東京室内歌劇場 インテルメッツォ Aキャスト 釜洞/若杉/東響
東京室内歌劇場 36期 第108回定期公演このインテルメッツォという作品、作曲家自身の夫婦喧嘩がネタになっているという世にも珍しい(?)オペラ。かえって夫婦喧嘩のネタになりそうな気がしますが・・・。R. シュトラウスらしく言葉の数はめちゃくちゃ多く、ほとんど出ずっぱりのクリスティーネなんかは大変だろうなあと。聞く側からすると、最初の言葉の洪水に慣れてくれば話の筋はシンプルなのですんなりこのオペラの世界へ入ることができました。
R.シュトラウス : インテルメッツォ (交響的間奏曲を伴う2幕の小市民喜劇)
ロベルト・シュトルヒ : 多田羅迪夫 クリスティーネ : 釜洞祐子 ルンマー男爵 : 近藤政伸 アンナ : 若槻量子 公証人 : 竹澤嘉明 公証人の妻 : 青木美稚子 楽長シュトロー : 松浦健 商工業顧問官 : 藪西正道 法律顧問官 : 有川文雄 宮廷歌手 : 平野忠彦 料理女ファニー : 村松桂子 マリー : 山咲史枝 テレーズ : 佐々木理江 レジ : 柏原 奈穂 フランツ少年 : 吉澤妃美香
若杉弘指揮 東京交響楽団 (コンサートマスター:大谷康子)
バレエ : 東京シティ・バレエ団 (小山清佳/五十嵐妙子/小田嶋千絵/吉田郁恵/佐々木ゆず香/広瀬麗)
演出 : 鈴木敬介
2004年7月17日 18:00 新国立劇場 中劇場
そのクリスティーネを歌ったのは釜洞祐子。はっきりくっきりとした発音、的確な言葉捌きと表現力。字幕に頼らず言葉で笑いを誘うあたりは素晴らしいというしかありません。数少ない旋律的な部分も美しい声と表現力で魅力的に聞かせてくれました。全編を通じて安定した力量を感じさせてくれました。いやはや素晴らしかった。
その夫、ロベルト・シュトルヒは多田羅迪夫。こちらもはっきりとした発音が身上ですが、やや音楽のリズムに乗り切れないところが残念。やや調子を崩していたのか2幕での高い声が苦しそうでした。
クリスティーネの若い男友達、ルンマー男爵は近藤政伸。1幕5場でのクリスティーネと新聞を読む場面での滑稽な演技はとても良かったし、安定した歌唱で楽しませてくれました。
クリスティーネの世話役、アンナの若槻量子も好演。このオペラ、シュトルヒとクリスティーネのやりとりだけでなく、クリスティーネとアンナの丁々発止のやりとりも良くないと楽しみが半減すると思います。釜洞祐子との生き生きとしたやりとりは聞きものです。
他の役も穴がなく、人が揃っていてとても良かったと思います。
若杉弘指揮する東響も細部での乱れはありましたが、リヒャルト・シュトラウスの音世界を的確に表現していました。明日以降、アンサンブルが練れてくることを期待したいと思います。
演出は鈴木敬介。いつもながらシンプルな舞台で、四つの壁を場面に応じて配置を工夫して表現していました。人の動きも音楽を阻害せず、安心して見ていられました。1幕2場のそりすべりの場面は白いシート等で雪を表現していましたが、シンプルですがこんなやりかたもあるのかと感心(凝ったことは時間上無理でしょうし)。
全体的には日本初演に恥じない水準の高い上演だったと思いますし、(実生活上は御免被りたいですが)夫婦喧嘩を楽しむことが出来ました。R.シュトラウスってなんでも題材して、なんでも音楽で表現できるすごいひとですな。
Comments