彩の国ブラームス・プロジェクト 横山幸雄ピアノ・リサイタル
彩の国ブラームス(ピアノ)プロジェクト 横山幸雄ピアノ・リサイタル 第4回(最終回)いろんな意味でバランスの良く取れたブラームス演奏だったと言えるでしょうか。美しく駆逐された音、確かな様式感と構成力、旋律のみならずその他の重要な音の動きを埋もれずにはっきりと聞かせる抜群のコントロール、実の詰まった充実したハーモニー感、そして感傷に溺れない清潔なロマンティシズムで青くなくほどよく熟れたブラームスを奏でていました。プログラムの両端に置かれたヴァリエーションにその美点が良く現れていましたし、曲とのマッチングも良かったように聴きました。
1. ブラームス : 自作の主題による変奏曲 作品21-1 2. ブラームス : 6つの小品 作品118 休憩 3. ブラームス : 4つの小品 作品119 4. ブラームス : ヘンデルの主題による変奏曲とフーガ 作品24 アンコール 5. ブラームス : 3つの間奏曲 から 第2番変ロ短調 作品117-2 6. ブラームス : 2つのラプソディー から 第2番ト短調 作品79-2 7. ブラームス : 6つの小品 から 間奏曲イ長調 作品118-2
ピアノ : 横山幸雄
2004年10月2日 16:00 彩の国さいたま芸術劇場 音楽ホール
前半のバリエーション作品21-1でのみずみずしい音と適度なロマンティシズムの調和、作品118での各曲の形式(といってもほとんどA-B-Aを主体とした形式ですが)をしっかりと感じさせてくれる構成力の確かさ。後半の作品119ではほぼ作品118と同じ印象なのですが、欲を言えばもう少し音色の変化(うつろいと言ったほうが合うかなあ)を感じさせてくれると更に良かったなあと。そして、最後のヘンデル・ヴァリエーションが見事なこと。愛らしい主題提示から変奏を重ねるにつれて、だんだんと温度を上昇させて最終変奏(第25変奏)での熱っぽさ。続くフーガでもその熱さを持続させつつ、的確な打鍵で楽譜を余すところ無く表現するさまは見事というしかありませんでした。今日の演奏(もしかしたらシリーズ)の白眉でした。
あれだけの曲を弾いて、3曲もアンコールを。最後に弾かれた、本編よりもロマンティックな味を漂わせた作品118-2が印象的でした。
横山幸雄は1971年生まれですからまだ30代半ば。後期の作品は表現が段々と熟成されていくことでしょうから、また10年後位にまた聴いてみたいものです。
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