マ/クレーメル/クレメラータ・バルティカ ハイドン/モーツァルト/シューベルト
グルベローヴァの後は、初めてのミューザ川崎でマをフューチャーしたクレーメル率いるクレメラータ・バルティカの演奏会です。池袋から川崎へ。
ヨーヨー・マ & ギドン・クレーメル with クレメラータ・バルティカ自分の席に行く前に、初めていく時恒例のホール内外をうろうろ。ホール入口から上階へと客席へ動線が初めてだと迷うなこれは。各階ロビーもやや狭い印象。続いてホール内。2階正面だとかなり舞台に近い、4階正面でも舞台からは思ったほど遠くない印象。とか、いろいろ思いつつ3階の自席へ。
1. ハイドン : チェロ協奏曲第2番ニ長調 Hob.VIIb:2 2. モーツァルト : 協奏交響曲変ホ長調 K.364 休憩 3. シューベルト : 弦楽四重奏曲第15番ト長調 D.887 (弦楽オーケストラ版) アンコール 4. シューベルト : 3つのメヌエット から 第2曲
チェロ : ヨーヨー・マ ヴァイオリン : ギドン・クレーメル(2,3&4)
クレメラータ・バルティカ室内管弦楽団
2004年10月23日 19:00 ミューザ川崎 シンフォニーホール
まずはマをソリストにしたハイドンから。オケは弦6-6-4-4-2の編成。チェロのTuttiをマが一緒に弾く形で演奏されました。冒頭から弦合奏の柔らかい響きで聞き手の耳をひきつけます。協奏曲というよりはマをリーダーとしたインティメートな室内楽の趣。マの明るく伸びやかなソロと一体となって音楽を奏でるオーケストラ。まことに優美かつ繊細で、曲がマイナー調になるとデモーニッシュな味を聞かせ単なる癒しではない音楽を聞かせてくれました。オーボエとホルンが弦の響きに絶妙に調和していて見事でした。コンサートの最初にはもったいないご馳走でした。
続くクレーメルとマをソリストにしたモーツァルト。普通はヴァイオリンとヴィオラの曲ですが、ヴィオラのソロをマのチェロでという趣向。ここでも、ソリストがTuttiを弾きながら曲を進めていきます。ここでもクレーメルがリーダーとして室内楽的な趣は変わらないのですが、リーダーが変わることによってやはり味が変わるのが面白い。この曲では、基本線は一緒ですが響きがシャープな傾向になるのがクレーメルらしいところ。鋭角的な切り込みが特徴のクレーメル、明るく柔らかい音色とピアニッシモ方向に味をみせるマ。ヴァイオリン→チェロと追っかける仕組みになっているこの曲では、その対比とがとても面白い。
後半は、クレーメルとマがそれぞれのトップに座ってのシューベルト(クレーメルとマを入れて編成は7-6-4-4-2)。前半よりしっかりとした響きをベースに、決してメロディを声高に演奏せずに繊細かつどちらかといえば内向的で、曲の長さとは逆に凝縮度の高いシューベルトといえる演奏でしょうか。第1&2楽章の不安げなヴァイオリン(クレーメル→陰)の表情と節度を保ちつつ柔らかな表情で歌うチェロ(マ→陽)の対比、第3楽章のトリオでの柔らかな幸福感、そして終楽章のヴァイオリンの奏でる民謡調旋律の生き生きとした表情。前半2楽章(陰)と後半2楽章(陽)の明確な対比。そしてクレメラータ・バルティカの互いを良く聞きあった、室内楽の延長ともいえる緊密なアンサンブル。大きなホールでも妙にスケールを拡大するのではなく、あくまで自分達が作った音楽を変わらずに奏でる様は見事でした。アンコールのシューベルトのメヌエットも、ただ美しいだけではなく陰影に富んだ好演でありました。
さて初めてのミューザ川崎ですが、なかなかいいホールになりそう。舞台で奏でられた音が余計な響きを伴わずにストレートに届いてくる印象です。サントリーホールのようにゴージャスではないけど、音楽に潤いを与えるのに必要十分な響き。その響きの質も変な癖がなくて非常にニュートラル。また首都圏のホールのなかでは抜群の静寂感が素晴らしい。オーディオ的に言うとS/N比が非常に高いという表現でしょうか、暗騒音のレベルが非常に低いと思われます。鉄道の影響を避けるための、アイソレート構造が功を奏しているのでしょうか。すみだトリフォニーホールとどこか(具体的に思いつかないけど・・・)の良いところを採ったような印象。木材やコンクリートの乾燥が進んでいくともっといい響きになるような気がします。
明日のサントリーホールでの公演も非常に楽しみになりました(笑)。
Comments