コヴァチク/アルミンク/新日本フィル サントリー定期 ノイヴィルト/ハース/ベルク/ベートーヴェン
新日本フィルハーモニー交響楽団 サントリーホール・シリーズ 第384回定期演奏会アークヒルズの桜もいい感じ・・・って眺めてると1曲目に間に合わないのでホールへ急ぐ。
1. ノイヴィルト : 傾斜/結節 (1999 日本初演) 2. ハース : ヴァイオリン協奏曲 (1998 日本初演) * 3. ベルク : パッサカリア (1913 Ch.v.ボーリーズ編 1999 日本初演) 4. ベートーヴェン : 交響曲第5番ハ短調作品67
ヴァイオリン : エルンスト・コヴァチク(2)
クリスティアン・アルミンク指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団(1,3&4) (コンサートマスター:崔文洙)
2005年4月7日 19:15 サントリーホール 大ホール
今日の新日本フィルは先日同様にチェロを外側にした配置。弦の編成は、ノイヴィルト:16型、ハース:10-8-8-8-6、ベルク:14型、ベートーヴェン:12-10-8-6-5。
日本初演1曲目はノイヴィルトの作品。ノイヴィルトはほぼ指揮者のアルミンクと同世代の1968年グラーツ生まれの女流作曲家。弦楽、チェレスタそして様々な打楽器群(ホイッスル、サイレン、スティールギターを含む)を用いていて、ユニークな音響を楽しむ部類の作品といえるかも。冒頭部はクラスター風で、指揮者が拍を刻まずに「1」「2」「3」とセクションを示す形。その後はリズミカルだったり、サイレンが鳴ったり、弦楽器の特殊奏法を用いたりと、多様なサウンドが面白いなあと思いました。
日本初演2曲目はハースのヴァイオリン協奏曲で、ソリストはエルンスト・コヴァチク。ハースは1953年にノイヴィルトと同じグラーツで生まれた作曲家。全体を貫くピーンと張り詰めた緊張感が印象的な作品でした。研ぎ澄まされたサウンドと途切れることの無い緊張感を音色を聞かせたコヴァチクのヴァイオリンの素晴らしいこと。最後の部分は特に見事な緊張感を湛えて見事な演奏でした。
休憩を挟んで、日本初演3曲目はベルクのパッサカリア。1913年に作曲されたとされる断片をボーリーズという人が演奏可能な形にしたもの。曲はテーマに続いての変奏が第11変奏(未完成)までとなっています。バス・トランペットが使用されているのが目を惹きます。決して無機質にならない清潔な艶っぽさと、ほのかなロマン性を湛えたアルミンクらしい好演だったかと思います。未完成なので仕方ないのですが、第11変奏が途中で終わってしまうのはなんとなくさびしい・・・。
最後は超有名曲のベートーヴェンの第5交響曲。こういう意欲的なプログラミングをするアルミンクと新日本フィルは、やはりチャレンジングな姿勢をもったコンビですね。楽譜はベーレンライター版を基調としたものと聴きました。ところどころダイナミクスにこだわりを聞かせつつ、丁寧にパート間のバランスをとって調和させ暖かいサウンドを基調にし、瑞々しさと親近感を感じさせてくれる好演だったと思います。第1楽章コーダで有名なモティーフでも決して見得を切らずに真っ直ぐに進めたり、第3楽章のヘミオラのリズムもことさら強調することがないのはアルミンクらしいところ。第2楽章の弦楽の暖かい音色は出色の美しさ。第4楽章も突出して聞こえがちなピッコロを、絶妙なバランスで調和させていたのには感心しましたしそれが却って新鮮な印象を与えていました。第3楽章の弦のピッツィカートの部分のチェロへの表情付けがチャーミング。終楽章へのブリッジ部分のピアニッシモもよくコントロールされていました。この曲で力に頼らずとも表現できる世界があるのだということをアルミンクが実際に音で示してくれた演奏だったと思います。
アルミンクの次の定期への登場は6月。藤村実穂子を迎えたマーラーの「大地の歌」が非常に楽しみ・・・。
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