新国立劇場 カヴァレリア・ルスティカーナ&道化師 フィオリッロ/ジャコミーニ/阪/東フィル
道化師のカニオ役がセルゲイ・ラーリンからベテランのジュゼッペ・ジャコミーニに変わった、「カヴァレリア&道化師」の千秋楽。昨年のホフマン物語で新国立劇場デビューを飾った阪哲朗の指揮も楽しみに初台へ。
新国立劇場 2004/2005シーズン カヴァレリア・ルスティカーナ 道化師
グリシャ・アガサロフの演出はシンプルな舞台装置と現代風(演出家によると1950年代のイメージとのこと)の衣装ですが、まったく奇をてらったところのない音楽に専念できるオーソドックスとも言えるもの。前奏曲でローラとトゥリッドゥの不倫(?)現場を見せたり、決闘シーンを舞台奥で見せていたのが印象的。それでも全体の印象が薄くならないのは演奏の力かと。ただ、見栄えがあまりにも清潔すぎるような気がしないでもありませんでした(静的とも言えますかねえ)。
阪哲郎指揮する東フィルはヴァイオリンを中心とした音の響きの美しさと決して歌いすぎない清潔なカンタービレが印象的。ただ普通のイタリアン・カンタービレとは異なる風味がしますので、やや好悪をわかつかも知れません。やはり阪哲朗は抜群のオケ捌きと、要所をきちんと締めた手綱捌きが光りますね。前奏曲と間奏曲の一歩下がった繊細で美しい演奏は見事でした。合唱も女声と男声に割り当てられた音楽の性格の違いをうまく表現していました。敢えて言えば男声がもう少ししゃっきりして欲しかったかなあ。
休憩のあとはジャコミーニがタイトルロールを歌う道化師。ソリスト、合唱、オケが一体となった優れた上演でありました。でも、「もっともっと(古いですね)!」を求めたくなったのも正直なところです。タイトルロールのジャコミーニはバリトンと言ってもいい音色と力強さが両立していましたし、決め所を決して外さないベテランらしい歌唱と言えます。カニオのやりきれない心情が十分に表現されていました。でもでも(あえて反復)、やはり声の衰え(特に多目のィヴラート)はやはり隠せません。5年いや10年前だったらとの思いを抱かざろうえませんでした。でも、最後の「喜劇は終わった」の口上は素晴らしかった、それだけでも落涙しそう。ネッダのガルスティアンは劇中劇でのコミカルな味が印象的。高音での響きが充実してくるともっと魅力的なネッダになっていたように思います。トニオのティッヒはよく練れた歌唱でベテランの味がよく出た素晴らしい歌唱。プロローグの口上は見事でしたよ本当に。欲をいうとトニオにしてはいい人過ぎませんかねえ・・・。ペッペの吉田浩之は軽妙なキャラクターがぴったりの好演。こんなコミカルな役もできるんですね彼。シルヴィオのローゼンはスタイリッシュでカッコイイ(歌も容姿も)、ネッダが惚れるのも無理は無い(笑)。
阪指揮する東フィルはカヴァレリアとほぼ同じ印象ですが、こちらのほうがより曲にマッチしていたように感じられました。生き生きとした表現は非常に魅力的です。合唱と児童合唱は生き生きとした活気があって、とても良かったよかったと思います。
アガサロフの演出は基本的にはカヴァレリアと同じ装置と衣装および時代設定を使用し、サーカス風な味付けを施したもの。トニオの口上は幕前ではなくて舞台中央の丸い赤い2段重ねの台上だったり、カニオが出てくるのは三輪自動車だったり、シルヴィオも自転車に乗って登場したり、現代的な味付けが特徴でしょうか。最後のカニオの一言の場面に代表される照明の使い方が効果的でした。
最後に阪哲朗について一言。新国立劇場での起用は昨シーズンのフランス物、今回のイタリア物ときてますが次回は絶対にドイツ・オーストリア物で起用してくださいね、ノヴォラツスキーさん。彼の音楽の個性に一番ぴったりすると確信していますので・・・。
まずはカヴァレリア・ルスティカーナから。このオペラの持つ(渦巻く)情念をストレートに聞き手に対してあらわした、聞き応えのある演奏でした。サントゥッツアのフィオリッロの声の美しさよりはトゥリッドゥへの思いを存分に込めた歌唱。それに対するトゥリッドゥのキスも力強い声で、それに充分に対抗。6月の友人フリッツでベッペを好演したローラの山下牧子は出番が少ないのが残念に思える充実した出来栄え。今日だけというのはもったいない(他日は坂本朱)。アルフィオの青戸知は役に対して声が明るいのが難点ですがトゥリッドゥとのシーンではキスと堂々と渡り合っていました、そしれルチアの片桐仁美はサロメやルチアの時より声のコンディションは良好で表現も堂にいっていますが、やや表現の方向が違うような気がしました。総じて声の美しさより、役柄の心情を充分に込めることのできる表現力を持ったキャスト(特にフィオリッロとキス)だったと思います。
