矢部達哉のベートーヴェン 第1回
都響やサイトウキネンオケでのコンマス席での活躍は何度も耳にしている矢部達哉。ソロはまだ耳にしたことがありませんでした。フィリアホールで横山幸雄と共にベートーヴェンを取り上げるということで、行ってきました青葉台。
矢部達哉のベートーヴェン 第1回矢部達哉というと線は細いけど繊細で美しい音楽を奏でる奏者というイメージがあるのですが、今日ソロを聞いてみると結構骨太の音楽も奏でるんですね。ややざらっとした感触を持ったまったりとした中低音域、密度と美しさ(良いときのサイトウキネンの弦みたいな)の感じられる高音域。もともと持っている繊細感だけでなく朗々と歌うスケール感も感じられて、やっぱりソロも聞いてみるもんだなあと。
1. ベートーヴェン : ヴァイオリン・ソナタ第7番ハ短調作品30−2 2. 横山幸雄 : ヴァイオリン・ソナタ(2003) -矢部達哉に献呈- intermission 3. ベートーヴェン : ヴァイオリン・ソナタ第10番ト長調作品96 encore 4. ベートーヴェン : ヴァイオリン・ソナタ第5番ヘ長調作品24 より 第3楽章
2004年8月1日 15:00 フィリアホール
ヴァイオリン : 矢部達哉 ピアノ : 横山幸雄
横山幸雄はさいたまでのブラームス・ツィクルスの1回目以来であろうか。久振りに耳にしましたが、音の粒だちや淀みのない音楽の流れは見事で矢部のサポートだけでなくピアノだけ聞いても十分傾聴に値する音楽となっていました。さいたまでのベートーヴェン・ツィクルスが肥やしになっているのは間違いないと思います。
ベートーヴェンのソナタではやはり緩徐楽章が矢部の美点である繊細な音楽作りが良く出ていました。他の楽章もスケール感は出ていますが、背伸びをしているような感じになっているような気がします。音色も中低音域での艶が出てくると違う印象を持ったのかもしれません。また、細かな音の動きでの自在感が欲しいと思いました(丁寧すぎてまじめすぎる感じ)。そういう意味で7番よりも10番のほうがより楽しむことができました。
横山幸雄の自作曲は、現代音楽らしくない旋律に満ちたロマンティシズムに満ちた音楽。ジプシー音楽みたいな要素も感じられて親しみやすい曲かと。ヴァイオリンは細かな動きは控えめで息の長い旋律をスケール感豊かに、ピアノは分散和音を中心に技巧的な動きでソロを支える音楽で、矢部達哉と横山幸雄の演奏も曲を良く把握しつつ熱のこもった演奏になっていました。
確か、矢部達哉は少し前(どのくらい前だったかは失念)楽器をストラドに変えていた筈。矢部の持ち味と楽器の持ち味を両方発揮するには、もう少し時間がかかるのかなあと思ったりもしました。
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