guillaume de Machaut Rondeau Dame,se vous n'avez 13. ギョーム・ド・マショー : バラード 心なしで/嘆く友よ/愛しい方、あなたによって Guillaume de Machaut Ballade Sanz cuer/Amis, dolens/Dame, par vous 14. ギョーム・ド・マショー原曲 : 恥ずかしさと恐れと (ファエンツァ写本より 1420年頃) Guillaume de Machaut Honte Paour (Faenza Codex ca.1400) 15. ギョーム・デュファイ : 私の気高くも愛しい人よ Guillaume Dufay Mabelle dame souverainne 16. ギョーム・デュファイ : 哀れにもおのれを嘆く Guillaume Dufay Je me complains 17. ギョーム・デュファイ原曲 : 私の顔が蒼ざめているのは (ブクスハイム・オルガン曲集より 1470年頃) Guillaume Dufay Se la face ay pale (Buxheimer Orgelbuch ca.1470) 18. ジョスカン・デ・プレ : 愛しい方を失ったら Josquin des Prez Si j'ay perdu 19. ジョスカン・デ・プレ : 美しい人が塔の下に Josquin des Prez La belle se siet アンコール 20. アダン・ド・ラ・アル : この家に神が住まいますよう Adam de la Halle Dieus soit en cheste maison
アンサンブル フォンス・フローリス : 稲田知子/今江奈緒子/金子千晶 (1-3,5-7.9-11,12,13,15,16&18-20) ポジティーフ・オルガン : 花井哲郎(賛助出演) (4,8,12,14,17,他)
2005年6月4日 19:00 同仁キリスト教会
今日演奏されるのは14~15世紀にフランドル地方で作られた作品から、前半は宗教曲そして後半は世俗曲(シャンソン)を中心とした作品の数々。個人的にも女声三声のアンサンブルを演奏会で聴くのは恐らく初めてなので興味津々。
ヴィヴラートを抑えて声の自然な鳴りを生かしたまっすぐな声、上澄みをうまく使い声を空間に解き放つ響かせ方。基本的には4月末に聞いたヴォーカル・アンサンブル カペラ同様の歌い方。最初の数曲では固くなってしまったのか、縦の線のずれ、歌い回しのぎこちなさ、経過音(句)の音の甘さが気になります。でも、要所のハーモニーはばっちり決まっていてよく鳴っています。曲が進むにつれて固さも徐々に解消していき、デュファイの第八旋法のマニフィカトあたりからは彼女達の通常のペースでの歌になってきたのではないでしょうか。
宗教曲といえども当然ながら作曲家の個性は出るもので、デュファイあたりは独特の艶っぽさがあるのが面白いですね。後半はシャンソン集にしては少しまじめな感じ。マショーやデュファイの作品ならば、もっと妖しく艶っぽく思い切った表現でも良いかなあ。でも、あまりやりすぎると曲のフォルムを崩しかねないし難しいところでしょうね。少し気になったのは3人のパート割。その人の持ち声と声域に必ずしも合っていないなあと思える曲がありました。3人全員がしっくりくる割振りは難しいにしても、パート割の工夫(途中で巧妙に入れ替えるとか)が必要なのかもしれません。一番良いのは個々の技量向上なのでしょうけど・・・。
賛助出演の花井哲郎のポジティブ・オルガンの演奏が良かったですね。沢山の装飾を付けしなやかかつ軽やかに歌う演奏は、彼女達へのデビュー祝いと生きたお手本を示しているようでした。
最初に書いた会場の響きですが、やっぱりあんまり響かないですね。器楽のコンサートならうってつけかもしれませんが、彼女達のようなメソッドで歌う場合、会場の響きをうまく利用することができるほうが本領を発揮できるような気がします。目黒聖アンセルモ教会のような豊かな響きは不要ですが、もう少し響きの楽しめる会場であったら聞き手の印象も異なっていたかもしれません。
そういえばプログラム最後に置かれたジョスカンの2曲、発声がそれまでの曲とは異なっていたように聞こえました。(様式の違いから)意図的なものだったのでしょうか、それとも・・・・・・。なにはともあれ女声三声のアンサンブルは貴重な存在ですので、彼女達の今後の成長と活躍に期待したいと思います。
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