ブリュア/アルブレヒト/読響 特別演奏会 ワーグナー:神々の黄昏 第3幕
読売日本交響楽団 特別演奏会職人アルブレヒトのオーケストラコントロールの手腕が最大限に発揮された、すこぶる理性的で明晰なワーグナーでした。やや早めのテンポで全体を引き締め、見得を切るようなことは一切せずにインテンポを徹底した上で表現を工夫していくいつもの手法。スコアが透けて見えるようなクリアなサウンドと、高弦を中心に磨かれた美しい音色を読響から引き出すことに成功していました。どこをとっても整然と整った読響のアンサンブルは見事なものでした。アルブレヒトの歌手達への配慮も実に巧み。決して歌手の声を覆うことないダイナミクスのコントロールは抜群で、音量を押えてもオーケストラの演奏の生彩感が損なわれません。アルブレヒトが読響に着任してから7年を経て、その緊密関係が変わってないことを感じさせました。自己犠牲の最後、ヴァイオリンが奏でるブリュンヒルデの動機の磨かれた音色の美しさは出色。でも、「ジークフリートの葬送行進曲」や「ブリュンヒルデの自己犠牲」ではもっと滔々とした音楽の流れに身を委ねさせてくれてもいいんじゃないかなあ・・・マエストロ(笑)。なんて思うのは聞き手のわがままな要求なんでしょうか(爆)。
・ ワーグナー : 楽劇「神々の黄昏」 第3幕全曲 (演奏会形式)
ブリュンヒルデ : クリスティーン・ブリュア ジークフリート : ペール・リンズコーグ ハーゲン : 工藤博 グンター : 青戸知 グートルーネ : 林正子 ヴォークリンデ : 増田のり子 ヴェルグンデ : 手嶋眞佐子 フロースヒルデ : 栗林朋子
ゲルト・アルブレヒト指揮 読売日本交響楽団 (コンサートマスター:藤原浜雄) 二期会合唱団 (副指揮/合唱指揮:城谷正博)
2005年3月21日 14:00 サントリーホール 大ホール
歌手達はみなさん水準以上の歌唱でした。なかでも一番印象深かったのは、グートルーネを歌った林正子。完全にグートルーネに成りきってたんじゃないでしょうか彼女。出番が近づいて、舞台右手から登場したときの顔の表情がすっかりもうグートルーネ。演奏会形式とはいえ完全に演技してましたね。歌も深みの感じられる声で、ジークフリートを失ったグートルーネの悲しみを見事に表現していました。機会があれば舞台で聞いてみたいなと。ブリュンヒルデを歌ったクリスティーン・ブリュアは、その立派な体躯に相応しい豊かで力強い歌声を聞かせてくれました。ジークフリートのベール・リンズゴークはほんの少しだけピッチが下がる傾向があったのがあるのが残念でしたが、全体的にはまずまずの歌唱。ハーゲンの工藤博は、悪役に相応しいキャラクターが光る好演(新国「神々」での冷徹な長谷川顯のハーゲンとは対照的)。グンターの青戸知は張りのある声と言葉の切れ、思い切った表現が好印象。ラインの乙女達は美しいハーモニーと良好なアンサンブルで歌っていて、叙情的な味わいで楽しませてくれました。
二期会合唱団の男声合唱はやや人数は少なめでしたが、必要充分な迫力は得られていて聞き応えのある合唱でした。
今日のオーケストラの弦は1Vn-2Vn-Va-Vc-Cbで読響のいつもの配置、編成は16型でした。男声合唱は舞台最後列に一列で並び、ソリスト達は指揮者の左右に配置されていました。ハープ奏者がラインの乙女達の歌う冒頭部分は舞台右チェロの後方、その後は舞台左側第2ヴァイオリンの後方でと場所を移動して(楽器は2台ずつ計4台設置)演奏していたのが興味深く感じました。
Comments
演奏会のバッティング、秋のラッシュ状態に比べればまだ良いですけどね(笑)。
こちらこそ、これからもよろしく。