レーピン/ギルバート/ストックホルム・フィル ワールド・オーケストラ・シリーズ シベリウス/チャイコフスキー
ワールド・オーケストラ・シリーズ 2004-2005 シリーズA ロイヤル・ストックホルム・フィルハーモニー管弦楽団最初のマーティソンの曲は美しさのなかに題名の示すとおり悲しさが痛切に感じられる弦楽合奏曲で、初耳ですがすこぶる魅力的に聞きました。ストックホルム・フィルの澄んだ透明感のある響きと音の厚みを両立した魅力的な弦を、ギルバートが最大限に生かして演奏していたのが印象的でした。
1. マーティソン : 弦楽オーケストラのための「A.S.・イン・メモリアム」 2. シベリウス : ヴァイオリン協奏曲ニ短調作品47 アンコール 3. パガニーニ : ヴェニスの謝肉祭 4. イザイ : 無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番「バラード」作品27-3 休憩 5. チャイコフスキー : 交響曲第5番ホ短調作品64 アンコール 6. ベルワルド : 歌劇「ソリアのエストレルラ」序曲
ヴァイオリン : ワディム・レーピン(2,3&4)
アラン・ギルバート指揮 ロイヤル・ストックホルム・フィルハーモニー管弦楽団(1,2,3,5&6)
2004年9月24日 19:00 サントリーホール 大ホール
続いてはレーピンをソリストに迎えたシベリウスの協奏曲。レーピンを耳にするのは2度目です。第1楽章からしっかりとしたテンポでどっしりと構えて、弾き飛ばすことなく楽譜に書かれた音符を丹念に音にする姿勢に好感をもちました。美しく硬質感のある高音域と太くかつ響きの良くのったときに野趣の感じられる低音域が特徴でしょうか。第2楽章冒頭の野趣と静けさの対比、第3楽章のすべての音をきちんと鳴らしきる技術力、ギルバートとオケの積極的なサポートもあいまってメリハリの良くついた情熱を表に表出したシベリウスでした。レーピンを聞くのは2度目ですが、以前より響きが良くのるようになっているような気がしました。シベリウスも聞き応え充分だったのですが、アンコールがこれまた美味。オケの弦にピツィカートで伴奏をさせながら弾いた、パガニーニのベニスの謝肉祭。この曲、彼の定番アンコールなんでしょうね。前回チャイコフスキーの協奏曲を聴いたときも(withデュトワ/N響)前に聞いたときもアンコールで同じように演奏してました。技巧的なパッセージをいとも簡単にかつウィットを加えつつ、楽器がよく鳴ること。愉しく見事な演奏でした。アンコール2曲目はうってかわって、イザイのバラード。この曲アンコールでよく演奏される曲ですが、最近聞いた中では一番の見事さ。ほぼ完璧に音化されているのと、曲への思いが音によくのっていて素晴らしい演奏でした。
後半はチャイコフスキーの第5交響曲。ギルバートの指揮は至極オーソドックスなアプローチと適度なメリハリとダイナミズムが両立したもので非常に後味がよろしい。奇をてらったところが全くといっていいほどないので、安心して身をゆだねることができます。充実した弦をのびのびと歌わせる第1楽章、第2楽章も美しい弦が印象的、第3楽章は反面優美さがやや欠けるかなそして堂々とした第4楽章。ギルバートのオーケストラコントロールは、透明感のある強力な弦楽合奏を核に弱音から強音まで汚い音をさせないで美しい音をオケから引き出していました。ストックホルム・フィルは充実した弦に対して、木管と金管はややクオリティ落ちるかなと。そのクオリティが弦に追いつくと素晴らしいオーケストラに成長すると思います。ギルバートの手腕に期待したいと思います。
アンコールはお国もののベルワルドの作品。初耳の曲ですが、弦の刻みが縦横に動き回るなじみやすい佳曲ですね。オケも生き生きとした音楽を奏でていました。
聴後感のとても良い演奏会でした。日曜日のブルックナー:ロマンティックを中心としたプログラムにも出向く予定です。
【2004/9/26 追記】 このコンサートのスポンサー島津製作所の顔、田中耕一さんは奥さんと一緒にいらっしゃいました。開演前は入り口左手の小ホール前でえらいさんと一緒にお客様をお出迎え。コンサート中はRBブロックで鑑賞。レセプションは小ホールだったようです。お仕事ご苦労様です(笑)。
Comments