A.ラザレフ/読売日響 芸劇マチネー チャイコフスキー・プログラム
1945年モスクワ生まれの指揮者アレクサンドル・ラザレフの棒に初めて接したのは、私の記憶が正しければ2001年6月に読響へ客演したとき。その時演奏された後半のくるみ割り抜粋はもちろんのこと、前半に演奏されたグラズノフの四季をたいそう魅力的に聞かせてくれたのが印象に残っています。その後は、定期的に読響や日本フィルに客演してくれているにも関わらず、スケジュールの都合がつかずに現在に至っているjosquinであります(笑)。というわけで、今日は約6年ぶりに聞くラザレフと読響のチャイコフスキーを楽しみに池袋へ。
読売日本交響楽団 第78回東京芸術劇場マチネーシリーズ今日の読響はいつもどおり弦楽を1Vn-2Vn-Va-Vc/Cb右と並べた配置で前後半共に16型。
1. チャイコフスキー : 交響曲第2番ハ短調 作品17 「小ロシア」 〈休憩〉 2. チャイコフスキー : 交響曲第6番ロ短調 作品74 「悲愴」
アレクサンドル・ラザレフ指揮 読売日本交響楽団 (コンサートマスター:デヴィッド・ノーラン)
2006年5月14日 14:00 東京芸術劇場 大ホール
前半は「小ロシア(ウクライナ)」の表題が付けられている交響曲第2番。ラザレフは今回の客演で、演奏頻度の少ない第1番~第3番を取り上げてくれるのは誠に嬉しい限り。私もこの第2交響曲を演奏会で聴くのははじめてな筈。ラザレフは素朴なこの曲にダイナミックなメリハリとスケール感を付与しつつ、叙情的な美しさとオーケストラのアンサンブルにも配慮した棒で読響を導きます。第1楽章は冒頭と最後のホルンとファゴットの悲しげな旋律と主部のダイナミックな展開とのコントラスト、チャーミングに仕上げた第2楽章のマーチ、第3楽章も動きがパリッとしていて音の動きが楽しい。そして、フィナーレは豪快にオーケストラを鳴らしながらも途中に挟まれる叙情的な部分の美しさを大事にした演奏。銅鑼が鳴ってからのコーダの追い込みもスリリングで、最後は音を切ると同時に「どうだ!」といわんばかりに客席を向いてフィニッシュ(笑)。読響もラザレフの棒に充分に応えた、美しいアンサンブルとダイナミックでスケールの大きな音楽を奏でていました。いやはや、聴後感のすこぶる良い胸のすくような快演でありました。
後半は打って変わった雰囲気を持つ悲愴交響曲。前半の第2番同様にラザレフはダイナミックでスケールの大きな音楽を作っていき、メロディーも思い切り歌わせているのですが決して抒情纏綿な感じは殆どありません。むしろ強靭な意志を持った歌を感じます。その強靭な意思を最も感じたのが終楽章おわり近くの銅鑼が鳴ったあと。ついに息絶えてしまうというよりも、生への意思が低弦の最弱音へ向かうほど強くなっていく。楽譜上の音が無くなっても左手を震わせ、右手でリズムを刻み続ける指揮台上のマエストロ。そのラザレフの姿が生への意思を音だけでなく、聞き手の視覚にも訴えた形になっていました。
ラザレフは指揮棒を持たずに振るマエストロですが、その動きはダイナミックな音楽作りに相応しいエネルギッシュなもの。今は棒を持って振るマリス・ヤンソンスを思わせる動きも・・・。しかしながら、素手で飛ばす指示は大雑把なところは微塵もなく細かな配慮に富んでいます。それが豪快なスケール感と共に美しくクリアな音色と良好なアンサンブルが両立している理由なんだなあと感じた次第。今後も定期的に接していきたい指揮者の一人だなと改めて認識したマチネとなりました。
第1番と第3番が取り上げられる5月25日の定期演奏会にも足を運びたいなあと思っているjosquinですが、木曜日だし難しいなあ・・・。
Comments
TBいただきありがとうございました。
josquinさまも来られていたのですね。記事を拝見して、まさにそのとおりと頷きながら読ませていただきました。
この指揮者、少しオーバーアクション的に見えて、ポイントは実にしっかり押さえていますね。さすがに劇場育ちのマエストロだなあと感心した次第です。
>第1番と第3番が取り上げられる5月25日の定期演奏会にも足を運びたいなあと・・・
これ、聴きに行く予定です。4月のマチネーが聴けなかったのでこのコンサートに振り替えました。
でも急な仕事が入ったらどうしよう?
少し恐れております・・・。(笑)
私の記事もTBさせていただきますね。
> でも急な仕事が入ったらどうしよう?
無事、romaniさんが聴きにいけることを願っております(^^♪。
25日の定期演奏会、何とかやりくりして聴きに行ってきました。josquinさまはいかがでした?
ラザレフはやはりバリバリのエンターテイナーでした。(笑)
音楽的にはとくに「冬の日の幻想」が素晴らしかったです。
私はいけませんでした・・・、というよりはNJP定期を予定していた日だということをコロッと忘れて上記の記事とコメントを書いておりました<m(__)m>。
感想を拝見いたしましたが、ラザレフのエンターティナーぶりが目に浮かぶようです。また接したいマエストロのひとりですね。
以上、ベートーヴェンで頭が一杯になっているjosquinでした・・・(笑)。