えすどぅあ

コンサートやオペラの感想を中心とした音楽日記になったかなあ・・・。

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新国立劇場オペラ研修所 プッチーニのパリ 吉田珠代/J.カルタンバック/新日本フィル

毎年この時期におこなわれている新国立劇場オペラ研修所のオペラ公演。例年、ひとつの作品を選び全曲上演という形で実施されていました。今年は趣向を変え「プッチーニのパリ」と題し、「つばめ」の第1幕と「ラ・ボエーム」の第1&4幕という形での公演。今年は新日本フィルがピットで若い歌手達を支える、新国立劇場オペラ研修所の「プッチーニのパリ」を楽しみに初台へ。
新国立劇場オペラ研修所 研修公演 プッチーニのパリ "Le Paris de Puccini"

1.プッチーニつばめ 第1幕 (1920年版)
マグダ吉田珠代(6期生)
リゼット田島千愛(8期生)
イヴェット松井敦子(7期生)
ビアンカ前嶋のぞみ(8期生)
シュジィ山川知美(7期生)
ルッジェーロ河野知久(7期生)
プルニエ岡田尚之(6期生)
ゴバン村上公太(6期生)
ランバルド町英和(6期生)
ペリショー青山貴(賛助出演・4期生)
クレビヨン森雅史(8期生)

休憩

2.プッチーニラ・ボエーム 第1幕、第4幕
ミミ吉田珠代(6期生)
ムゼッタ山川知美(7期生)
ロドルフォ村上公太(6期生)
マルチェッロ町英和(6期生)
ショナール青山貴(賛助出演・4期生)
コッリーネ森雅史(8期生)
ベノア松本進(賛助出演)

ジャコモ・プッチーニ(案内役)ファビオ・サルトール

ジュローム・カルタンバック指揮・音楽指導新日本フィルハーモニー交響楽団
(コンサートマスター:豊嶋泰嗣)

演技指導・演出ロベール・フォルチューヌ
デザインクリストフ・ヴァロー

2006年3月11日 14:00 新国立劇場 中劇場
幕が下りた舞台の左端には椅子がひとつ、床には何枚もの楽譜が散乱している。その椅子に座るのはファビオ・サルトール扮する老プッチーニ。思うように筆が進まないプッチーニが、パリと若者を中心にして描いたオペラへの追憶に思いを馳せるという趣向。オペラは老プッチーニが頭に描いた追憶の情景として挟まれています(上演中は老プッチーニは椅子に座って見守っている)。舞台装置はとてもシンプルなもので、演出全体としても研修生達の演技を主体に見せることに主眼を置いたオーソドックスなもの。老プッチーニの「老い」と研修所の若者が歌い演じるオペラの中の若者達の「若さ」との対比がとても印象的でした。

前半はつばめの第1幕、ラ・ボエームとは対照的な社交界の風景。第1幕だけという難しさもあるのでしょう、いまひとつ研修生達の歌と演技がしっくりと来ていない感じがしました。裕福なお金持ちの世界がピンときていないのかもしれません。それ故か(お金持ちではない)小間使いリゼットを歌った田島千愛のコミカルなキャラクターが良く出た歌と演技はとても好感が持てました。

後半はラ・ボエームの第1幕と第4幕。つばめの借りてきた猫のような歌と演技とはうってかわって、みんな生き生きと歌い演じているじゃないか(笑)。一線で活躍する歌手達に較べれば及ばない面は多々あるにせよ、役の設定に近い若い歌手達が放つ魅力は他には変え難いものがあるなあとしみじみと感じた次第。つばめよりもラ・ボエームのほうが自分を飾らずに等身大で表現することができるんでしょう。大掛かりな演出が必要な第2幕があるから、今回のような上演形態になったのではと思うのですが、何らかの工夫をして全曲をやらせてあげたかったなあ・・・。

ジュローム・カルタンバックが指揮する新日本フィルは10-8-6-4-3とやや小ぶりの編成。生彩に富んだ表情と繊細な美しさが、終始安定したピッチと良好なアンサンブルで実現されていました。これだけ充実した演奏で支えてくれれば、研修生達も安心して歌と演技に専念できる筈。新日本フィルは昨年の二期会「フィレンツェの悲劇&ジャンニ・スキッキ」でもアルミンクの棒のもと、素晴らしい演奏をピットから奏でていましたし、是非ともピットに入って演奏する機会を増やして欲しいなあと願う次第であります。
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