グルベローヴァ/ハイダー シューベルト/R.シュトラウス
ウィーン国立歌劇場来日公演「ドン・ジョヴァンニ」で素晴らしいドンナ・アンナを聞かせてくれたグルベローヴァ。シューベルトとR.シュトラウスのリートを聞きに池袋へ。
エディタ・グルベローヴァ "シューベルト、R.シュトラウスの歌曲を歌う"前半はシューベルトのリート。最初の曲からからグルベローヴァらしい響きの良くのったよく通る声がホールを満たします。ハイダーの清潔感と静謐さをもったピアノ出始められた「夜と夢」、絶妙にコントロールされた息の長いロングトーンがその静謐さを一層際立たせます。「シルヴィアに」はハイダーのピアノも含めてもう少しパリっとした感じが欲しいところ。コミカルに味付けが愉しい「恋はいたるところに」。ここまでくればグルベローヴァ節全開といったところ。「ズライカI」「グレートヒェン」はグルベローヴァの劇的な表現力が素晴らしい。「グレートヒェン」ではハイダーの六連符がもう少し滑らかであると歌がもっと生きたかなあと思います。そして前半最後の「岩の上の羊飼い」。生方正好のクラリネットが前奏部分で決まらなくて心配しましたが、グルベローヴァの歌が入ってきたとたん、呼応して絶妙にさえずりはじめるではありませんか。グルベローヴァの歌うの歌の力のすごさを垣間見たような。グルベローヴァは今までの曲より少し明るめの音色で、ストレートに歌い上げていました。彼女のリートを生で聞くのは初めてですが(今までは全部オペラ)、どんな部分でも決して無機的にならず有機的に聞こえる声とそれをコントロールする技術を駆使しての表現力はこのリートの世界でも素晴らしいですね。
1. シューベルト : 秘めごと 作品14-2 D.719 2. : 笑いと涙 作品59-4 D.777 3. : 夜と夢 作品43-2 D.827 4. : シルヴィアに 作品106-4 D.891 5. : 恋はいたるところに D.239 6. : ズライカI 作品14-1 D.720 7. : グレールヒェンの歌 D.210 8. : ミニョンの歌(この装いを許したまえ) 作品62-3 D.877 9. : 糸を紡ぐグレートヒェン 作品2 D.118 10. : 岩の上の羊飼い 作品129 D.965 休憩 11. R.シュトラウス : 夜 作品10-3 12. : ダリア 作品10-4 13. : 万霊節 作品10-8 14. : 見事にいっぱいな 作品49-2 15. : ひそやかな誘い 作品27-3 16. : 献身 作品10-1 アンコール 17. アリャビエフ : ナイチンゲール 18. ベッリーニ : 歌劇「テンダのベアトリーチェ」から もし私に墓をたてることが許されても 19. ドニゼッティ : 歌劇「シャモニーのリンダ」から カヴァティーナ「この心の光」
ソプラノ : エディタ・グルベローヴァ ピアノ : フリードリヒ・ハイダー クラリネット : 生方正好(10)
2004年10月23日 15:00 東京芸術劇場 大ホール
後半はR.シュトラウスのリート。前半と比べて声の色というか表現が濃く感じられますね。シューベルトよりも更に幅広いダイナミクス、曲に相応しい音色、そして劇的な感情表現。「技術はこういう風に使うのよ」っていいたげですが、出てくる音楽は技術云々ではなく実に自然なものになっているのが彼女のすごいところでしょう。プログラム的には「ひそやかな誘い」で終わっても良かったと思いますが、有名な「献身」は駄目押しですな(笑)。
アンコールはリートとはうってかわって、彼女のコロラトゥーラを楽しむのに格好の3曲。もうこれは素晴らしいというしかないですわ。最高音部での声質が硬くなったかなあとも思いますが、それでもこれだけの高レベルでこのような曲を歌える人はそういないでしょう。ナイチンゲールのエコーなんかとても一人で歌っているとは思えませんでした。客席もかなり盛り上がっていました。
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