えすどぅあ

コンサートやオペラの感想を中心とした音楽日記になったかなあ・・・。

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井上/新日本フィル サントリー定期 武満/井上/バカロフ

この演奏会のちらしのキャッチ・コピーは「井上道義、自作自演、世界初演」。先日、井上道義のメッセージ新日本フィルのサイトに掲載されましたが、どんな曲になっているのか楽しみ。邪魔が入らず無事退社して、六本木一丁目へ。
新日本フィルハーモニー交響楽団 サントリーホール・シリーズ 第375回定期演奏会

1.武満徹弦楽のためのレクイエム
2.井上道義メモリー・コンクリート(世界初演)
3.バカロフミサ・タンゴ

バンドネオン門奈紀生(3)
メゾ・ソプラノ井坂恵(3)
バリトン堀内康雄(3)

井上道義指揮新日本フィルハーモニー交響楽団
(コンサートマスター:崔文洙)
栗友会合唱団(3)
(合唱指揮:栗山文昭)

2004年10月14日 19:15 サントリーホール 大ホール
1曲目は武満のレクイエム、久しぶりに聞いたような気がします。編成は8-8-8-8-6で、この曲ってこういう指定だったかなあ・・・?新日本フィルの美しい弦と、井上もややマッチョともいえる棒のコントラストを興味深く聞きました。

2曲目は井上道義の新作「メモリー・コンクリート」。自伝的内容を含むと記されているけれども・・・。井上道義らしいといえばらしいけど、やや物足りないような気もしないでもない。曲は先日紹介した(プログラムにもそのまま掲載されていました)井上自身が記した「メモリー・コンクリートについて」に、
オギャ―と生まれ、不安な世界、子供のころの家の中の音、学校から帰る道すがらのトボトボ歩き、虫の音、校歌のようなものと初恋、バレエなどで踊った曲のフィードバック、ピアノの練習の気分、何人かの僕の目の前に強く存在をみせた人々の肖像、忘れられない女性と神への賛美歌、青年期のエネルギーの渦巻く自意識、恥じ入るような敗北感、事あるごとに襲う人々との強い異和感、ジャズへの表面的な同調と、理性では受け入れがたい実際にはすっかり変わってしまった故郷への憧憬、等々自分を取り巻いてきた時間を書きとめたような作品です。
と記された内容そのままなのです。こんなに素直に聞こえてくる曲も珍しい。多少付け加えるとすると、電話のベル、サイレン、日本民謡風、童謡風、演歌風、ショスタコ風、マーラー風、ジャズ風、指揮者のパフォーマンス付。まったくもってゲンダイオンガク風ではなく、親しみやすいメロディーはどれも何かに似ているようで似ていない。おそらくわざと外しているというかずらしているんでしょうけど。井上の多面性をそのまんま表しているんでしょうね。演奏時間は約25分位でしたでしょうか。それなりに面白かったもののちょっと冗長だったような気もしないでも・・・。

後半はおそらくこれが日本での2回目3回目の演奏と思われるバカロフのミサ・タンゴ(日本初演は昨年7月のチョン/東フィル/東京オペラ・シンガーズの演奏、私も聞きました)。構成はキリエ/グローリア/クレド/サンクトゥス/アニュス・デイと普通の曲構成ですが、歌詞はミサ典礼文から大胆に抜粋されたスペイン語訳。よって、キリエの第一声「主よ」は「セニョール」なのである。バンドネオンのどことなく哀愁を誘う音色、グローリアやクレドはまるで踊りの音楽だし、キリストが復活したりもしない(Et resurexit〜にあたる部分はそっくり抜け落ちていたりする)。日本初演の時はチョンが作品をニュートラルに捕らえていたのに対して、今日の井上は思いのたっぷり込められた情感豊かな演奏でした。キリエの思いのこもった栗友会の合唱、グローリアでの快活と中間部のゆるやかな部分との対比、クレドの生き生きとしたリズム、サンクトゥスを経てアニュス・デイで再び思いの込められた叙情性。ソロの井坂恵が良く練れた歌唱と深い音色で好印象、堀内康雄は伸びのある声ですが少し影が欲しかったかも。そして栗友会の合唱がハーモニーそして影のある音色で素晴らしい歌を聞かせてくれました。

【10月19日追記】
コメントでの指摘を踏まえて「ミサ・タンゴ」の演奏回数を修正しました。
2回目の演奏は合唱団グリーンエコーの演奏(井上道義指揮名古屋フィル)のようです。
また、来年大阪にて牧村邦彦指揮大阪シンフォニカー&合唱団でのこの曲の演奏されます。
らいぶ | comments (2) | trackbacks (0)

Comments

| 2004/10/19 15:18
一応、井上さんは昨年11月に名古屋フィル定期で「ミサ・タンゴ」を振っていますので、『東京では2回目』が正確かと思います。
josquin | 2004/10/19 23:39
> 『東京では2回目』が正確かと思います。

ご指摘&情報ありがとうございます。
次回はname欄にハンドル名でもいれていただくと幸いです。

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