N.アーノンクール/ウィーン・フィル ブルックナー:交響曲第5番
1980年のウィーン・コンツェントゥス・ムジクス(CMW)との来日以来、昨年まで日本の地を踏むことはなかったベルリン生まれのこのマエストロ。演奏会はなかったものの京都賞の授賞式で昨年来日し、京都フィルハーモニー室内合奏団を相手に公開演奏指導を披露。今年はウィーン・フィルと手兵CMWの二つのオケと待望の来日。今日は初めて接するアーノンクールの指揮、ウィーン・フィルの演奏によるブルックナーの第5交響曲を楽しみに赤坂へ。
(えー、3ヶ月振りです・・・)
(えー、3ヶ月振りです・・・
ウィーン・フィルハーモニー ウィーク イン ジャパン 2006今日のサントリーホールは文化勲章を授与されたばかりの吉田秀和氏の姿も。2階RC扉からホール内に入って舞台上に目をやるとコントラバスが左手に、やっぱり対向配置なんだなあと思ったりしながらRAブロックの自席へ。うむ、ブルックナーには必要ない筈なんだけど、木管とティンパニの間にポジティブ・オルガンが置かれているのは何故・・・。
ニコラウス・アーノンクール指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
1. モーツァルト : アヴェ・ヴェルム・コルプス ニ長調 K.618 2. ブルックナー : 交響曲第5番 変ロ長調
ニコラウス・アーノンクール指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 (コンサートマスター:ライナー・キュッヒル) バッハ・コレギウム・ジャパン(合唱)(1)
2006年11月3日 15:00 サントリーホール 大ホール
いつものようにコンサートマスター(キュッヒル)を筆頭にウィーン・フィルのメンバが舞台に登場。木管のメンバ達は金管後ろに並び立ち、通常木管群が座る位置にBCJ等でおなじみの歌い手達が2列に並んび、ポジティブ・オルガンにも女性奏者が座っています。
指揮者のアーノンクールが登場し、盛大な拍手を受けた後に指揮台左横の椅子へ座ります。第1ヴァイオリンの後方プルトに座っていたヘルメスベルグ団長が通訳の女性と共に中央へ。ヘルスベルク団長は格調高い言葉を引用しながら佐治敬三の功績を讃え、「今日は彼の命日、BCJと共にモーツァルトのアヴェ・ヴェルム・コルプスを演奏します。」と話して自席へ戻りました。いやはや、こんなところでアーノンクールとBCJ声楽メンバの共演が聞けるとは思わなかった(^^♪。
アーノンクールは心持早めのテンポで曲を進めます。前方プルトのみ(4-4-2-2-1だったか?)のウィーン・フィルの弦、BCJのまっすぐな声で透明度の高いハーモニー、両者の相乗は誠に美しい限り。これだけでも耳のご馳走なのに、'Vere Passus'あたりから歌詞の内容に即した切実な表現を求めるアーノンクール。美しさの裏にあるものを求めるマエストロの姿勢を端的に示した演奏でした。欲を言えば、BCJにマエストロの要求にもっと柔軟に反応して欲しいなあと思ったり。アーノンクールと鈴木雅明では要求もかなり違いますし、短い曲とは言え短時間のリハーサルでそれを埋めるのは難しいのかも。
アヴェ・ヴェルム・コルプスが終わって、アーノンクールは一端袖に。BCJメンバとオルガニストと入れ替わりに木管メンバが自席へ。キュッヒルがチューニングを指示して、再びアーノンクールの登場を待ちます。
今日のウィーン・フィルは先に触れたとおり弦楽は1Vn-Vc-Va-2Vn/Cb左の対向配置、各パートの人数は16型の編成。金管は木管の左側にホルン隊を配置し最後列左からチューバ、トロンボーン、トランペットの並び。ティンパニは木管の(モーツァルトで使用したポジティブ・オルガンを挟んだ)左側。木管は楽譜どおりの2管編成、ホルンは1番と2番にアシスタントが付いて6人、トロンボーンの1番にもアシスタントが付いて4人、そしてティンパニにもアシスタントが付いておりました(両端楽章コーダのみ二人で違う固さの撥を使って一緒に叩いていました)。
1曲目のアヴェ・ヴェルム・コルプスでもその片鱗は伺えたのですが、やっぱり楽には聞かせてはくれませんねマエストロ。演奏するウィーン・フィルも然り、常に本気モードでの対応とテンションの高さを求められます。
