二期会 ドン・ジョヴァンニ Bキャスト 宮本/ヴェロ/東京フィル
東京二期会オペラ劇場 ドン・ジョヴァンニ昨日のAキャストが声質の素直な人材を集めたキャストだとすると、今日は個々の個性を重視したキャスティングと言えるでしょうか。Aキャストは重唱等のアンサンブルが抜群、それに対するBキャストは個人のキャラクターを前面に出して役のキャラクターを強調する方向かと。どちらが良いということはなく味わいの違いがすごく良く現れていたと思います。
モーツァルト : ドン・ジョヴァンニ
ドン・ジョヴァンニ : 宮本益光 騎士長 : 長谷川顯 ドンナ・アンナ : 増田のり子 ドン・オッターヴィオ : 高野二郎 ドンナ・エルヴィーラ : 腰越満美 レポレッロ : 久保和範 マゼット : 山下浩司 ツェルリーナ : 砂田恵美
パスカル・ヴェロ指揮 東京フィルハーモニー交響楽団 (コンサートマスター:青木高志) 二期会合唱団 (合唱指揮:松井和彦)
演出 : 宮本亜門
2004年7月25日 14:00 東京文化会館 大ホール
宮本益光のドン・ジョヴァンニは、一般的なドン・ジョヴァンニのイメージに近い色男風仕立て。5月のフィガロでのアルマヴィーヴァ伯爵で感じた、ある種のいやらしさと色気がうまく役柄に合っていました。そっとささやくようなやわらかい表現がもっと使えるようになるともっと艶っぽさのあるドン・ジョヴァンニ像が出来上がるでしょう。何年かしたらまたこの役で聞いてみたいものです。
腰越満美のドンナ・エルヴィーラは昨日の佐々木典子よりは現代感覚に満ちた歌いぶり。歌唱や演技も安定していて見事なのですが、昨日の佐々木典子のずれた感じのほうが個人的には面白かったかなあ。
久保和範のレポレッロは色気有りのドン・ジョヴァンニの相手役にふさわしいく、昨日の境井信博と甲乙つけ難い出来栄え。演技もよりメリハリが利いていたと思います。
増田のり子のドンナ・アンナは昨日の吉田恭子よりも声と歌の魅力があって好印象。高野二郎のドン・オッターヴィオはちょっとキャラクターが合わないかなあ。素直な人物像よりは癖のある役柄のほうが声のキャラクターを生かせると思います。
山下浩司のマゼットと砂田恵美のツェルリーナも若々しい演技と歌唱でしたが、砂田恵美は声は良いもののフレーズが切れ切れになってしまうのが残念。昨日の林美智子がその点でかなり魅力的でした。
長谷川顕の騎士長は昨日の堀野浩史よりは存在感があったものの、地獄落ちの場面での威厳というか有無を言わせぬ存在感はもっと欲しい。
ヴェロ率いる東京フィルは機能に引き続き素晴らしい出来。木管+ホルンの愉悦感あふれるアンサンブルは特筆もの。新国のフィガロなんか彼にまかせたらぴったりだなあと思いました。
さて最後に宮本亜門の演出ですが、やっぱり最後に星条旗が出てくるのはなんだかよくわかりませんでした。グラウンド・ゼロ、サダム・フセイン、ビン・ラディン、ジョージ・ブッシュ等々を当てはめては見るもののどうもしっくり来ないんですよね。ミュージカル・タッチのエンタテインメント性の高さはとても面白いし、ドラッグ等のどぎついアイテムを使いながらえげつない感じにさせない手腕はもちろん評価しているのですけど・・・。
Comments