えすどぅあ

コンサートやオペラの感想を中心とした音楽日記になったかなあ・・・。

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C.アルミンク/新日本フィル/森麻季/松本和将 サントリー定期 J.S.バッハ/バルトーク/シューマン

年が明けてから19日、今年6本目のコンサートにしてサントリーホールでの聴き初め。単なるカレンダーの綾とはいえ、クリスマスのBCJメサイアから25日以上もこのホールに足を踏み入れなかったのも珍しいかも(笑)。今日はアルミンクと新日本フィルのサントリー定期を楽しみに六本木一丁目へ。
新日本フィルハーモニー交響楽団 サントリーホール・シリーズ 第411回定期演奏会

1.J.S.バッハ教会カンタータ第51番「もろびと、歓呼して神を迎えよ」BWV51
2.バルトークピアノ協奏曲第3番 Sz.119
3.シューマン交響曲第3番 変ホ長調 作品97 「ライン」

ソプラノ森麻季(1)
トランペットデイヴィッド・ヘルツォーク(1)
ピアノ松本和将(2)

クリスティアン・アルミンク指揮新日本フィルハーモニー交響楽団
(コンサートマスター:西江辰郎)

2007年1月19日 19:15 サントリーホール 大ホール
開演時間間際に会場に辿り着き、「一曲目は小編成ですのでお急ぎ下さい~」というレセプショニストの声を聴きながらホール内に入るのはいつものことながら忙しない。それが出来るのも、NJP定期の15分遅い開演時間があってのこと。josquinにとってこの15分は実に有り難い(^^♪。

プログラムの最初は森麻季をソリストに迎えたバッハの教会カンタータ「もろびと、歓呼して神を迎えよ」。バッハのロ短調ミサや受難曲ではなく教会カンタータが、在京オーケストラの定期に取り上げられるのはかなり珍しいことかもしれません。NJPは弦楽を1Vn-2Vn-Va-Vc/Cbの配置で、かなり小ぶりの6-4-3-2-1の編成。ポジティフ・オルガン(室住素子)とトランペット(デイヴィッド・ヘルツォーク)は右寄り、チェロの後方に配置されていました。黒基調としたすっきりとした印象の衣装を纏った森麻季は、チェロやオルガンに近い指揮者の右側で歌います。

第1曲からトランペットが彩る祝祭的な雰囲気に満ちているこのカンタータ。森麻季の歌声にぴったりではないかと思うのですが、今日はいまひとつ冴えませんね。難易度の高いパッセージと言葉が一体になっていないようにも、調子を落としているようにも聞こえる。もっといけると思う歌い手だけに少々残念ですが、アルミンク/NJPの側にも声が映えない一因があるようにも感じられます。オーケストラのアンサンブルとしては良好なのですが、そのアンサンブルの一員に歌声が含まれていないような感じを受けました。森麻季はもともと声量の豊かな歌い手ではないだけに、器楽の間を縫う声の入る余地をもう少し作って欲しかったなと思います。

2曲目は松本和将を迎えたバルトークのピアノ協奏曲第3番。オーケストラは弦を増強して14-12-10-8-7の編成での演奏。松本和将の演奏を聞くのは多分はじめてですが、表情豊かに音楽を奏でる人ですね。演奏している表情の豊かさと、出てくる音楽の表情の豊かさが一致している。彼の演奏を見聞きしていると、指揮者の広上淳一の指揮姿と音楽をなんとなく想起してしまったのは私だけでしょうか(笑)。両端楽章は彼の饒舌な表情の豊かさが良く生かされた演奏でしたね。でも、私が一番感心したのは第2楽章の晩年のバルトーク心境を表したような静謐で苦味のある世界を見事に表現していたこと。アルミンク/NJPの繊細な弦のピアニッシモに続いて、研ぎ澄まされた美音と饒舌さを封印した表現は素晴らしかったと思います。

休憩をはさんでプログラムの最後に演奏されたのはシューマンのライン。NJPから溶け合ったまろやかな一体感のあるサウンドを引き出し、対位法的なやりとりや低弦のリズムを適度に引き立てながら早めのテンポで曲を進めていくアルミンク。颯爽とした歩みが心地よい第1楽章と第2楽章、第3楽章はほのかな明かりが明滅するような情景描写が秀逸。荘重ながら暖かいコラールが印象的な第4楽章に続き、第5楽章は柔らかな表情の冒頭から颯爽と風を切るコーダへの流れが秀逸でした。スコアを透かして見せるようなアプローチも好みですが、アルミンクの適度に見える(あるいは見えない)やり方もまたシューマンらしくて好ましく感じました。

現在、NJPのオーボエ首席は青山聖樹(現在、N響主席)の退団後ろは古部賢一ひとり。したがって、彼が出番でない日はゲストが呼ばれて首席を務めることになります。今日のオーボエ首席はゲストの荒絵理子。特にシューマンではアンサンブルに見事に溶け込んでいましたね。最近NJPに呼ばれたゲスト首席の中では一番良い結果を残したのではないでしょうか。

今日のカーテンコールでは今月で定年を迎えるクラリネットの植木章さんへ、アルミンクから花束が贈られていました。花束を受け取って拍手に応える植木さんの「もう座ってもいいかなあ?」といいたげな恥ずかそうな表情が印象的でした。

(2007.1.21 記)
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