第1楽章からやや遅めのテンポを設定で、一歩一歩しっかりと大地を踏みしめながら歩くような同一音系やリズムを強調、余韻を楽しむというよりは次へのエネルギーを充填しているような長い休止、ずっしりと腹に応える低音の充実した音の伽藍等々、安易に音楽が流さないための楔があちこちに。第2楽章はもしかしたら踊れるかもと思えるテンポ設定とリズムの処理が個人的には目から鱗。一般的には朗々と歌われる弦楽合奏もそうさせないのは納得できるアプローチ。第3楽章は各部の表情のコントラストを明確にしようとした意図は伺える演奏ですが、第2スケルツォ等にもう少しチャーミングな表情がもっと出せるような気がします。終楽章はアーノンクールとウィーン・フィルがしっかりとかみ合った演奏になりました。特に二重フーガからはポリフォニーの処理の巧みさといい、膨れ上がる音の伽藍の壮大さといい本当に見事でした。
アーノンクールは論理的に構築されたこの曲を(当然ながら)きちんと紐解いた上で、ある種エモーショナルと言えるような感情表現を盛り込んでいたように思います。アーノンクール独特のアクの強さも良い方向に作用していましたし。先月接した視界良好でしなやかな歌に満ちたアバドとルツェルン祝祭管の第4交響曲と比べると、曲のキャラクターの違いはあるもののアーノンクールの十二分に噛み応えがある演奏の有り様は全く対象的だなあと。むろん、どちらがというわけではなくてどちらもという意味で。
来日公演の初日にこの曲を演奏するのは指揮者・オーケストラ共に少し条件が厳しかったかもしれませんが、充分に聞き応えのあるブルックナーを聞かせてくれたように思います。アーノンクールとウィーン・フィルの組み合わせ、今回は今日のチケットしか取れませんでしたが、もしまた機会が巡ってくるような事があればまた聞いてみたいものです。
Comments
記事を拝読すると、やはりアーノンクールという感じですね。
たとえ相手がウィーンフィルであっても一筋縄ではいかないところ、しかも明快なビジョンをもったところがアーノンクールのアーノンクールたるゆえんでしょうか。
無理しても行きたかったなあ。
私は13日のモーツァルト&ベートーヴェンプロに行ってきます。
今から期待でワクワクしているんです。
ラトルやゲルギエフが振る時とはまた違う種類の緊張感というか真剣勝負というか、独特の雰囲気をかもし出しますねアーノンクールが指揮台に立っていると。
11日のモーツァルト・プロにも行きたかったのですが、今回は1公演ゲットするのがやっとでした。
アーノンクール&ウィーン・フィルで聴くブルックナー、やっぱりいろいろな意味で刺激的でありました。
今日聴いてきたモーツァルト&ベートーヴェンのプロもすばらしかったのですが、ブルックナーで見せた破格の集中力と深遠な響きはこの指揮者、この楽団ならでは!のものでした。またぜひこのコンビの来日を期待したいものです。
今日(もう昨日ですが)も楽しまれたとのこと羨ましい限りです。ブルックナー版「フーガの技巧」とは巧い表現ですね、アーノンクールが元気なうちにまた来日して欲しいと私も期待したいです。
ベートーヴェンの7番、さぞかし凄みの効いた演奏だったのでしょう。モーツァルトの39番はハーディング、ノリントン、アーノンクールと聞き比べられたら面白かったでしょうね(私はハーディングのみでした)。
私は7番が大好きなのでとても楽しめました!
アーノンクールの集中しきった顔とオケの皆さんの熱い演奏が聞けて、一期一会という言葉がピッタリの夜を過ごす事ができました。 コンマスと1プルのインの方のVnのみずみずしい音色は弦全体をリードしていましたね。 Obの馥郁たる音色も素敵でした!
神奈川フィルにもまた聞きに来て下さいね~、お待ちしています!
ちなみに、ノリントンはNHKホールの広さを考慮してか、12、12、10、8、6で配置はバスが木管の後、木管は倍で演奏させてました。ピアノになると弦を減らして2管での演奏で、すべてモダン楽器でした。客席に向かって踊るように指揮するのでかなり笑えました♪
ブルックナーと同じなら、キュッヒルさんの隣はシュトイデさんでしょうか。ウィンナObの音色も独特な魅力がありますよね。
神奈川フィルは3月のシュナイトさんの運命からご無沙汰してます。7月のヴェルレクは行く予定だったのですが、仕事で聞けませんでした。来年初めのシュナイトさんの何れかには接したいなと企んでます。
ハリーさん
そうそう、来年のブリュッヘンもありました。
ノリントンはシュトゥットガルト放送響で聴いたことがありますが、あのパフォーマンス(笑)は愉しいですよね。