シュトゥッツマン シューベルト:冬の旅
ナタリー・シュトゥッツマン
シューベルト:「冬の旅」D.911
コントラルト:ナタリー・シュトゥッツマン
ピアノ:インゲル・ゼーデルグレン
2004年5月14日 19:30 王子ホール
3月に聞いたシェーファーの純度の高い声による演奏に続く女声による冬の旅。コントラルトのシュトゥッツマンによる演奏はいかに。
決して滑らかとは言えないけど、どの声域でも変化のない均質で包容力のある奥深い声。そして、言葉の扱いの柔らかさは特筆物。低い声域でも力んで不自然になることはまったくなく、役柄の声色をナチュラルに表現できるのはかなりの強み。どれだけ踏み込んだ表現をしても力みやぎすぎすした印象はまったく感じられず、自然な表現に聞こえてくる。でも聞き手の心にしっかりとした印象を与えてくれる。厳しいけれど優しい冬の旅と言えるでしょうか。
ピアノ伴奏はゼーデルグレン。基本的に指が回る人ではない。菩提樹の前奏等で滑らかさがほしいかなあとか、もうすこし整理して弾いてほしいかな、とか思うところもありました。でもこの人の素晴らしさは、タッチが軽いにも関わらず深みのある音色が実現できること。深みのあるシュトゥッツマンの声をスポイルしないコントロールの絶妙さ。特に印象に残ったのは春の夢でのひと時の光のさしこみ具合、そして宿屋の深く調和の取れたハーモニーと音色は素晴らしかった。
公式サイトによるとシュトゥッツマンはまだ充分若い。これからの「冬の旅」の変容も楽しみです。今度は是非ともブラームスあたりを聞かせてほしいものです。
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