鈴木/BCJ/他 東京定期 バッハ:教会カンタータ全曲シリーズ
バッハ・コレギウム・ジャパン 第65回定期演奏会BCJの教会カンタータ全曲シリーズを聞くのは昨年の6月以来で、1年以上も空いてしまいました。スケジュールが合う限り(気が多くてなかなか難しいのだが・・・)できるだけ聞いておきたいシリーズのひとつです。
J.S.バッハ:教会カンタータ全曲シリーズ Vol.40 / ライプツィヒ時代1724年のカンタータ 14
1. D.ブクステフーデ : 「私たちから取り去ってください、主よ、まことの神よ」BuxWV207 2. J.S.バッハ : カンタータ第91番「誉め讃えられよ、イエス・キリスト」BWV91 3. J.S.バッハ : カンタータ第121番「キリストを誉め讃えよう、喜ばしく」BWV121 休憩 Intermission 4. J.B.ブオナメンテ : 5声のソナタ 5. G.ライヒェ : ソナタ第24番 6. J.S.バッハ : カンタータ第101番「私たちから取り去ってください、主よ、まことの神よ」BWV101 7. J.S.バッハ : カンタータ第133番「私は、あなたのうちにあって喜び」BWV133
オルガン : 今井奈緒子(1,4) ヴァイオリン : 若松夏美(1,4) ソプラノ : 鈴木美登里(2,3,6&7) カウンターテナー : ロビン・ブレイズ(2,3,6&7) テノール : ゲルト・テュルク(2,3,6&7) バス : ペーター・コーイ(2,3,6&7)
鈴木雅明指揮 バッハ・コレギウム・ジャパン(2,3,6&7) コンチェルト・パラティーノ(3,4,5,6&7)
コルネット : ブルース・ディッキー(3,4,5,6&7) トロンボーンI : オーレ=クリスティアン・アンデルセン(3,4,5&6) トロンボーンII : シャルル・トゥート(3,4,5&6) トロンボーンIII : デヴィッド・ヤークス(3,4,5&6)
2004年9月17日 19:00 東京オペラシティ コンサートホール タケミツメモリアル
最初はカンタータシリーズ恒例の今井奈緒子オルガンパフォーマンス。ブクスデフーデの4つの部分からなるヴァリエーション。派手なところはないけど、平易で親しみやすい曲想で演奏も安心して楽しめるものでした。
続いて本題のカンタータでクリスマス第1日に演奏されたBWV91。冒頭合唱からいつもながらの純度の高い合唱の響きが聞かれ、それだけでも満足。コルノ(ホルン)2本の細かい動きも非常に見事。5曲目のソプラノとアルトのアリアも鈴木美登里にロビン・ブレイズが寄り添う感じがいい。最後のコラールはやはりほっとします。
次はクリスマス第2日のBWV121。コンチェルト・パラティーノのメンバは合唱に混じって配置されていました(Sop/Cor/TrbI/Alt/Ten/TrbII/Bass/TrbIIIの並び順)。突出した響きではなく、合唱と溶け合った響きが美しい。
休憩後はプログラムにはなかった、コンチェルト・パラティーノの演奏で小品を2曲。カンタータでは合唱と一体とになる使い方で目立たない(というか贅沢な使い方)ので、4人のアンサンブルをきちんと聴いて欲しいという意図なんでしょう。4人と若松&今井の愉しいアンサンブルが展開されました。
さて、今日のカンタータのなかで唯一クリスマスではない時(8月13日)に演奏されたBWV101。その歌詞、演奏共になんと現代に通じていることか。「守りたまえ、戦争や飢饉から」「私たちを、罪の現場で裁かないでください」「この世と、私たちの血肉は、私たちをいつもそそのかすのです。」「悪魔の策略と殺戮からお守りください」等々。現在のいろんな世界の状況とぴったりと符合するのには参りますね。演奏も余計な強調をせずに、真正面から曲を捉えていたのがとても功を奏していたように思います。第2曲のテノールのアリアでの、技巧的なフルートのオブリガートは見事だったことを付け加えておきます。
最後はうってかわってクリスマス第3日に演奏されたBWV133。こちらは冒頭の合唱から喜びと活気にに満ちているのが印象的。ロビン・ブレイズの歌った第2曲での"Gerrost!(喜びなさい!)"の呼びかけが積極的な表現になっていました。コンサートの最後にふさわしい祝祭的な雰囲気がとても愉しい演奏でした。
鈴木雅明の指揮はいつもながら合唱、オケ共々曖昧なところのない言葉と音の捌き具合が見事です。それに、本当に無意味な見栄を張らない誠実な演奏が曲の持ち味を素直に生かしていると言えるでしょう。コンチェルト・パラティーノは突出した響きではなく、合唱と融合を重視した響きがとてもいい感じでした。
ソリスト(コンチェルティスト)も、やや憂いのある音色で滑らかな表現の鈴木美登里、積極的な表現と強さを併せ持つ声が素晴らしいロビン・ブレイズ、ドイツ語のディクティションが素晴らしいゲルト・テュルク、そして張りのある柔らかい声が魅力のペーター・コーイと各人持ち味を生かした演奏でした。
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