M.ボーダー/新日本フィル/晋友会合唱団 トリフォニー定期 ブラームス:ドイツ・レクィエム
5月に新国立劇場でフィデリオを振り、安定した手腕を聞かせてくれたミヒャエル・ボーダー。新日本フィルへの初登場は全曲ドイツ音楽を並べたプログラム。今日はブラームスのドイツ・レクイエムを楽しみに錦糸町へ。
新日本フィルハーモニー交響楽団 トリフォニー・シリーズ 第391回定期演奏会オーケストラはコントラバスを左に置いた1Vn-Vc-Va-2Vnの対向配置、編成は14-12-10-8-7。合唱はSATBと並び、ソリストはソプラノは合唱の最前列中央、バリトンはオーケストラの最後列やや左側(中央から左へティンパニ→トランペット→バリトン→ハープの並び)。
・ ブラームス : ドイツ・レクィエム 作品45
ソプラノ : カテリーナ・ミューラー バリトン : 石野繁生
ミヒャエル・ボーダー指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団 (コンサートマスター:西江辰郎) 晋友会合唱団 (合唱指揮:清水敬一)
2005年10月21日 19:15 すみだトリフォニーホール 大ホール
ボーダーの指揮を聞くのは今日で2度目ですが、物凄く音楽の枠組みをがっちりと作る指揮者ですね。しかしながら外枠をがっちりと作って内側をうまく泳がせる方向ではなく、この人は内側もがっちり(かっちりと言うほうが合っているかなあ)と固める方向の音楽作り。そのせいかメロディーが欲するテンポの自然な伸縮や抑揚まで規制してしまっているよう。josquin的にはちょっと苦手なタイプかも(笑)。自然な感興に基づく表情が抑制されて聞こえる。第1楽章は三者(指揮者、オーケストラそして合唱)がお互いを見合って、なんだかぎこちないまま終わった感じ。第2楽章のフーガとか第6楽章の盛り上がりも迫力はあるもののなんだかそっけない。合唱が歌で欲する呼吸と指揮者(とオーケストラが奏でる)音楽の呼吸がいまひとつしっくりとこないんですね。楽章を追うごとに徐々に噛み合ってはきたものの、そこここにデジタルな雰囲気が漂うブラームスでした。もう少し優しさや人肌の暖かみのある演奏がjosquinは好みだなあ。
新日本フィルは細心の注意を払って美しい音色を奏でていましたが、いつもの明るい艶は押さえ気味。木管も発音のタイミングとハーモニーがいまひとつ合わなかったのが残念なところ。晋友会の合唱は、もっと声の純度が欲しい。難易度が高いのは承知の上ですが、ソプラノが終止ピッチが下がり気味だったのがとても残念。またテノールも声が浅く、響きとパート内のアンサンブルがバラけ気味なのが気になりました。全体的にもうひとつ上のクォリティを望みたいところ。
今日一番良かったなあと思ったのはソリスト2人の歌唱。両者ともヴィヴラートのかかり具合がやや気になるものの、素晴らしい歌声を披露。バリトンの石野繁生は堂々とした張りのある声が素晴らしく、声量も充分過ぎる程。こんなに強く美しい声と強い表現で歌える人がいたんだなあと感心見事な歌唱を披露してくれました。ソプラノのカテリーナ・ミュラーは最初固さが見られたものの、徐々に伸びやかな声を発揮。清楚かつ色合いの移ろいが感じられる素晴らしい歌声を披露してくれました。
来週のサントリー定期でボーダーと新日本フィルは、ワーグナーの交響曲第3番をメインにしたプログラムを披露する予定。さて、どのようなブルックナーを聞かせてくれるのでしょうか・・・。
新日本フィルハーモニー交響楽団:ミヒャエル・ボーダー氏にインタヴュー、ブルックナー第3交響曲を語る
Comments