東京オペラ・プロデュース とてつもない誤解 Bキャスト 宮本/松岡/TUP
天気予報では雪が降る予定だったようですが、雨止まりでよかった(笑)。昨年11月の地獄のオルフェで楽しませてくれた東京オペラ・プロデュースが上演するロッシーニのブッファを目当てに初台へ。
東京オペラ・プロデュース 第72回定期公演 とてつもない誤解「とんでもない誤解」はお金のない若者エルマンノ(エルネスティーナを思っている)と金持ちブラリッキオ(父ガンビエッロの決めた婚約者)のふたりが娘エルネスティーナを巡って織り成すどたばた物語り。題名の「とんでもない誤解」は使用人フロンティーノがエルマンノを助けようとしてブラリッキオについた嘘(エルネスティーナが実は去勢した男だと・・・)から。最後はエルマンノとエルネスティーナが結ばれてめでたしめでたしと。
・ ロッシーニ : とてつもない誤解 (オトス版による上演)
ガンベロット : 杉野正隆 エルネスティーナ : 宮本彩音 エルマンノ : 三村卓也 ブラリッキオ : 細岡雅哉 ロザリア : 小野さおり フロンティーノ : 倉石真
松岡究指揮 東京ユニバーサル・フィルハーモニー管弦楽団 東京オペラ・プロデュース合唱団 (合唱指揮:伊佐地邦治)
演出 : 馬場紀雄
2005年1月15日 15:00 新国立劇場 中劇場
まずはソリスト達の印象から。ヒロインのエルネスティーナを歌った宮本彩音は音の転がし技術が優れていますね。哲学に没頭するちょっと頭でっかちな役柄と固めで伸びのある声のマッチングがいい味を出してました。ヴィヴラートのかかりかたがやや気になるものの、夜の女王とか歌えるんでないかなあ彼女。エルネスティーナと結ばれるエルマンノを歌ったのは三村卓也。全体にピッチが安定しないのと、歌もなんだかぎこちなくて残念。たまたま本調子でなかったのかもしれませんが、ぴりっとしない出来栄えでした。婚約者ブラリッキオは細岡雅哉。明るい声とキレのある歌唱で道化的な役割のある役柄を生き生きと歌い演じていました。エルネスティーナの父ガンベロットを歌ったのは杉野正隆。素直な声と安定した歌唱で安心して聞くことが出来ます。細岡雅哉との声のキャラクターの違いも明確になっていましたね(第1幕の珍妙な2重唱は面白かった)。使用人ロザリアの小野さおりとフロンティーの倉石真も生き生きとした歌で好印象。特に倉石真は声に癖がないのと生き生きとした歌いぶりで、今後楽しみなテノールですね。
松岡究の指揮はかっちりとした感じの手堅い音楽作り。ロッシーニとしては、もう少し遊びがあっても良かったかと感じました。東京ユニバーサル・フィルは全体的には美しい音色を奏でていましたが、高弦の細かな音の動きの切れとピッチの安定を望みたいと思います。合唱は生き生きとしていて良かったと思います。
馬場紀雄の演出はガンビエッロ邸のみを舞台に置いたシンプルな舞台装置で奇をてらったところは全くないもの。その場面で歌っている人以外にも動きを付けたり、音楽と人物の動きをシンクロさせたりと聞き手を楽しませる工夫がいろいろ。喜劇を安心して楽しむことが出来る演出でした。
なんだかんだ言ってもロッシーニのブッファは楽しいですね。序曲にチェネレントラで出てくるメロディーが出てきたりして、ロッシーニのオペラをたくさん知っている人にはあちこちに知っているフレーズがあったのでは(私はそこだけしかわかりませんでした・・・)。このオペラ、初演時は3回で打ち切れその後の上演回数も芳しくないとのこと。今日聞いた限りではロッシーニらしさが随所に聞かれる楽しい作品で、もっと上演されても良いのではと感じました。
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