ブリュッヘン/新日本フィル トリフォニー定期 ラモー/モーツァルト/シューマン
在京オケ初登場のフランス・ブリュッヘン。モーツァルトのパリ交響曲では第2楽章の2つの稿両方を演奏してくれる様子。また、シューマンの2番は彼が初めて取り上げるレパートリーとのこと。定時退社後、錦糸町へ。
新日本フィルハーモニー交響楽団 トリフォニー・シリーズ 第381回定期演奏会まずはラモーのオペラ「ナイス」から2曲。舞台を見回すと指揮台の上に椅子が置いてあり、ブリュッヘンは椅子に腰掛けての指揮(2002年のベートーヴェンの時には座っていなかったような。でも、もう彼も70歳を超えてるんですよね)。また、オーケストラの配置がちょっと変わっているのが目に付きます。第1ヴァイオリンからヴィオラまでは普通に並んでいるのですが、指揮者の右側にはファゴット、最後列にコントラバスでチェロをはさんで横一列、オーボエが両ヴァイオリンの後方プルトの間、ティンパニは丁度ヴィオラの後方、そしてトランペットは低弦の右。弦は8-8-6-6-2で、ティンパニがバロックタイプだった以外は通常の現代楽器を使用していたようです。やはり弦はノン・ヴィヴラートですが、フランス・バロック物らしい艶やかな響きがホールを満たします。オーボエとヴァイオリンが強調するところも美しいし、トランペットも響きに華を添えていました。弦の刻みとティンパニと太鼓(フルネがアルルの女のファランドールで使うような胴が長いタイプ)が活躍するのが印象的な序曲、やっぱり踊りの音楽なんだなと素直に思えるシャコンヌ。学生の頃だったか、彼と18世紀オーケストラの「ボレアド」組曲のライブをNHK-FMから録音して良く聞いていたのを思い出しました。組曲でもいいからラモーもう少し聴きたい(笑)。
1. ラモー : 歌劇「ナイス」から
序曲 シャコンヌ 2. モーツァルト : 交響曲第31番ニ長調「パリ」K.297
I. Allegro assai II. Andante[6/8] Andante[3/4] III. Allegro * 2. シューマン : 交響曲第2番ハ長調op.61
フランス・ブリュッヘン指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団 (コンサートマスター:崔文洙)
2005年2月18日 19:15 すみだトリフォニーホール 大ホール
2曲目はモーツァルトのパリ交響曲。オーケストラはCb左、1Vn-Va-Vc-2Vnとした対向配置で管楽器は通常の配置。バロック・ティンパニはラモーと同じ右よりのVcとVaの後方に置かれており、弦の編成は10-9-6-6-3でした。無理のないテンポで弾かれた素朴なモーツァルトでしたね。第1楽章からラモーとは異なったややタイトな響き、決して早くないけど充分な推進力。第2楽章メヌエットは3/4拍子の初演稿、6/8拍子の改定稿の順で演奏されました。続けて演奏されると小さく愛らしい初演稿がプレ・メヌエットのように聞こえます。耳なじみのある改定稿は陰陽感があって、長いけど音楽的な充実度は高いですね。フィナーレも突っ走るのではなく、素朴な味わいが自然に出ていました。
休憩後はシューマンの第2交響曲。オケの配置はモーツァルト同様で、弦の編成はさらに増えて12-9-8-7-6。ティンパニは通常の現代楽器タイプを固めの撥で演奏していました。第1楽章冒頭のトランペットをはっきりと吹かせて、弦はノンヴィヴラートのざらっとした肌触りのピアニッシモで支える。そうすることによって、通常より金管の旋律がくっきりと聞こえてきます。主部に入ると無理のないテンポのアレグロで、シューマンの神経質な面をことさら強調しない自然で素朴な音楽作りが印象的。管も弦もくっきりと聞こえてくる響きのバランスもとても自然でした。一箇所だけアンサンブルが乱れたところはありましたが、すぐ回復したのはこのオケの回復能力の高さを証明。コーダの和音、開放弦の「ぐわん」という響きがとてもいいですね。第2楽章は2回目のトリオでの弦のノン・ヴィヴラートのピアニッシモが新鮮でそれを受け継いだ木管の歌も素晴らしい。コーダはややテンポアップして適度なスリリングさを感じさせてくれました。第3楽章は美しい限り。最晩年のバーンスタインのような思いをたっぷりと込めた演奏も大好きですが、ノン・ヴィヴラートの繊細な響きを生かした今日のような演奏もまた良し。聞き手が構えなくてもすっと、心の襞に入ってくる悲しみがなんともいえません。弦だけでなく木管のも味わい深いソロを聞かせてくれましたし、この曲のピアノ音楽的な特徴がよく出ていた演奏だと思います。そして終楽章はやや速めのテンポ設定ですが、ノン・ヴィヴラートを生かしたフレージングからくるもので必然性が感じられます。前半、ホルンの吹くリズムが今まで接したどの演奏よりもはっきりと聞こえてきてモットーのよう。一旦クライマックスが来てから絶妙の間をおいた後、弦の美しいピアニッシモから音が積み重ねられて、大げさな身振りではないけれども充分な盛り上がりを聞かせてくれました。繊細かつ素朴で、暖かいシューマンでした。
ラモー、モーツァルトそしてシューマンと時代を追っていくプログラミング。ブリュッヘンは時代が新しくなるにつれて、繊細さと素朴さが増していくアプローチがとても印象的な演奏会でした。
Comments
れみふぁそらしドットコムという
クラシック音楽の演奏者用のコミュニティサイトを運営しています。
うちのサイトからここをリンクさせてもらってよろしでしょうか?
私の拙い感想にTBをありがとうございました。
とっても美しい響きを堪能できたコンサートでした。
ノン・ヴィブラートのシューマンがあそこまで新鮮だとは思いませんでした。
>組曲でもいいからラモーもう少し聴きたい(笑)
同感です。
このコンビでも大歓迎ですから、もっとフランス・バロックを聴きたいですね。
こちらからもトラックバックをさせていただきます。
> うちのサイトからここをリンクさせてもらってよろしでしょうか?
わざわざ連絡ありがとうございます。もちろん、リンクOKです。
コメントとTB、ありがとうございます。
> ノン・ヴィブラートのシューマンがあそこまで新鮮だとは思いませんでした。
本当にそうでしたね。
> このコンビでも大歓迎ですから、もっとフランス・バロックを聴きたいですね。
プログラム全部とはいわないまでも、前半だけとか(笑)。なるべく近いうちの再登場を期待したいものです。