渡辺玲子/ワールト/読響 芸劇マチネー R.シュトラウス/ラフマニノフ
以前はPhilipsやRCA、最近はEXTON(OCTAVIA)へのレコーディングの成果でその名を知られている指揮者エド・デ・ワールト。日本のオーケストラへの客演は今回が初めてなのではなかろうか。彼の指揮する読響の演奏を聴きに池袋へ。
読売日本交響楽団 第68回東京芸術劇場マチネーシリーズ1曲目はR.シュトラウスのドン・ファン。オーケストラは読響いつものチェロ外側の配置で、弦の編成は16型。3階席からワールトが出てくるのを見ていると、なんだかアルブレヒトみたいな雰囲気を感じるのは私だけ?派手さはないけれども、隅々まで神経の行き届いたワールトの棒。その棒から引き出されるのは、各パートの明瞭度を保ちつつも良く溶け合ったまろやかな音色。ピアニッシモからフォルティッシモまでダイナミクスを幅広く取りつつ、常に余裕が感じられます。特に、中間部の夢見心地な部分のふわっとした感触の柔らかさ、それに乗って歌うオーボエ、クラリネットのソロも見事でした。コンサートマスターのソロはもう少し音が硬く、音色の魅力がもっと欲しいところ。アルブレヒトの明晰で冷静沈着な演奏にまろやかさと熱気を足したようなイメージでしょうか。アルブレヒトもいかにも職人って感じがしますが、このワールトもいかにも職人という感じがします。彼のオーケストラ捌きの見事さを明確に示した演奏でした。途中チェロ首席の弦が切れた様子で、初めてチェロの楽器リレーを見ました(笑)。
1. R.シュトラウス : 交響詩「ドン・ファン」作品20 2. R.シュトラウス : ヴァイオリン協奏曲作品8 休憩 3. ラフマニノフ : 交響曲第3番イ短調作品44
ヴァイオリン : 渡辺玲子(2)
エド・デ・ワールト指揮 読売日本交響楽団 (コンサートマスター:藤原浜雄)
2005年6月19日 14:00 東京芸術劇場 大ホール
2曲目は渡辺玲子を迎えた、R.シュトラウスのヴァイオリン協奏曲。ディスクではケンペ/ドレスデン・シュターツカペレのR.シュトラウス集(EMI)に入っていたのを聞いたことがあるような気がしますが、演奏会で聞くのは多分始めて。R.シュトラウス18歳の時の作品だそう。古典派の形式をとりながら、艶やかな弦とホルンを中心とする金管や木管が活躍し形作る豊饒なサウンドとほのかに漂うロマンティシズムはやっぱりリヒャルトの個性。ヴァイオリン独奏は聞(見て)いると細かい動きと重音の難易度が高そう。決して一筋縄では弾けそうにないもの。渡辺玲子はいつもながらの芯のしっかりした音と確かな技術力を駆使した好演。清らかだけど艶っぽいオーケストラが先導する第1楽章では高音域の美しい音とオーケストラの管楽器との対話が印象的。第2楽章は柔らかな風合いの弦楽の上でしっとりとした歌の美しさ。第3楽章は少しバーバーを思わせるような細かな動きが聞いていて愉しい(弾く方は大変そうですが・・・)。ソリストに対するワールト/読響のサポートも優れたもので、決してソロを覆いつくすくとのない絶妙のバランスと協調感。そして、両端楽章の透明感と艶を両立したサウンドと第2楽章の柔らかさの対比が良く出ていました。なお、オーケストラの編成は12型でした。
後半は16型に編成を戻して演奏されたのはラフマニノフの第3交響曲。ラフマニノフの交響曲というと圧倒的に第2交響曲の演奏を聞く機会が多く(4月にも尾高/日本フィルを聞きました)、私も第3交響曲を演奏会で聴くのは今日がはじめてかも。いろんな意味でバランスの取れた優れた演奏だったように聴きました。オーケストラ全体が溶け合った美しさと明晰さのバランス、弦楽の瑞々しい音色と入れ込みすぎない歌わせ方。ドン・ファンではややクリアーさに欠けるところもあったように聞こえましたが、このラフマニノフではそんなところは殆どありませんでした。ワールトの奇をてらったところのない音楽作りと相まって、躍動感と清潔なロマンティシズムがそこここに漂う素晴らしい演奏でした。
ワールト/読響の組み合わせ、来週は11月の二期会「さまよえるオランダ人」への予告編ともいえるワーグナー・プログラムが予定されています。スケジュールをやりくりして、後半だけでも聞きたいなあと思っているjosquinなのでした(笑)。
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