グラーフ/新日本フィル/ブラウティガム トリフォニー・シリーズ ワーグナー/リスト/ブルックナー
新日本フィルハーモニー交響楽団 トリフォニー・シリーズ 第369回定期演奏会
1. ワーグナー:楽劇「トリスタンとイゾルデ」 より 前奏曲と愛の死
2. リスト:ピアノ協奏曲第1番変ホ長調
3. ブルックナー:交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」(ノヴァーク版)
ピアノ:ロナルド・ブラウティガム(2)
ハンス・グラーフ指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団
コンサートマスター:崔文洙
2004年5月1日 15:00 すみだトリフォニーホール
今日の指揮はハンス・グラーフ。ザルツブルクで地道に活動している職人指揮者というイメージしかなく、生演奏を聞くのもはじめて。この重量級プログラムは自信がないと組めませんね。
まずはトリスタンから。クリアで美しい響き(特に弦の美しさは出色)、見通しのよさ。各パートの入り組んだ旋律が明瞭に聞こえてくる、それでいて全体のスケール感やロマンティックな味わいも見事に両立している。この曲だけでハンス・グラーフ、とても実力のある人だということを確信しました。
次はブラウティガムを迎えたリストの協奏曲。ハーモニー間のある美しい音色を持っていますねこのピアニスト。おどろおどろしい演奏になりがちなこの協奏曲を、クリアでリリックに聞かせてくれました。スケール感も充分感じさせてくれたし、右手の美しさも格別。グラーフ指揮のオケのサポートも、ピアニストと一体になった素晴らしい演奏でした。
トリはブルックナーのロマンティック。クリアで美しい響きはワーグナー同様、かつブルックナーのもついろんな要素を感じさせてくれる演奏。ブルックナーの素朴さ、粗野な荒々しさ、コラール風旋律の荘重さを見事に描き分けていました。いろんなフレーズが見事に生き生きと息づいていたのが印象的。全体の構成もやや早めのテンポでもたれないし、それでいてせせこましくならなでスケール感を充分感じさせてくれる。指揮者の能力の賜物といっていいでしょう。弦と管のバランスも弦がかき消されないようにうまくとっていましたし、金管も全体の響きをうまく保ったコラールから、粗野な咆哮までいろんな表現のパレットで指揮者の要求に見事に応えていました。特にホルン主席の吉永雅人の音楽的かつ技術的安定感のある演奏、トロンボーン+チューバのハーモニー感も見事でした。良く知っているはずの曲なのに、何箇所か新しい発見をさせてくれたのもグラーフのおかげでしょう。
この曲にしては珍しく、最後の音のあとの響きと静寂を充分に感じることができたのもよかった。
気が多いやつだといわれそうですが、また気になる指揮者がひとり増えました(笑)。
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