R.バルシャイ/読売日響 名曲シリーズ ショスタコーヴィチ:室内交響曲&交響曲第5番
ショスタコーヴィチ・イヤーにこのマエストロの指揮で自ら編曲した室内交響曲と第5交響曲を聞けるのは嬉しい限り(第5番以外の交響曲だったらなあ・・・、という気もしないでもないけど(笑))。今日はルドルフ・バルシャイが振る読響のショスタコーヴィチを楽しみに溜池山王へ。
読売日本交響楽団 第477回 名曲シリーズバルシャイの指揮に初めて接したのは1998年11月に東京フィルを振ったショスタコーヴィチの第4交響曲。その後は2003年2月に都響で自ら編んだマーラーの第10交響曲全曲の日本初演、一昨年の12月にデュトワの代役として登場したN響定期、そして今回の読響で4度目。マーラーの第10交響曲はまるでショスタコーヴィチのような彩りの響きが印象に残っています。
1. ショスタコーヴィチ(バルシャイ編) : 室内交響曲 作品83a 〈休憩〉 2. ショスタコーヴィチ : 交響曲第5番ニ短調 作品47
ルドルフ・バルシャイ指揮 読売日本交響楽団 (コンサートマスター:藤原浜雄)
2006年4月21日 19:00 サントリーホール 大ホール
前半はバルシャイ自身がショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲第4番を室内オーケストラ用に編曲した室内交響曲。プログラムの解説によると、バルシャイはこの曲の他にも第1番、第3番、第8番そして第10番にも編曲版を作成しているようです。読響の弦の編成は12-10-6-6-4で、1Vn-2Vn-Va-Vc/Cb右といつもどおりの並び。バルシャイの編曲は管楽器による響きの彩りと第2楽章をはじめとするソロの加え方といい、打楽器の使い方といい作曲家の語法をよく知っているなあと思わずにはいられないほど見事。その編曲と丸い動きのタクトから導き出されるサウンドは、魅惑的ともいえる豊穣さと明晰さを兼ね備えた美しさ。読響も繊細な美しさを失わない弦をベースにして十二分に応え、第2楽章での木管のソロも見事な演奏を披露。
バルシャイと読響のつくりだす角の取れた美しいサウンドにずーっと聞き惚れているのも一興なのですが、ショスタコーヴィチの音楽って「こんなに聴きやすいものだったけ?」と思ってしまったのも事実。ある意味汚くて不快で鋭利な響きやリズムの切れ味(特に後半2楽章)が穏やかに丸められてしまっているような気がします。一度、他の指揮者による演奏で聞いてみたいなあと思いました。
後半はショスタコーヴィチの交響曲中もっとも有名な第5番、当然ながら読響は弦の人数を15-14-12-10-8と増強しての演奏。基本的なアプローチはベストセラーとなったWDRとの全集とほぼ同じ印象。
第1楽章の冒頭で低弦がつんのめってしまったのは、バルシャイの棒にうまくタイミングを合わせられなかった様子。流麗なメロディーが主体の部分はやや速めのテンポで歌わせ、低弦を中心にしてリズムを主体とするところはやや遅めのテンポでがっちりと。オーケストラは良く鳴っていますし、歯切れ良く鳴らした低弦群や強烈な打楽器のアクセントも効果的に響く。第2楽章は各パートのソロにユーモアをたっぷりと効かせていましたが、最後のオーボエ・ソロのみフォーマルに吹かせていたのが興味深い。第3楽章は弦の音色の美しさが光る見事さ。終楽章は遅めに始めてアクセルをじわじわ踏んでいくスコアに沿ったやり方。アッチェランドの到達点は煽るというよりは安定性が勝っていて、もう少し早めのテンポで荒れ狂う感じが表に出ても良かったかも。最後に3/4拍子から4/4拍子へ移行するところ、管と弦が別テンポで入っていってしまったのはちょっと惜しかったなあ。
前半の室内交響曲のように徹頭徹尾バルシャイ色に染まった演奏ではなく、ショスタコーヴィチらしいメリハリや毒の効いた演奏ではなかったかと思います。読響も場面転換時のアンサンブルの乱れや金管に傷が聞かれたものの、バルシャイの意図に良く応えた演奏を披露。ただ、バルシャイの棒だけではアンサンブルが難しくなるような部分は、オーケストラ側の自発的なサポートが必要ではないかとも思います。そんな風に思うのも、2003年2月にバルシャイが都響に客演した際に演奏されたマーラーの交響曲第10番(全曲/バルシャイ版)を聞いているから。時に弓を指揮棒代わりに拍を刻むコンサートマスターの矢部達哉を筆頭に、オケメンバが様々な形でマエストロをサポートして素晴らしい成果を挙げていました。そのようなサポートが地力の確かな読響にも出来ない筈はないと思ってしまった訳です。
来週はそのマーラーの交響曲第10番が再び演奏されます。私は都合がつかずに聞くことが叶いませんが、素晴らしい成果を挙げることを期待します。
Comments
TBありがとうございました。m(_'_)m
室内交響曲の方は、僕にはよく分かりませんでした。
そもそもショスタコーヴィチの弦楽四重奏は、CDは持っているものの、さっぱり歯が立ちません。なんか、いい方法はありませんかねぇ……。(^_^;)
マーラー10番も聞きに行く予定です。果たして、僕の理解でついて行けるかどうか…。いまから、バルシャイ版のCDを聞いて、“予習”しておきたいと思います。(自嘲)
> 弦楽四重奏は、さっぱり歯が立ちません。
うーん、一度生で接してみるのも手かもしれません。
秋にはモルゴーアSQが全曲やるようですし・・・。
> マーラー10番も聞きに行く予定です。
こちらはタコさんの弦楽四重奏曲に比べればずっと入りやすいはずです。バルシャイ版特有のタコさん的な響きもきっと楽しめる筈です。是非、楽しんでらしてください。
千葉さとしと申します。日頃拝見しているブログからのTBに、若干舞い上がってしまいました(笑)。
演奏したオーケストラの違いなのか指揮者の加齢によるものか、はたまた別の理由があるのかにわかにはわかりませんでしたが千葉は録音とも都響の演奏とも違う、密度の薄さを若干感じました。えすどぅあ様のご指摘も説得的ですね。
大好きなマーラーの第十番では万全の演奏であると良いな、と期待しております!
TB&コメントありがとうございます。
> 日頃拝見しているブログからのTBに、若干舞い上がってしまいました(笑)。
私も千葉さんのblog拝見させていただいていましたが、今回思い切ってTBさせていただきました。
> 録音とも都響の演奏とも違う、密度の薄さを若干感じました。
都響と演奏を聴いていなかったら、単に指揮者の問題と書いていたかもしれません。木曜日も藤原さんがコンサートマスターですので、より緊密な関係を築いた演奏であって欲しいものです。
バルシャイ版マーラー交響曲第10番を聴いてきました。感想はTBしましたが、オケにまとまりがなく、音程も不安定、ということでちょっと悲惨な演奏になってしまったようです。
私はやっぱりいけませんでした。GAKUさんはじめ何人かの感想を読んでみましたが、ちょっと残念な結果になってしまったようですね。バルシャイはかなり厳しいリハーサルをするようですが、裏目に出てしまったのではないでしょうか・・・。