藤原歌劇団 カルメン Bキャスト 藤村/チョン/フランス国立放送フィル
今日のBキャストは当初発表のキャストからの変更はエスカミーリョのシュロットのみ。今年4月のトーキョーリング「神々の黄昏」で素晴らしいヴァルトラウテを演じた藤村実穂子が、今日はタイトルロールを歌うカルメンへ。
藤原歌劇団創立70周年記念 藤原歌劇団/オランジュ音楽祭共同制作 カルメンAキャストでの主役3人の出演者変更があったとはいえ、藤村実穂子を中心とするキャストがBキャストなのが非常にもったいないと思える公演でした(1回ではもったいない)。第1幕のハバネラからして図抜けた存在感を示し、男を幻惑させる手練手管を完璧に備えた藤村流ともいえる凄みと怖さもったカルメン像を打ち立てていました。彼女が歌うと場の雰囲気が一変するのは神々の黄昏のヴァルトラウテでも示されたところですが、やはりそのオーラをもかんじさせる存在感は見事としかいいようがありません。その藤村カルメンに相対するホセのチョン・イグンは高い声の響き等、未成熟な若さを随所に感じさせるものの彼の持つ能力(以上かも)を最大限に発揮して立派に相対していました。中低音の実のある声質を高音域まで統一させることができれば、ピアニッシモや柔らかい声のコントロール力を持ち合わせているので更に充実したホセを演じることができる人材と重います。エスカミーリョのシュロットは明らかに昨日より充実した出来栄え。中途半端さがなくなり押し出しの強い持ち声を最大限に利用した歌いぶりで、強いエスカミーリョ像を立派に演じていました。ミカエラの井上ゆかりは田舎娘らしい可憐な感じが昨日のラスパリョージとは違う味わい。息の長いフレーズの歌い方がやや未成熟なところが残念ですが、今後の成長を期待できる人と思います。
ビゼー:カルメン 全4幕 (シェーダン版による オペラ・コミック・オリジナルバージョン)
カルメン : 藤村実穂子 ドン・ホセ : チョン・イグン エスカミーリョ : エルウィン・シュロット ミカエラ : 井上ゆかり モラレス : 三浦克次 スニガ : 妻屋秀和 フラスキータ : カン・ヘミョン メルセデス : 鳥木弥生 ダンカイロ : 柴山昌宣 レメンダード : 小山陽二郎
チョン・ミョンフン指揮 フランス国立放送フィルハーモニー管弦楽団 藤原歌劇団合唱部 (合唱指揮:佐藤正浩) 韓国国立オペラ合唱団 (合唱指揮:コ・ソンジン) 東京少年少女合唱隊 (児童合唱指揮:長谷川冴子/長谷川久恵)
演出 : ジュローム・サヴァリ
2004年9月19日 16:00 東京文化会館 大ホール
その他の脇役陣に関しては昨日と同様に、各人の役割をしっかりと果たした歌いぶり。スニガの妻屋秀和は昨日よりはいやらしさが減じていて好印象でした。
チョン指揮するフランス国立放送フィルも昨日に増して決め所がびしっと決まり、弦楽器を中心とした感情の高まりの表現は本当に素晴らしい演奏でした。藤村カルメンの存在感への対応も柔軟性を発揮しながら、全体をきりりと引き締めチョンの棒は素晴らしいものと言えます。例えば、ミシェル・プラッソンあたりが指揮するとフランスの香りがぷんぷんするような演奏が期待できるとはおもいますが、チョンの今日の演奏は全く違う視点のものと言えますが充分に納得できる解釈でした。
合唱についても昨日に準ずる充実した出来栄え。演出に関しては昨日に付け加えることは特にありませんが、本当に安心して音楽に向き合える演出と言えましょう。
カーテンコールは昨日より長く、熱い拍手が惜しみなく送られていたことを追記しておきます。
チョンの日本でのオペラ公演は演奏会形式の魔弾の射手を含めて3プロダクション目(あとは蝶々夫人)ですが、伝統的な視点とは違う方向からのアプローチが非常に新鮮です。是非とも、年1回でも定期的に実現して欲しいものです。
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