えすどぅあ

コンサートやオペラの感想を中心とした音楽日記になったかなあ・・・。

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ハーゲン・クァルテット ベートーヴェン後期弦楽四重奏曲全曲 第1夜

ヴェロニカ・ハーゲンの出産によるメンバ変更はちょっと残念。しかし、魅力的な演奏会であるのには違いない、ハーゲン・クァルテットのベートーヴェン後期弦楽四重奏曲全曲演奏会。第1夜を聴きに江戸川橋へ。
結成25周年企画 ハーゲン・プロジェクト ウィーンからの風 4
ハーゲン・クァルテット ベートーヴェン後期弦楽四重奏曲全曲 第1夜

1.ベートーヴェン弦楽四重奏曲第12番変ホ長調作品127
2.ベートーヴェン弦楽四重奏曲第16番ヘ長調作品135
休憩
3.ベートーヴェン弦楽四重奏曲第13番変ロ長調作品130
(終楽章:大フーガ作品133)

ハーゲン・クァルテット
第1ヴァイオリンルーカス・ハーゲン
第2ヴァイオリンライナー・シュミット
ヴィオラアイリス・ハーゲン
チェロクレメンス・ハーゲン

2005年2月25日 19:00 トッパンホール
第1夜に演奏されるのは第12番、第16番そして終楽章に大フーガを据えた第13番。

まず最初に演奏されたのは、通常の4楽章構成から成るえすどぅあの第12番。第1楽章冒頭のヴィヴラートを押さえ、弦の素直な共鳴を生かしたハーモニーの美しさとその表現の誇張のない好ましさ。そして流れよくはじまる主部の生き生きとした音楽。第2楽章、的確に表現され紡がれていくヴァリエーションの音の綾の美しいこと。第3楽章もテンポを崩さずに弾かれるフォルテのリズムとのピアノのリズムの鮮やかな対比。第4楽章も「亀田のあられ~」(例えが悪いな(笑))に似た旋律で始まる音楽の流れの良さと、ときおり楔のように入るリズミカルな部分の踏み込みの良さとの対比の誇張ない自然さ。のっけからの素晴らしい演奏に感嘆するしかありません。

続いて演奏されたのは、これも4楽章で構成される第16番。第1楽章は逡巡するような冒頭に続いて、様々な性格をもつフレーズ達を優美に、リズミカルにそして激しくと。的確にフレーズの性格を奏でる見事さ。最後の終止もチャーミング。第2楽章は小気味よい切れの良さが光ります。中間部の下三声の奏でるリズムにのった第1ヴァイオリンの技巧的なソロも、音の正確さよりもチャレンジングな踏み込みの良さが光ります。そして、第3楽章が素晴らしいのなんの。決して歌いこみすぎずに落ち着いた音色で、静謐さを湛えながら丹念に歌われていく音楽の美しこと。ふと垣間見せる(聞かせる)本当に底知れない深遠さを湛えた心の内面。第4楽章、"Muss es sein?"の強い疑問符と、その回答として不思議な明るさを湛える"Es muss sein !" との対比の見事さ。繰り返されるたびにそのコントラストが増し意味深さを増すさま。そしてピッツィカートで始まるコーダのチャーミングな清涼感。これも見事な演奏でした。

休憩の後は主楽章に大フーガを置いた6楽章構成の第13番。第1楽章はアダージョの暖かで落ち着いた音色とアレグロの駆け回るような音の動きのコントラストが見事。第2楽章のテンポの速さとリズムの切れ味の鋭いこと。ヴァイオリンの下降音形からのリズムの決まり方も見事。個々の奏者の掛け合いが楽しい第3楽章。リズミカルで柔軟性の高いクレメンス・ハーゲンのチェロが光ります。第4楽章は全体の優美さと中間部での3拍子のリズムが冴えが印象的。第5楽章「カヴァティーナ」も落ち着いた音色と音楽の流れを決して失わない絶妙な設定のテンポ。心の内面から底光りするような美しさを湛えた素晴らしい演奏。そして最後の大フーガも表現の踏み込みの鋭さと確固たる構成感に裏打ちされた見事な演奏。どんなに力強く踏み込んでも決して芯がぶれない足周りの確かさ、そして繊細な持ち味を充分に生かしたピアニッシモ方向の表現力との両立。コーダのフレッシュな味わいへの切り替えも見事でした。

彼らのデリケートな表現の源泉と思われる繊細さに加えて力強さを増して頼もしくなった、第1ヴァイオリンのルーカス・ハーゲン。もう立派にアンサンブルを牽引するリーダーですね。第2ヴァイオリンのライナー・シュミットは落ち着いたサウンドと切れ味で、もしかするとルーカス・ハーゲンを上回るのではないかとも思える存在感。アイリス・ハーゲン(ルーカス・ハーゲンの奥さん)は見事にアンサンブルに溶け込んでおり、立派にヴェロニカ・ハーゲンの代役を果たしていました。 チェロのクレメンス・ハーゲンは辛口とも言える切れ味抜群の演奏。柔軟性も高く、自由自在にアンサンブルの中核としての役割を果たしていました。

ハーゲン・クァルテットの今日の演奏はそれぞれの曲の持ち味を、決して誇張することなくストレートに表出した素晴らしい演奏でした。このクァルテットの持ち前の繊細さに加えて、一層の力強さというか逞しさ身に付けた彼ら。大げさな表現を避けた引き締まった美しいフォルム、繊細さと鋭い踏み込みの両立、そして新鮮さを失わないフレッシュなサウンドを武器に、曲の持つさまざまな要素をバランスよく聞かせてくれました。また、ヴィヴラートを多用しない姿勢もフレッシュなサウンドにつながっているように感じました。

今まで何回か聴いた彼らの演奏の中でも最高の出来栄えの演奏で、明日の二日目も楽しみです。
らいぶ | comments (0) | trackbacks (2)

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ハーゲン・クァルテット ベートーヴェン後期弦楽四重奏曲全曲 第2夜 | えすどぅあ | 2005/02/27 01:22
昨日の第1夜が素晴らしかった、ハーゲン・クァルテットのベートーヴェン後期弦楽四重奏曲全曲演奏会。もちろん今日も第2夜を聴きに飯田橋へ。
作為のない音楽作り・・・。 | えすどぅあ | 2005/02/28 00:04
あと一日ありますが(笑)今月のまとめです。今月は計16本、昨年の2月と同じですな(^^;)。選ぶのに非常に悩みましたが、以下の5本を挙げておきます。