鈴木雅明指揮 BCJ 彩の国大バッハシリーズ マタイ受難曲
彩の国大バッハシリーズのBCJマタイ。1999年はチケット入手が遅れて聞けず、2001年はスケジュールの都合で埼玉会館で、今年は3度目の正直で念願のさいたま芸術劇場の音楽ホールで聞くことができました(このホール自体は何回も来てるんですよ、念のため)。
彩の国大バッハシリーズ マタイ受難曲
J.S.バッハ:マタイ受難曲BVW244
エヴァンゲリスト:ヤン・コボウ
ソプラノI:野々下由香里
ソプラノII/ピラトの妻:藤崎実苗
アルトI:波多野睦美
アルトII:上杉清仁
テノールI:鈴木准
テノールII/証人II:水越啓
バスI/イエス:ペーター・コーイ
バスII/ユダ/大祭司カイアファ/ペテロ/祭司長I/ピラト:浦野智行
鈴木雅明指揮 バッハ・コレギウム・ジャパン
2004年4月10日 16:00 彩の国さいたま芸術劇場 音楽ホール
今回のBCJマタイ、弦はソロのある第1ヴァイオリンを除いて各パート一人ずつ。コーラスは女声パートは3人、男性パートは2人。この編成、今日の会場にぴったり。オケとコーラスのバランス、演奏者の意図がよく伝わる、響きがやせて聞こえることがないのとフォルテでも全く飽和しないし・・・。これだけでも今日聞きにきた甲斐があるというもの。
第1グループのゲストリーダー、ルーシー・ファン・ダールの指示による丁寧なチューニングの後、合唱、エヴァンゲリストそして指揮者が登場しいよいよ第1曲の開始。良く調和した柔らかい響き、かといって言葉やアーティキュレーションは非常に明晰に処理される鈴木雅明の特徴は失われていないのは見事。この柔らかさと落ち着いた感じはリーダーの持ち味と見ました。
今回のエヴァンゲリストはいつものテュルクではなくヤン・コボウ。語るだけではなくドラマを積極的に演じるエヴァンゲリスト。イエスが捕らえられるところや尋問から判決がくだるあたりはその本領発揮。テュルクとは違った味わいを聞かせてくれました。
イエスはBCJではおなじみのペーター・コーイ。一時期調子を崩していたように感じられましたが、すっかり復調した様子。個人的にはもう少しヴィブラートの少ない声が好みですが、この安定感は得がたいもの。
他のソリスト陣では癖の無い美声の鈴木美登里、歌うというよりは語るといって過言ではない波多野睦美、鈴木雅明の要求に見事に応えた藤崎美苗(第8曲のアリア)そして楷書体の浦野智行が印象的でした。
コーラスについてはもう素晴らしいというしかありません。特に女声のクォリティの高さは天下一品。オケは弦の響きとピッチの安定感がいつもより増していたのが印象的。でも、オーボエ系が安定しないのは楽器の特性と出番が少ないのでいたしかたないところ・・・でももっと上を求めたい。
鈴木雅明の指揮はいつもながらの言葉とアーティキュレーションを常に明晰に処理をし、常に生き生きとした表現を求めたもの。今回の編成だと会場の良さもあいまってそのことが本当に良く分かります。今回はやさしさというか落ち着きみたいなものが付加されていたのと、表現のダイナミズムが一層拡大されていたのが印象的でした。
終曲の和音が解決された後、しばしの静寂(やはり、こうでないと!)。その後の拍手は熱のこもった盛大なものでした、その拍手に値する充実した演奏だったと思います。
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