林美智子 メゾソプラノ・リサイタル
土曜ソワレシリーズ 女神との出逢い 第125回
林美智子 メゾソプラノ・リサイタル
武満徹(ヘニング・ブラウエル編に基づくアレンジ)
小さな空(武満徹 詞)
翼(武満徹 詞)
島へ(井沢満 詞)
○と△の歌(武満徹 詞)
死んだ男の残したものは(谷川俊太郎 詞)
高田三郎
くちなし(高野喜久雄 詞)
「パリ旅情」より 市の花屋(深尾須磨子 詞)
團伊玖磨
「五つの断章」より 舟唄(北原白秋 詞)
「わがうた」より 紫陽花(北山冬一郎 詞)
モーツァルト
歌劇「フィガロの結婚」より アリア「恋とはどんなものかしら」
歌劇「コシ・ファン・トゥッテ」より アリア「男たち、まして兵士は」
歌劇「ドン・ジョヴァンニ」より アリア「恋人よ、さあこの薬で」(薬屋の歌)
グノー
歌劇「ファウスト」よりアリア「あの人に告げて」(花の歌)
歌劇「ロメオとジュリエット」よりアリア「昨日から、悪戯に探し求めて」〜「白いきじ鳩よ、何をしているのか」
ロッシーニ
歌劇「マホメット2世」よりアリア「正しき天よ、この危機に」(アンナの祈り)
歌劇「セビリヤの理髪師」よりカヴァティーナ「今の歌声は心に響く」
【アンコール』
ワーク(伊佐治直編):大きな古時計
メゾ・ソプラノ:林美智子
ピアノ:石野真穂(本プロ) 伊佐治直(アンコール)
林美智子は二期会の「フィガロ」でのケルビーノ、「薔薇の騎士」でのオクタヴィアンに出演し注目を集めているメゾソプラノです。今回は初のソロリサイタルとのこと。
最初の武満作品から癖のないのびのびとした良い歌声を聞かせてくれます。声質も滑らかですし、声量もこのホールでは充分過ぎるほど。メゾらしい声のボディ感もまずまず。日本語もきちんとした発音で聞こえてきます(なかなか発声と両立しない場合が多いんですよね)。ジャズっぽい雰囲気のセンスがいいですね。
武満作品の最後におかれた「死んだ男の残したものは」の歌唱はこのコンサートの白眉ではなかったでしょうか。第3節までは比較的淡々としていた歌唱。第4節の”死んだ兵士〜”での強い声での表現。この曲に対する彼女の思いが歌声へストレートに乗せられていたし、今のいろんな世界状況をも自然に考えさせられるとても素晴らしい演奏でした。
聞き手(私)「死んだ男の残したものは」の感動から立ち直らないうちに高田作品へ(さすがプロですね、切り替えがはやい(笑))。「くちなし」の淡々としているけど思いが素直に伝わる表現、「市の花屋」の芝居っ気のある歌い口。共に好演。
團作品はちょっと曲自体に欠けるような気がしないでもありませんでした。
後半はモーツァルトから。ケルビーノのアリアはちょっと淡々としすぎたかなあ、声もやや響きが薄くなってしまった感じがありました。デスピーナ&ツェルリーナのアリアは舞台を見てみたいです、本当に。7月のドン・ジョヴァンニが楽しみです。
グノーの2つのアリアも雰囲気がとても良くでていたと思いますし、ロッシーニもこれまた素晴らしい。彼女の十八番だというロジーナのアリアは声の転がしも含めて技術的に問題がないし、手のうちにすっかり入った曲といえるでしょう。
アンコールは伊佐治直編曲&ピアノの大きな古時計。ゆっくりとしたテンポと幻想的ともいえるアレンジがとても印象的でした。
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