プッチーニ・フェスティバル 蝶々夫人 デッシー/ヴェロネージ/読響
初演100/読売新聞創刊130周年 記念公演 プッチーニ・フェスティバル オペラ「蝶々夫人」紗幕に投影された富士山、その影で和服&和傘を持った3人が中央まで歩いてきてポーズをとる。日本を意識させておいてから音楽が始まる。幕が上がると、「和」とはほぼ無縁の石造り(?)の広場。ピンカートンとシャープレスはアメリカを意識させる黒い皮のミリタリー風(かなあ)の衣装。特にシャープレスはさらに黒いサングラスを着用しなにやらヤンキー風。ゴローも黒いいしょうだが芋虫風に分厚いコートみたいなものを羽織ってる。その他大勢の参列者もゴローと似たようないでたちで、色は赤と白、赤い丸は日の丸を意識したものであろうか。日本家屋を感じさせる舞台装置はまったくなく、場面を明確に意識させるのは照明に依存。蝶々さんは白い洋風な衣装、かなり長い裾が特徴的。1幕最後では薄着になって寝衣に着替えたことを示しています(しがらみから開放されたという意味もあるのかも、芋虫風の衣装も日本風しがらみの象徴なのかもしれません)。
プッチーニ : 歌劇「蝶々夫人」 ブレッシャ版 全3幕
蝶々さん : ダニエラ・デッシー ピンカートン : ファビオ・アルミリアート シャープレス : フアン・ポンス スズキ : ロッサリーナ・リナルディ ゴロー : ルカ・カザリン ボンゾ : リッカルド・ザネッラート ヤマドリ : マルコ・カマストラ ケイト : マリア・チョッピ
アルベルト・ヴェロネージ指揮 読売日本交響楽団 プッチーニ・フェスティバル合唱団 (合唱指揮:ステファノ・ヴィスコンティ)
演出 : ステファノ・モンティ
2004年9月9日 18:30 NHKホール
2幕も舞台装置は同じ。蝶々さんは1幕とは違う風情の衣装。幕切れの合唱のハミングにのって照明に映し出される蝶々さんと子供の2人のシルエットと和装をした狂言風の踊りが非常に印象的。
2〜3幕はに続けて上演の筈だったが、舞台トラブルとのことで休憩に。とりあえず15分とのこと。こういうときは気長に待つしかない(笑)。25分が過ぎた頃デッシーが不調だがなんとか歌いますとのアナウンス。
そして3幕、デッシーは目立った影響はなかった模様。蝶々さんが刃物を自分の首に当てた後、舞台中央に四角い赤の照明、そこに倒れこむ蝶々さん。シンプルだけど印象的です。
だれかさんの演出は和のテイストはほんの少しスパイス的に使い、基本的には蝶々さんの心情イメージを舞台に淡々と投影させるよう。下手に和のテイストを乱用しないので、かえって人物の心の動きに集中できます。芋虫風の衣装はちょっといただけませんが、全体的に見ればなかなか良い演出でした。
このように和風というよりは洋風な風情の舞台でヴェロネージの指揮で奏でられる音楽は、非常に繊細な印象。人によっては薄味ととられるかもしれません。でも、これはタイトルロールを歌ったデッシーの歌唱にフォーカスをあわせたものでしょう。デッシーはよく響きがのった声と表現力をを駆使し蝶々さんの心情を的確に表現していきます。それでいて人工的なところはまったくなくて、非常に繊細な印象を与えます。和風というよりは繊細な洋風テイストの蝶々さんと言えるでしょう。
ポンスのシャープレスも好演。ポンスってやや荒いイメージがあるのですが(3年前のチョン指揮の同役ではそういう印象がありました)、今日は最初はやや荒さがあったのですが周囲にあわせてニュアンスのある歌唱に軌道修正していたのはベテランの味といえるでしょう。
ピンカートンのアルミリアートはやや線の細さがありますが、まずますでした。もうちょっと色気があるともっと良かったかもしれません。スズキ役のなんとかさんも滑らかな声と存在感のある歌唱で拍手を浴びておりました。ゴロー役というと松浦さんのイメージが非常に強いのですが、歌謡性豊かな歌唱で興味深く聞きました。他の役も穴がなくて粒が揃っていました。
ヴェロネージ指揮の読響は始めの頃は金管の響きがまとらないところがありましたが、それ以外はタイトルロールのキャラクターに合わせた繊細な音楽を奏でていて美しい演奏を聞かせてくれました。それを引き出したヴェロネージの力量も確かものといえるでしょう。歌手との音量バランスも見事なものでした。
歌手にまったく日本人が出演しない上演は初めての体験。大味なところがまったくない洋風の歌謡性と繊細さが両立した上演。会場がNHKホールでなければもっと感銘を受けたかもしれないなあ・・・、と思ったのは私だけでしょうか?
18時30分開演で終わって見れば22時15分、そしてカーテンコール。明日仕事がなければいいんですけどねえ・・・、印象の良い上演だったのでよしとしますか(笑)。
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