ハンガリー国立歌劇場 椿姫 ボンファデッリ/ブルゾン
ハンガリー国立歌劇場来日公演 椿姫ボンファデッリのヴィオレッタは第1幕では自由奔放に歌おうとする意思は見えるのだが、オーケストラを含めた周りが四角四面的な音楽に足を引っ張られてるように聞こえます。「そはかのひとか」あたりからは一人なので調子を出してきましたが、彼女ならもっと勢いのある奔放な歌が聞きたい。それでも、第2&3幕は彼女のペースになってきて、伸びのある声を聞かせてくれました。時折、ヴィヴラートのかかり具合からか低い声での音程がほんの少し低めに聞こえるのがやや残念。彼女もブルゾンみたいに有無を言わさずに自分のペースに巻き込むことが出来るとようになるといいですね。
ヴェルディ:椿姫
ヴィオレッタ・ヴァレリー : ステファニア・ボンファデッリ フローラ・ベルヴォア : エリカ・ガール アンニーナ : アンナマーリア・コヴァーチュ アルフレード・ジェルモン : イシュトヴァーン・コヴァーチハージ ジョルジョ・ジェルモン : レナート・ブルゾン ガストーネ子爵 : アンドラーシュ・ラツォー ドゥフォール男爵 : ラヨシュ・ミラー ドビニー公爵 : アーコシュ・アンブルシュ 医師グランヴィル : チャバ・アイリツェル
アダム・メドヴェツキー指揮 ハンガリー国立歌劇場管弦楽団 ハンガリー国立歌劇場合唱団 ハンガリー国立歌劇場バレエ団
演出 : アンドラーシュ・ベーケーシュ
2004年10月17日 17:00 Bunkamura オーチャードホール
ブルゾンの父ジェルモンは素晴らしいの一言。毅然とした最初の第一声から、厳しい父親像を明確に形作ります。発声と歌のフォームがきちんと保たれているのと、声の艶も良くのっています。第2幕第1場は指揮者ではなく、明らかにブルゾンが音楽を牽引していたといっても過言ではないでしょう。
コヴァーチハージのアルフレードはまあまあといったところでしょうか。良くも悪くも座付きの手堅い歌唱です。ボンファデッリの相手役としては役不足ですし、アルフレードとしてもなんらかの魅力が欲しいですね。ボンファデッリとブルゾンの存在感に対抗できる人をキャスティングして欲しかったと思います。他の座付きの歌手達もこれといった穴はなくまずまずの歌唱でした。
メドヴェツキー指揮のオーケストラは丁寧に整えられた印象で、手堅い演奏ぶり。ただちょっと固すぎるきらいがあって歌手に柔軟につけてほしいのと、音楽に動きが欲しい。オーケストラは美しい音を奏でていただけに残念。生き生きとした動きのある音楽を奏でていたならば、全体の印象もまた違ってきたことでしょう。
演出は大きな舞台装置をおかずに大きな鏡面を動かして場を設定、人の動きも不自然なところはなくて音楽に集中できるもの。これといって主張はないものの、オーソドックスな演出といえるでしょう。
全体としてはボンファデッリとブルゾンは良かったものの、メドヴェツキーの指揮に全体の印象をやや引っ張られてしまった公演だったかなと思いました。
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