松居直美/スダーン/モーツァルテウム管 モーツァルト:リンツ&ジュピター
ザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団 オール・モーツァルト・プログラムスダーンのモーツァルトは何年か前に東響で聞いたことがあります。ピリオド古楽奏法を取り入れたアプローチが印象に残っていますが、もちろん今日の演奏もそのアプローチに沿ったもの。モーツァルテウム管の楽器はもちろんモダン楽器を使用しての演奏です。
1. モーツァルト : 交響曲第36番ハ長調 K.425「リンツ」 2. : 教会ソナタ第1番変ホ長調 K.41h 3. : 教会ソナタ第12番ハ長調 K.263 4. : 教会ソナタ第17番ハ長調 K.336d 休憩 5. : 交響曲第41番ハ長調 K.551「ジュピター」 アンコール 6. : 2つの行進曲ニ長調 K.320a(335) から 第1曲 7. : カッサシオン K.63 から
オルガン : 松居直美(2,3&4)
ユベール・スダーン指揮 ザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団
通奏低音(オルガン) : 徳岡めぐみ(4)
2004年10月30日 19:00 ミューザ川崎 シンフォニーホール
最初はリンツ交響曲ですが、これが面白い。冒頭のアコードでのリズムをアクセント的に短く奏させ、その後の主部に入るまでは弦のノン・ヴィヴラートを主体とした新鮮な響きが耳に残ります。主部に入ると、ノン・ヴィヴラート奏法の自然な音の減衰と線の細い繊細な音色が各所で効果的に生かされ、金管もアタックを強調したり、ホルンも音を割ったような音を使ってエネルギーを噴出させるよう。明るい喜びというよりは、いわば爆発的な喜びを表出します。第2楽章にはいると、同じフレーズを場所によって違った表情で弾かせているのが面白い。ある上昇音形を含むメロディーはスタッカート的に階段を駆け上がるように、あるところはレガートで滑らかにスルスルと、あるところは両方を取り入れて等と。時にささやいたり、ぺちゃくちゃとおしゃべりしたり等々、多彩な表情で聞かせてくれます。これなら飽きないし眠くならない(笑)。第3楽章も三拍子のリズムを強調するような金管とトランペットの響き、それと対照的なトリオの穏やかさが印象的。トリオのエコーがもうちょっと明確に現れるともっとよかったかも。フィナーレは第1楽章よりも強い喜びの爆発といっても過言ではないでしょう。いろんな面でスコアを見て聞きたくなった演奏でした、本当に面白かったし楽しかった。
次は松居直美を迎えて教会ソナタを3曲。1曲目はポシティフ・オルガン、2曲目と3曲目ははホールの大オルガン(3曲目はポシティフ・オルガンを通奏低音として使用)で演奏されました。大オルガンは舞台上にリモートの演奏台を設置しての演奏でした。このホールのオルガンを聴くのはもちろん初めて(なんせ今日がこのホール2回目ですんで)。松居直美のストップの選択センスの良さもあるのでしょうが、変な癖がなくてオーケストラだけでなくいろんな組み合わせで相性が良さそうです。演奏は3曲目でオケとオルガンのアンサンブルにやや乱れが生じてしまったのが残念ですが、生き生きとしてチャーミングな演奏だったように思います。段々とオルガンの活躍する度合いが増えていく選曲も考えられたものですね。今日は2LAブロックのオルガンそばに座ったのですが、オルガンのスイッチが入ると空調の音が、演奏が始まるとメカニックのいろんな音が聞こえてくるのが面白かった。
後半はジュピター。基本的にはリンツと同じピリオド系のアプローチが基調ですが、リンツほどいろいろやってなくて正攻法。そういう曲ではないですね、ジュピターって。いい意味で遊ぶ余地がないというか隙がないというか。細かいこと云々というより、演奏者の本当の意味での力が現れるなあと。変な小細工が許されない(というか出来ない)曲だなと、つくづく感じました。スダーン/モーツァルテウム管の演奏は曲の持つエネルギーを十二分に表出し聞き手に感じさせてくれる、充実した好演奏でした。
アンコールはユーモアたっぷりに弾かれた行進曲と、ピアニッシモ主体にでチャーミングに仕上げられたカッサシオンの2曲でした。
さて、先週に続いて2度目のミューザ。基本的な印象は先週と同じ。今日はほぼバックネット裏ですが、サントリーホールの似たような位置より自然なバランスで音が聞こえるような気がします。サントリーホールと比べて、舞台から高い位置に座席があるのがその要因かもしれません。
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