漆原朝子/広上/東響 川崎名曲 モーツァルト/ベートーヴェン
ミューザ川崎シンフォニーホール&東京交響楽団 名曲全集 第7回前半、オケは一般的なヴィオラ外側の配置で、弦は10-8-6-4-3と小ぶりの編成。1曲目は昨年日生劇場で広上が読響と演奏したモーツァルトの「後宮からの逃走」から序曲。冒頭から清涼感あふれる美しいサウンドで颯爽とした演奏が展開されます。叙情的な部分での決して歌いすぎない柔らかな風情も好印象。広上の指示する立体的なフレージングを東響が良く消化し、素性の良いホールの響きと相まって耳に心地よく届きます。コンサートの幕開けにふさわしい好演でした。
1. モーツァルト : 歌劇「後宮への逃走」K.319 序曲 2. : ヴァイオリン協奏曲第5番イ長調 K.219「トルコ風」 休憩 3. ベートーヴェン : 交響曲第6番ヘ長調作品68「田園」 アンコール 4. J.S.バッハ : 管弦楽組曲第3番ニ長調 BWV1068 から エア
ヴァイオリン : 漆原朝子(2)
広上淳一指揮 東京交響楽団 (コンサートマスター:グレブ・ニキティン)
2005年5月7日 18:00 ミューザ川崎 シンフォニーホール
2曲目は1曲目から続いて異国情緒系ということで、漆原朝子をソリストに迎えてモーツァルトの「トルコ風」。私の記憶が確かなら(古いせりふだなあ・・・(爆))、漆原朝子を生で聞くのは始めてかもしれません(ついでに書くと、姉の漆原啓子もまだ生では聞いたことが無いかも)。広上と東響の奏でる清潔でありながら艶やかな音色と生彩に富む生き生きとした音楽から、漆原朝子の端正なヴァイオリンがくっきりと浮かび上がってきます。ある意味饒舌な広上とこちらもある意味ストイックな漆原の無理の無い協調(決して競演ではなく)が印象的でした。もしかすると第1&2楽章では、漆原はもう少しゆったりと歌いたかったかもしれないと感じさせるところは無きにしもあらずでしたが・・・。
後半は弦の編成を14-12-10-10-8と増やして演奏されたベートーヴェンの田園交響曲。こういう描写的な趣の強い音楽を広上が振ると実に面白い。彼の指揮を見ているとニヤニヤとしてしまう瞬間があちこちに(笑)。でも、表に出てくる音楽は実に自然で生命力豊かなものになっている。第1楽章は本当に「愉快な気分」が前面に出ているし、第2楽章はちょっと流れの速い「小川のほとり」、第3楽章の力強い「農民の踊り」から意外と荒れ狂わない(といっても充分な迫力のある)「嵐」を経てホッとさせてくれるよりは喜びが前面にでた終楽章。東響も終始美しいサウンドで広上の棒に良く応えていました。ちょっと欲を言わせてもらうならば、もう少し粋なところが欲しいなと。東響の皆さんは生真面目すぎるような気がします、広上の棒への慣れ具合が影響しているのかもしれないけど。でも、先日聞いたスクロヴァチェフスキと読響の演奏よりは、やっぱり今日の演奏の方が好みだなあ私的には・・・。
拍手に応えてのアンコールは、バッハの管弦楽組曲第3番からエア。昨年12月に聞いた小澤流の思いをたっぷりと込めた演奏とは好対照。早目のテンポで低音のリズムを生かしつつ、悲しみの表情を湛えた好演でした。
ミューザ川崎も今回で4度目ですが、良いホールだなあと思いを新たにしました。今日も高弦が響きの層を成す様子がくっきりと聞こえてくるし、暖かく演奏すれば暖かく、ゴリゴリ演奏すればゴリゴリと。演奏の意図がスポイルされずに適度な潤い(響き)を伴ってはっきりと伝わってくるような気がします。東響にはここをフランチャイズにしているメリットを最大限利用して、魅力的なサウンドと良好なアンサンブルを更に磨いて欲しいなと思います。
Comments
ミューザ川崎は私も都区内各ホールに出向くよりは遠いのですが(横浜はもっと遠い(笑)、気になるものには足を運んでます。なかなか良いホールだと思いますので、是非一度行って見てくださいませ。