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V.ゲルギエフ/マリンスキー歌劇場管 チャイコフスキー・プログラム
一昨年は何度も来日したゲルギエフも、昨年は珍しく日本に一度も姿を見せませんでしたね(笑)。今年は年明け早々、手兵のマリンスキー劇場とワーグナーの指輪を引っさげて来ました。指輪の前にチャイコフスキー・プログラムが組まれたオーケストラ・コンサートを楽しみに汐入へ。
よこすか芸術劇場 ニューイヤー・コンサート2006よこすか芸術劇場でオペラやコンサートを聴くのは今日で2度目。前回は2003年4月の小澤征爾オペラ・プロジェクト「スペインの時&ジャンニ・スキッキ」の時だったので、2年以上ご無沙汰していたことになります(うちからはちょっと遠いし・・・)。
ワレリー・ゲルギエフ指揮 マリンスキー歌劇場管弦楽団
1. チャイコフスキー : バレエ音楽「くるみ割り人形」作品71 より
・ 序曲 ・ クララとくるみ割り人形 ・ くるみ割り人形とねずみの王様の戦い、くるみ割り人形の勝利、そして人形は王子に姿を変える ・ クリスマス・ツリーの中で〈冬の松林〉 ・ パ・ド・ドゥ
a. イントラーダ b. ヴァリアシオン1〈タランテラ〉 c. ヴァリアシオン2〈こんぺい糖の精の踊り〉 d. コーダ ・ 終幕のワルツ-アポテオーズ〈グランドフィナーレ〉 〈休憩15分〉 2. チャイコフスキー : 交響曲第5番 ホ短調 作品64 〈アンコール〉 3. チャイコフスキー : バレエ音楽「くるみ割り人形」作品71 より トレパック
ワレリー・ゲルギエフ指揮 マリンスキー歌劇場管弦楽団
2006年1月8日 14:00 よこすか芸術劇場
舞台上のマリンスキー管弦楽団は1Vn-2Vn-Vc-Va/Cb左(木管&金管のひな壇上左側)の並びでホルンは右側、弦は15-10-10-9-7と単純に人数比で考えるとちょっと不思議な編成(ここはいつもそうですが・・・)。中央には指揮台はなく、指揮者用の譜面台のみが置かれておりました。
プログラムの前半はくるみ割り人形の抜粋。作品71aの組曲版ではなく、序曲の後に第1幕後半4曲を続けて幕切れまで、そして第2幕最後の2曲を続けてという選曲。お菓子の精達の踊りや花のワルツは出てきませんが、物語の流れを感じることが出来るように編んだ選曲と言えるかもしれません。劇場の素直な音響とあいまって明るい弦の響きとカラフルな木管と打楽器の響きが楽しい。しかしオーケストラ全体のアンサンブルはちと荒めでしたが、曲が進むにつれて落ち着いてきました。次の「クララとくるみ割り人形~クリスマス・ツリーの中で」は劇場オケの面目躍如。ゲルギエフの(踊れるかどうかは別にして)身振りの大きなドラマティックな表現と相まって、バレエのドラマが目に浮かぶような生き生きとした情景描写が楽しい限り。パ・ド・ドゥ~グランド・フィナーレも華やかさだけでなく弦を中心に陰影の深い表現がとても印象的でした。厚みと艶のある弦が重なり更に厚みを感じさせますし、出し惜しみのないスケールの大きさ、表現の生彩といいさすがだなあと思わせる演奏でした。約40分間くるみ割り人形のドラマを腹いっぱい(後半はチャイ5なのに、笑)堪能させてくれました。こういう演奏ならバレエなしで全曲(福岡公演がそう)聴いても飽きないだろうなあ・・・。
そういえば、ゲルギエフは一時期、指揮棒の代わりに爪楊枝(?)みたいなものを使っていましたが、今日は棒は一切持たずに素手で振っておりました。
さて後半はウィーン・フィルとのライブ録音したCDも出ている交響曲第5番。一昨年のウィーン・フィルとの来日公演でも(私は聞けませんでしたが)披露していました。何年か前にFMで耳にしたベルリン・フィルとの演奏でも、物凄くハイテンションで熱かったことを思い出します。さて今日の演奏は如何に。
第1楽章から深い陰影、豊かな艶と適度な湿り気を帯びた弦がとっても魅力的。この魅力的な弦がチャイコフスキーのロマンティックなメロディーをゲルギエフがたっぷりと歌わせます。特に第1楽章の第2主題、ゲルギエフが雄大なスケールで歌わせるものだからたまらんばい(笑)。ゲルギエフはテンポを思い切って変えたり、揺らしたり、煽ったりといつものゲルギー節を展開。仕掛けは盛りだくさんなのにあざとくなく、聞き手をストレートに揺さぶるものだから(良い意味で)始末が悪い(笑)。アタッカで第2楽章へ入るとほの暗い弦の音色が印象的な序奏からホルンのソロ、もう少ししっかりとした存在感が欲しかったけどまずまず。ホルンに絡むオーボエのトップ奏者が良く通る芯の強い音で歌い、素晴らしい吹きっぷり。クライマックスのドラマティックな盛り上げはゲルギエフならでは。リズミカルさよりも叙情的な味わいが勝った第3楽章を経てアタッカで終楽章へ。うむ、ゲルギエフにしてはあっさり目の演奏だったような気がするのは私だけでしょうか(笑)。他の演奏と比べると充分に高いテンションかつ熱い演奏でしたが、彼ならもっともっといける筈。それでも、ぐんぐんと前進し、聞かせどころを外さない聞き応え充分の演奏でした。
アンコールは珍しく1曲のみ。くるみ割り人形に戻ってトレパック。この曲はこのコンビでシェエラザードの後にアンコールで聞いたことがありますが、その時同様に最後の追い上げが凄まじかった(笑)。
交響曲第5番の第3楽章で気が付いたのですが、この曲通常はトランペットが2本ですが今日は3人座っている。しかしながら、譜面台は2本しかない。どうやらこの曲を吹く1番奏者が若手(東洋人風の風貌でした)らしく、隣に先生役と思しき人が座っていてOJTしている様子でした。もちろん若手1番奏者は立派に吹き通しておりましたが、先生役が一緒に吹くと存在感が違うのね。途中から「さすが先生は違うわ」と妙な感心をしながら聞いておりました。第4楽章があっさり聞こえたのはこれに気を取られたせいだろうか・・・(笑)。
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