戸田/ハウシルト/新日本フィル トリフォニー定期 ベルク/ブルックナー
2002年3月に故朝比奈隆の代役として新日本フィル定期に登場し、素晴らしいブルックナーの第5交響曲を聞かせてくれたヴォルフ=ディーター・ハウシルト。2度目の新日本フィル定期への登場もブルックナーの交響曲がプログラムに取り上げられました(新日本フィルへの登場自体は3度目で、昨年3月にブルックナーの9番他で客演しています)。ハウシルトの振るブルックナーの第7交響曲を聴きに錦糸町へ。
新日本フィルハーモニー交響楽団 トリフォニー・シリーズ 第385回定期演奏会オーケストラはチェロが外側に置かれた通常配置、弦の編成は前半が14型、後半が16型でした。4月からコンサートマスターに就任した西江辰郎がトップサイドに。プログラムのメンバ表を見ると、豊嶋泰嗣がソロ・コンサートマスターからゲスト・ソロ・コンサートマスターへと肩書きが変わっていました。
1. ベルク : ヴァイオリン協奏曲「ある天使の思い出のために」 * 2. ブルックナー : 交響曲第7番ホ長調(ノーヴァク版)
ヴァイオリン : 戸田弥生(1)
ヴォルフ=ディーター・ハウシルト指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団 (コンサートマスター:崔文洙)
2005年5月20日 19:15 すみだトリフォニーホール 大ホール
前半は戸田弥生を迎えてベルクのヴァイオリン協奏曲。実に魅力的に吹かれたクラリネットのメロディーに呼応し、同じメロディーで登場するヴァイオリンのソロ。戸田弥生は落ち着いた音色でオーケストラとの協調を重んじた演奏を聞かせてくれました。もう少しソロがオーケストラから浮き上がって欲しいなあと思うところもありましたが、美しい音色で有機的な雰囲気を醸し出すハウシルトと新日本フィルとの一体感が見事な演奏でした。
後半は今年3度目となるブルックナーの交響曲第7番。2月のブロムシュテット/ゲヴァントハウス管、先月のスクロヴァチェフスキ/読響と双方とも素晴らしい演奏だったのは記憶に新しいところ。なんといっても、新日本フィルのサウンドがいつもと違うのに感心。暖かくて落ち着きのある重心の低い古風とも言えるサウンド、こういうのを燻し銀って言うのでしょうか。その低重心なサウンドを基調に、ハウシルトはまるで作曲者の壮大なパズルでもある第5交響曲に挑むようなアプローチで曲を構築していきます。第1楽章冒頭の息の長いひとつの弧を描くようメロディーが、一つ一つのフレーズ毎に弧を描いた積み重ねが全体の大きなアーチを形作る。最初はもう少し滑らかに歌って欲しいなあと思ったのですが、聴き進むにしたがってこのアプローチが耳に馴染んできて癖になってくるのが不思議。ぱっと聞くとかなり無骨かもしれないけれど、ダイナミクス(特にピアニッシモ方向が抜群)も丁寧にコントロールされているし、繊細な味わいにも事欠くことがない。声高に叫ぶ演奏ではないけれども、聴き終わるとずっしりとした手応えの残る充実したブルックナーでした。最後の和音が鳴り響いた後、その余韻をきちんと味わえたのも良かった(^^♪。
ハウシルトの新日本フィルへの次回登場は、年末の第九公演(3公演)が予定されています。その次の機会があるならば、ぜひともまたブルックナーを聞かせて欲しいものです。
Comments
>聴き進むにしたがってこのアプローチが耳に馴染んできて癖になってくるのが不思議
全く同感です。
はじめこそ物足りなさを感じたのですが、
徐々に音楽に包まれていきました…。
そういうのを「自然体」というのでしょうか。
ハウシルト、またブルックナーで聴きたいです。
ハウシルトの気取らない素朴さが「自然体」と感じる要因なのかもしれませんね。今度は、8番あたりを聞いてみたいですね。