マズア/フランス国立管/ハチャトゥリアン(Vn) ハチャトゥリアン/ムソルグスキー
World Orchestra Series 2004-2005 【Series B】 フランス国立管弦楽団
1. デュカス:交響詩「魔法使いの弟子」
2. ハチャトゥリアン:ヴァイオリン協奏曲ニ短調
3. J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリンソナタ第1番ト短調BWV.1001 から 第1楽章(アンコール)
4. ムソルグスキー(ゴルチャコフ編):組曲「展覧会の絵」
5. ムソルグスキー(ゴルチャコフ編):組曲「展覧会の絵」 から 殻をつけたひなの踊り(アンコール)
6. グリンカ:歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲(アンコール)
ヴァイオリン:セルゲイ・ハチャトゥリアン(3,4)
クルト・マズア指揮 フランス国立管弦楽団(1,2,4,5,6)
2004年4月25日 19:00 サントリーホール 大ホール
最初のデュカスを聞いた途端、昼に聞いたフルネとの音楽のありようの違いに「こんなに違うものか」と思った次第。もちろん、どちらのありようも「あり」なのです。マズアの指揮しているようでしていない、「まかせるよ」といった風な半分芝居がかった指揮。それに充分過ぎるほど、応える芝居上手なオケ。冒頭のバスーンを筆頭にソロをとる連中がうまいこと、そして表情の生き生きしていること。弦の合奏だってしかり。弟子を暖かく見守るというよりは、みんなでもて遊んでいるかのよう。最初から面白いったらありゃしない、無類の楽しさ。
2曲目のハチャトゥリアン君は、昨年の9月にもフェドセーエフ&東京フィルで同じコンチェルトを弾いていました。まだ二十歳になっていない彼、やや甘めの美音を振りまき技巧の切れも抜群。ハチャトゥリアン特有の民族的なメロディーも土臭くならずにセンス良く歌っているのがいいいですね。オケもカラフルな音色でとっても表情豊かに彼を支えていて、特に2楽章の心のこもった表現の濃さは特筆もの。1楽章と2楽章で彼に絡んだクラリネットも絶品。これもまた楽しく聞かせてもらいましたよ。アンコールは一転して落ちつた風情のバッハでした。ハチャトゥリアン君、今度はソロ・リサイタルを是非聞いてみたいですね(6月にありますけど・・・、無理だなあ)。
後半は展覧会の絵で、良く聞かれるラヴェル編曲のものではなくゴルチャコフというひとの編曲。マズアはレコーディングもしているほどこの人の編曲をかっているようです。ゴルチャコフという名の通りロシアの人で、ムソルグスキー寄りの土臭い感じが支配的な編曲ではと思いきやそんなことはなくてラヴェルの編曲を意識した色彩感のある編曲です。ピアノ版の全曲を編曲していて、打楽器の種類が増えているのと、チューバが2本使われていたり、ソプラノサックスが使用されています。
冒頭のプロムナードはやはりトランペット(笑)、ただし2本重ねて。古い城のメロディーはミュート付きのトランペット。サミュエル〜はラヴェル編だとミュート付きトランペットが活躍しますがこちらはソプラノサックスが活躍。カタコンブはバスドラムと金管を効果的に利用してかなり強烈にドロドロした感じを表現。キエフの大きな門では木管による静かな部分の2回目を金管でコラールのように壮麗に響かせていたのが印象的。
この編曲、ラヴェルの影響はかなり濃いもののなかなか楽しめるものです。少なくともアシュケナージが編曲したものよりは・・・。演奏もその色彩感を充分に表現したもので、その響きのカラフルさといったらさすがというしかありません。これも楽しませてもらいました。
アンコールも殻をつけた〜をチャーミングにやってから、ルスラン序曲。ロシアのオケのやるような重戦車突進方ではもちろんありませんが、生き生きした演奏がよかったですわほんとに。
マズアがこのオケのシェフとなると聞いたときは正直大丈夫かいなと思ったのですが、オケの持ち味を良く生かしていたのに感心しました。実をいうとあまり好きな指揮者ではなかったのですよマズアって。でも、今日の演奏を聞くと彼に対する認識を少しかえないといけないのかもしれません。
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