ゲルギエフ/都響 東京の夏音楽祭 ゲルギエフのストラヴィンスキー
パソコンの組立&セットアップをしつつ、アンセルメのCDで詩篇交響曲と結婚の耳慣らし。夕方、東京の夏音楽祭「ゲルギエフのストラヴィンスキー」を聞きに赤坂へ。
第20回 東京の夏音楽祭2004 響きの祝祭 ゲルギエフのストラヴィンスキー演奏機会の少ない「結婚」を含むオール・ストラヴィンスキー・プログラム。ゲルギエフのロシアものは個人的にはいちばんしっくりする彼のレパートリーだけに、非常に楽しみにしておりました。
ストラヴィンスキー : 詩篇交響曲 ストラヴィンスキー : バレエ音楽「結婚」 <休憩> ストラヴィンスキー : バレエ音楽「春の祭典」
ソプラノ : ナターリア・コルネーヴァ(2) メゾ・ソプラノ : オリガ・サヴォーヴァ(2) テノール : ウラディーミル・フェレンチャーク(2) バス : ゲンナジー・ベズズベンコフ(2) (ヴォーカル・コーチ:ナターリア・ドムスカヤ) ピアノ : 野平一郎(1&2) 木村かをり(2) 児玉桃(2) 長尾洋史(1&2)
ワレリー・ゲルギエフ指揮 東京都交響楽団 (コンサートマスター:矢部達也) 東京混声合唱団/栗友会 (合唱指揮:大谷研二)
2004年7月26日 19:00 サントリーホール 大ホール
まずは詩篇交響曲から。編成はチェロ、コントラバス、金管、打楽器、ピアノ(2台)そして混声合唱。耳鳴らしをしたアンセルメの演奏は見通しの良いクリアな演奏だったのに対して、ゲルギエフの演奏は対照的に深みのある音色と濃い目の表情付けが特徴。オルフのカルミナ・ブラーナを思わせるピアノが奏でるリズム等の面白さと合唱が歌う詩篇のコントラスト、バッハのリチェルカーレを思わせる第2楽章では音の綾というよりは丹念に隈取を施していく歌わせかた、第3楽章の"alleluia"のなんとも言えない吐息のような表現と快活な"laudate"との見事な対照。東混のいつもより深みのある声もあいまって、天上というよりはより地上側の立った実在感の濃い聴き応えのある演奏でした。
次はある意味今日のお目当てとも言えるバレエ音楽「結婚」。これも編成を記しておくと、ピアノ4台、打楽器群、ソプラノ、アルト、テノール、バスそして混声合唱。かなり特殊な編成ですので演奏される機会も少ない曲のひとつと言えるでしょう。若いカップルの婚礼のがやがやと情景を描いた作品です。これもアンセルメの演奏では比較的あっさりとした感触ですが、十分面白さの感じられる演奏でした。今日の演奏はマリインスキー劇場から招いたソリストの生き生きとした表現力(決して声が美しいという人達ではない)が素晴らしく、ゲルギエフのきれいにまとめようとするところのない方向性とあいまって体格の良いロシア人達がわいわいがやがやとしているさまが目に浮かんでくるよう。東混も群集を生き生きとした表現で歌っていて好演だったと思います。でも、これがマリインスキー劇場の合唱団だったらもっと凄まじいだろうなあと・・・思ったりしました。今日は対訳が配られたのですが、慣れないロシア語で最初の1から2ページ目で追うのを断念(^^♪。それでも情景は手に取るようにわかるし、生き生きとしいてとても愉しめました。
後半は春の祭典。一昨年のN響との演奏(放送で聞きました)やキーロフ管とのCDで耳にしていてある程度はどんな演奏をするかは想像できたのですが、やはり実演を聞くとこれは凄いというか凄まじいというか・・・。他のロシア人指揮者でも重戦車型や猪突猛進型の人はいましすし、ロシア人指揮者でなくてもアンサンブル的に整っていてクリアーな演奏は良く耳にするところですが、アンサンブル云々ではないこの曲のもつ地の底から噴出しくるような根源的な力をこれだけえぐりだして聞かせてくれる指揮者は今他にいないんではないかと。奏者に任せたファゴットのソロから始まる第1部、弦がリズムを刻むところからやや煽り加減のテンポ設定で切れ味よりも全体の推進力を優先。奇麗事ではない金管の咆哮や全合奏の凄まじさ。そのままの勢いでコーダ寸前の全休止までのなだれ込んでの、休止の息を呑むような長さと緊張感。そこから一気呵成に終結までぐいぐいと。最後の音のトロンボーン(だったと思います)を長めに吹かせて(スコア上そうなっているのかなあ)いたのが奇麗事ではない味付けになっていまいした。ゲルギーさん、ここで聞き手を休ませてくれません。ほぼアタッカで第2部へ。導入部のピアニッシモも静謐ではなく意思を感じさせるピアニッシモ。ゲルギエフが単なる爆演指揮者でないことの証明でもありました。ミュートをつけたトランペットのピアニッシモのコントロールは見事でした。しばらくしたあとも打ち付けるような全合奏の連打の重量感と凄まじさ。そして最後のいけにえの踊りはこの演奏の白眉でした。弦とホルン等で刻むリズムへのダイナミクスを使った表情付け(普通は単なるリズム打ちでしかない演奏が殆ど)、時折見栄を切るように立ち止まる意表を付いた間(これも普通はこんなことしない)。後ろから意外な人に肩を叩かれてびっくりするとか、ジャングルをさまよっていて猛獣とかがいないかとかきょろきょろしながら進んでいくとかそんな感じでしょうか。素直に切れよく進むわけではないことの聞き手に与えるインパクトはかなりのもの。最後の盛り上がりも壮絶としかいいようが・・・、そして思い切り引き伸ばした最後の一閃。普通の演奏ならすかさず拍手するんですが、あまりにもインパクトが大きすぎてちょっと時間かかりました(ふー)。都響もベルティーニとの演奏で見せる表情の濃い表現力をさらに濃い表情付けと、ゲルギエフの指揮に必死に喰らい付いていく演奏は普段の彼らのとは違う一面を見せてくれました(これが彼のマジックなんでしょうけど)。
こんな凄まじい演奏、頻繁に聞いていたら聞くほうがもちませんな・・・。
Comments