ジャン・ワン バッハ:無伴奏チェロ組曲全曲 第2夜
今朝、王子ホールのウェブサイトに「当日券あり」との表示。ヨーヨー・マは都合がつかなかったし、飛び入りで聴きにいこうかなと。最近ドイツ・グラモフォンからディスクが出たばかりの、ジャン・ワンのバッハを聴きに東銀座へ。
王子ホール ジャン・ワン J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲全曲演奏会 第2夜ジャン・ワンの演奏は大分前に中国のオーケストラの来日公演で聞いたことがあるような気がします(みなとみらいだったような・・・)。使用楽器はプログラムには1622年製アマティと記述されていましたが、会場の掲示によると今日は1736年製マッテオ・ゴフリラーでの演奏だそう。
1. J.S.バッハ : 無伴奏チェロ組曲第2番ニ短調 BWV1008 2. : 無伴奏チェロ組曲第6番ニ長調 BWV1012 休憩 3. : 無伴奏チェロ組曲第3番ハ長調 BWV1009 アンコール 4. 阿炳 : ニ泉映月 5. J.S.バッハ : 無伴奏チェロ組曲第1番ト長調 BWV1007 から プレリュード
チェロ : ジャン・ワン
2005年5月27日 19:00 王子ホール
プログラムの最初は第2番。一人で弾くバッハって人柄が素直に出るなあと。ジャン・ワンの場合はまじめで誠実な人柄を感じさせます。曲に誠実に向き合い、ひたすらひとつひとつの音を丹念に紡いでいく音楽作り。和音ではヴィヴラートを廃して自然な減衰にまかせ、その他の部分では大げさにならない程度にヴィヴラートを使うセンスの良さ。それでも、曲のドラマ性はスポイルされることがなく、クーラントの葛藤やサラバンドの諦念との対比がよく出ていました。
2曲目は第6番。やっぱりこの曲は手強い。ジャン・ワンの強さと弱さが明確に出ていたように感じられました。細かな傷をいとわなず、前へ前へと進む推進力で弾ききったプレリュードは明らかに強さの証。その後はちらほらと弱さみたいなものが曲によっては出てしまったような気がします。実演で避けられないミスが表現の弱さに結びつくか否かの違い。でも、それが人間臭くていいじゃないと思えてくるから不思議なもの。人間いつも強くないよ、なーんてわかったような事を呟きたくなる演奏でした。
休憩の後は第3番。ジャン・ワンの誠実で素直な音楽性が一番良い形で出ていました。今日の3曲の中では、一番伸びやかな音と自然なフレージング。あれこれと固い事いわずに聞き手がすっと音楽に身をゆだねられるナチュラルさ、これが彼の一番の魅力なんだろうなあ。全曲演奏の最後に第6番ではなくてこの曲を持ってきた彼の意図がなんとなくわかるような気がしました。
アンコールはさりげない風情で中国の色を楽しませてくれた阿炳のニ泉映月、そして昨日の第1夜で最初に演奏された第1番のプレリュードが演奏されてお開きとなりました。
ジャン・ワンは1968年生まれですから、まだ30台半ば。その素直で誠実な音楽性を損なわずにじっくりと年を重ねて言って欲しいなと思います。今日の演奏会はNHKによる映像収録が実施されていました。会場の掲示によると、7月3日に芸術劇場での放送が予定されているようです。
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