SKF2004 齋藤秀雄メモリアルコンサート 秋山/飯守/小澤/SKO
このフェスティバル、オーケストラが結成する原動力となった齋藤秀雄を偲びチャリティコンサートとして開催されたこのコンサート。ゆかりの指揮者と齋藤秀雄メモリアル基金賞を受賞した若手チェリストの演奏を中心としたコンサートです。今日は浅間温泉近くの松本県民文化会館へ。
サイトウ・キネン・フェスティバル松本 齋藤秀雄メモリアルコンサート最初に齋藤秀雄の指揮する日本フィルが演奏する、チャイコフスキーの弦楽セレナードの映像が流されてコンサート開始。「今日も番組をさぼっております」と話す筑紫哲也の司会にてコンサートは進行されました。
1. モーツァルト : ディヴェルティメントニ長調K.136 2. J.S.バッハ : 無伴奏チェロ組曲第2番ニ短調BWV.1008 3. ワーグナー : 楽劇「トリスタンとイゾルデ」 から 前奏曲 愛の死 : INTERMISSION 4. リゲティ : 無伴奏チェロ・ソナタ 5. J.S.バッハ(齋藤秀雄編) : シャコンヌ
チェロ : 植木昭雄(2) 古川展夫(4) ソプラノ : 緑川まり(3)
秋山和慶 飯守泰次郎 小澤征爾 指揮 サイトウ・キネン・オーケストラ
コンサートマスター : 安芸晶子(1) 豊嶋泰嗣(3) 潮田益子(5)
司会 : 筑紫哲也
2004年9月1日 19:00 長野県松本文化会館
最初の曲はサイトウ・キネン・オーケストラのテーマ曲ともいえるモーツァルトのディヴェルティメントを秋山和慶の指揮で。オケの初期の演奏会ではアンコールでよくこの曲の第2楽章が演奏されているのを記憶している方も多いでしょう。オケとしても久しぶりの演奏ではないでしょうか。オケの編成はの12型。細かい弦の刻みを雰囲気で弾くのではなく、きっちりと揃えた刻み。第2楽章の慈しむようにたどる歌。3楽章の早めのテンポながら整然したアンサンブルと疾走感。整った美しい音で丁寧に奏でられるある意味不器用な演奏は、文字通り「サイトウ・キネン」スタイルともいえるもの。これまた几帳面な秋山の指揮もそのスタイルを体現していました。
続いては植木昭雄の演奏でバッハの無伴奏第2番。落ち着いた音色と丁寧な音楽作りが好印象の好演。もう少し舞曲風のリズムの強調や表現の踏み込みが欲しいような気がしないでもありませんでした。
前半最後は緑川まりを迎えた、飯守泰次郎指揮でトリスタンの「前奏曲と愛の死」。あの指揮振りからは齋藤秀雄の指揮法からは遠い存在かと勝手に思っていたのですが、師事していたのですね。モーツァルトでの美しさそのままにやや厚みを増した弦の音色や、クライマックスでの弦のうねりはこのオケを聞く醍醐味といえます。愛の死での緑川まりの歌唱がこれまた見事。落ち着いた音色で歌われた第一声から最後まで曲を完全に手の内に入れた素晴らしい歌唱でした。語るように歌う部分の味わい、強力なオケに負けない声量とスケール感。飯守の指揮もさすがにワーグナーを得意とするだけあって、オーソドックスに構築された安心して耳を傾けられるいい演奏でした。オケは14型での演奏でした。
後半は、メンバが齋藤秀雄について語る映像が流された後に古川展夫のリゲティの演奏。第1楽章のピッツィカートのグリッサンドと弓で奏でる部分での対比、第2楽章の細かい音形の動く難易度の高い音楽を鮮やかかつ軽やかに弾ききって素晴らしいものでした。
最後は小澤征爾の指揮で齋藤秀雄編曲のシャコンヌ。齋藤秀雄のアレンジのせいもあると思いますが、弦の音色が前の2曲とがらっと変わって美しさよりは想いをこめることを重視した味のある音になっていました。小澤の体全体を使った指揮とあいまって、オケの思い切りも良かったしピアニッシモでの美しさと金管も含めた壮麗な響きのクライマックスは見事でした。この曲も14型での演奏でした。
今日は小澤の誕生日だそうで、来年で古希だそうです。本当に元気ですよね小澤さんって。枯れることのないエネルギッシュな活躍は今後も続けられるのでしょう。来月のウィーン国立劇場来日公演でのモーツァルト、心配ですが楽しみにしたいと思います。
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