シャトレ座プロジェクトII 武満徹~マイ・ウェイ・オブ・ライフ ナガノ/ベルリン・ドイツ響
昨年5月の第1弾ではジェシー・ノーマンのモノオペラを上演してくれたシャトレ座プロジェクト。今日はその第2弾となる、武満徹の音楽を用いてケント・ナガノとペーター・ムスバッハが作り上げたオリジナルの舞台作品を聴きに(観に)上野へ。
パリ・シャトレ座プロジェクトII 武満徹~マイ・ウェイ・オブ・ライフケント・ナガノはリヨン歌劇場時代に、当時支配人だったブロスマン(現シャトレ座芸術総監督)と共に武満徹へオペラ作品の委嘱をしていたとのこと。確か、武満の著作(題名は忘れました)でも「いまオペラの構想を練っている」旨の記述があったように記憶しています。結局、そのオペラは武満の死しによって実現不可能となってしまったのは衆知のとおり。しかし、彼らの武満の音楽を使った舞台作品への意欲がペーター・ムスバッハを迎えて構成されたこの作品に結びついたようです。
1. 聞かせてよ、愛の言葉を 2. 武満徹 : 水の曲 3. : 弦楽のためのレクイエム 4. : ノヴェンバー・ステップス 5. : 映画「他人の顔」より「ワルツ」 6. : 系図~ファミリー・トゥリー 7. : 小さな空 8. : ムナーリ・バイ・ムナーリ 9. : スタンザI 10. : マイ・ウェイ・オブ・ライフ 11. 思い出のサンフランシスコ
バリトン : ドゥエイン・クロフト(10) 朗唱者 : ジョルジェット・ディー(7) 女優 : クリスティーネ・エースタライン(6) 女優 : メラニー・フーシェ(6) ソプラノ : カレン・レッティングハウス(9) 尺八 : 三橋貴風(4) 琵琶 : 田中之雄(4) 打楽器 : 山口泰範(8) ギター : 鈴木大介(9)
ケント・ナガノ指揮 ベルリン・ドイツ交響楽団 東京オペラシンガーズ(10)
演出 : ペーター・ムスバッハ
2005年4月13日 19:00 東京文化会館 大ホール
昨年松本で上演された白いヴォツェックが印象的だったムスバッハが武満の音楽を用いて描くのは「ある女の一生」。ひとりの女性の「若年」「壮年」「老年」そして「死」にそれぞれ役者(や歌手)を当てて描いていく。和と洋の対比でもあるノヴェンバー・ステップスでの「死」を迎える老女の(鏡に映った自分)自己との対比。ファミリー・トゥリーでの若年(幼年と言っても良いかも)の表現とマイ・ウェイ・オブ・ライフにおける「死」との対比が特に印象に残りました。
音楽面では、テープ音楽である「水の」、曲弦楽のためのレクイエムやノヴェンバー・ステップスのような厳しさ、ファミリー・トゥリーやマイ・ウェイ・オブ・ライフでのある種の甘美さ、そして小さな空のようなポピュラーソングから様々な打楽器を用いたムナーリ・バイ・ムナーリのような作品まで。武満が書いた多様な音楽を一度に耳に出来る機会はそうないし、聞いていて本当にその多彩さと幅広さには感心しきりでした。高校の時に現国の先生が何故か「水の曲」を授業で聞かせてくれたのを思い出しました(笑)。
ケント・ナガノ率いるベルリン・ドイツ響は精緻でクリアな音楽作りで武満の音楽を明瞭に描いていたと思います。特に、ファミリー・トゥリーやマイ・ウェイ・オブ・ライフの甘美な美しさは出色だったように聴きました。ムナーリ・バイ・ムナーリを演奏した山口泰範も多彩な音色を効果的に利用していて見事でした。そして、マイ・ウェイ・オブ・ライフのソロを歌ったドゥエイン・クロフトも見事な歌唱を聞かせてくれました。
舞台作品としては一度見ただけではではなかなか難しい面もあるかなあとも思いましたが、ナガノとムスバッハの意欲的な取り組みを評価すべきかと思います。
NHKによる映像収録が実施されていましたので、放送されるときにまた再度じっくりと見てみたいと思います。
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