1. マスカーニ : カヴァレリア・ルスティカーナ 全1幕 休憩 2. レオンカヴァッロ : 道化師 全2幕
カヴァレリア・ルスティカーナ
サントゥッツア : エリザベッタ・フィオリッロ ローラ : 山下牧子 トゥリッドゥ : アッティラ・B・キス アルフィオ : 青戸知 ルチア : 片桐仁美
道化師
カニオ : ジュゼッペ・ジャコミーニ ネッダ : ジュリエット・ガルスティアン トニオ : ゲオルグ・ティッヒ ペッペ : 吉田浩之 シルヴィオ : ルドルフ・ローゼン
阪哲朗指揮 東京フィルハーモニー交響楽団 (コンサートマスター:青木高志) 新国立劇場合唱団 (合唱指揮:三澤洋史) 世田谷ジュニア合唱団(2) (児童合唱指揮:掛江みどり)
演出 : グリシャ・アサガロフ
2004年9月23日 15:00 新国立劇場 オペラ劇場
グリシャ・アガサロフの演出はシンプルな舞台装置と現代風(演出家によると1950年代のイメージとのこと)の衣装ですが、まったく奇をてらったところのない音楽に専念できるオーソドックスとも言えるもの。前奏曲でローラとトゥリッドゥの不倫(?)現場を見せたり、決闘シーンを舞台奥で見せていたのが印象的。それでも全体の印象が薄くならないのは演奏の力かと。ただ、見栄えがあまりにも清潔すぎるような気がしないでもありませんでした(静的とも言えますかねえ)。
阪哲郎指揮する東フィルはヴァイオリンを中心とした音の響きの美しさと決して歌いすぎない清潔なカンタービレが印象的。ただ普通のイタリアン・カンタービレとは異なる風味がしますので、やや好悪をわかつかも知れません。やはり阪哲朗は抜群のオケ捌きと、要所をきちんと締めた手綱捌きが光りますね。前奏曲と間奏曲の一歩下がった繊細で美しい演奏は見事でした。合唱も女声と男声に割り当てられた音楽の性格の違いをうまく表現していました。敢えて言えば男声がもう少ししゃっきりして欲しかったかなあ。
休憩のあとはジャコミーニがタイトルロールを歌う道化師。ソリスト、合唱、オケが一体となった優れた上演でありました。でも、「もっともっと(古いですね)!」を求めたくなったのも正直なところです。タイトルロールのジャコミーニはバリトンと言ってもいい音色と力強さが両立していましたし、決め所を決して外さないベテランらしい歌唱と言えます。カニオのやりきれない心情が十分に表現されていました。でもでも(あえて反復)、やはり声の衰え(特に多目のィヴラート)はやはり隠せません。5年いや10年前だったらとの思いを抱かざろうえませんでした。でも、最後の「喜劇は終わった」の口上は素晴らしかった、それだけでも落涙しそう。ネッダのガルスティアンは劇中劇でのコミカルな味が印象的。高音での響きが充実してくるともっと魅力的なネッダになっていたように思います。トニオのティッヒはよく練れた歌唱でベテランの味がよく出た素晴らしい歌唱。プロローグの口上は見事でしたよ本当に。欲をいうとトニオにしてはいい人過ぎませんかねえ・・・。ペッペの吉田浩之は軽妙なキャラクターがぴったりの好演。こんなコミカルな役もできるんですね彼。シルヴィオのローゼンはスタイリッシュでカッコイイ(歌も容姿も)、ネッダが惚れるのも無理は無い(笑)。
阪指揮する東フィルはカヴァレリアとほぼ同じ印象ですが、こちらのほうがより曲にマッチしていたように感じられました。生き生きとした表現は非常に魅力的です。合唱と児童合唱は生き生きとした活気があって、とても良かったよかったと思います。
アガサロフの演出は基本的にはカヴァレリアと同じ装置と衣装および時代設定を使用し、サーカス風な味付けを施したもの。トニオの口上は幕前ではなくて舞台中央の丸い赤い2段重ねの台上だったり、カニオが出てくるのは三輪自動車だったり、シルヴィオも自転車に乗って登場したり、現代的な味付けが特徴でしょうか。最後のカニオの一言の場面に代表される照明の使い方が効果的でした。
最後に阪哲朗について一言。新国立劇場での起用は昨シーズンのフランス物、今回のイタリア物ときてますが次回は絶対にドイツ・オーストリア物で起用してくださいね、ノヴォラツスキーさん。彼の音楽の個性に一番ぴったりすると確信していますので・・・。
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オテッロ実行委員会 山根春夫