渡辺/野田/デプリースト/都響 作曲家の肖像 バーバー
東京都交響楽団 東京芸術劇場シリーズ 作曲家の肖像 Vol.56 バーバー今日のプログラムで耳にしたことがあるのはアダージョとヴァイオリン協奏曲の2曲。他の3曲は私の記憶が確かなら、今日はじめて耳にする曲になります。
1. バーバー : オーケストラのためのエッセイ第2番 op.17 2. : 弦楽のためのアダージョ 作品11 3. : ヴァイオリン協奏曲 作品14 休憩 4. : ノックスヴィル、1915年の夏 作品24 5. : 交響曲第1番ホ短調 作品9 アンコール 6. : 歌劇「バネッサ」から 間奏曲
ヴァイオリン : 渡辺玲子(3) ソプラノ : 野田ヒロ子(4)
ジェイムズ・デプリースト指揮 東京都交響楽団 (コンサートマスター:山本友重)
2005年5月25日 19:00 東京芸術劇場 大ホール
プログラム最初のオーケストラのためのエッセイ第2番から、艶っぽく深みの感じれらる都響の弦と管楽器がよく溶け合ったサウンドが美しい。そのサウンドを基にした音楽も余計なはったりがなく、流れの良いテンポと共に曲を素直に受け止められる演奏。原曲の弦楽四重奏版や"Agnus Dei"の歌詞を付した合唱版もある有名なアダージョも、必要以上に耽美的にならずに、弦の美しいサウンドと音楽の自然な流れを重視した好演。クライマックスも高弦の美しい響きを最大限生かし、叫びとしてではなく内からの声とした表現が印象的でした。
前半の最後は渡辺玲子をソリストに迎えたヴァイオリン協奏曲、アダージョの次に知られた曲かもしれません。音量は大きな方ではないけど、しっかりと音が通って聞こえてくるのは彼女の良いところ。デプリーストと都響の奏でるサウンドと調和した一体感と、的確なフレージングが素晴らしかった第1楽章と第2楽章。そして、第3楽章の無窮動のような動きの抜群の切れ味はBravaの一言に尽きます。第1楽章でのオーボエの古風な味わいも良かったですね。
後半は、「ノックスヴィルの夏、1915年」。アメリカのジェームズ・エイジーの自伝的エッセイの中の少年時代を書いた田園詩に曲を付したもの。テネシー州のノックスヴィルはエイジーの生まれ故郷とのこと。鳥の鳴き声や馬車を模した音など、のどかな田園風景が目に浮かんでくるような描写的な音楽を奏でるオーケストラのもとでエーネスの詩が歌われます。野田ヒロ子はエイジーの詩を叙情的に美しく歌っていてとても好ましく感じました。都響も終始美しい響きで、のどかな風情を醸し出した素晴らしさ。こういう曲をバーバラ・ボニーあたりが歌うのを聞いてみたいなあとも思ったり・・・(今日の演奏も良かったですよ、もちろん)。
プログラムの最後は交響曲第1番。バーバーがローマ留学中に書かれた曲だそう。単一楽章形式ですが、内部的には通常の4楽章形式同様に4つの部分に分けられる構成をとっています。交響曲らしい起伏のある音楽が展開されますが、やはり木管を中心としたソロで醸し出される懐かしい雰囲気が魅力的に感じました。デプリーストと都響も曲を良く溶け合った響きで曲をデフォルメすることのない好演だったように思います。
アンコールはバネッサの間奏曲が美しく演奏されました。
デプリーストと都響の奏でる軽さと艶と深みを兼ね備えた魅力的なサウンドが、どこか懐かしい趣のあるバーバーの音楽と良く合うんだなあと思わずにはいられませんでした。
最後に今日のオーケストラはヴィオラ外側の通常配置。ヴァイオリン協奏曲と「ノックスヴィル、夏」は12型、それ以外の曲は14型での演奏でした。
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