藤原歌劇団 イル・カンピエッロ Aキャスト
藤原歌劇団 イル・カンピエッロヴォルフ=フェラーリのオペラが上演されることは珍しいのですが、私も2001年のこのプロダクションしか見ていないなあと友人と話しつつ帰路についたのです・・・。しかし、電車の中で良く考えてみるとひとつ見てましたね。ワシントンオペラの来日公演で上演された、カレーラス主演のスライを(笑)。
・ヴォルフ=フェッラーリ:歌劇「イル・カンピエッロ」
ガスパリーナ : ダニエラ・マッズカート ドナ・カーテ : マックス・ルネ・コゾッティ ルシエータ : 野田ヒロ子 ドナ・パスクア : 持木博 ニェーゼ : 砂川涼子 オルソラ : キンガ・ドバイ ソルゼート : 中鉢聡 アンゾレート : 谷友博 アストルフィ : 柴山昌宣 ファブリーツィオ : 山田祥雄
ダニエレ・ベラルディネッリ指揮 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 藤原歌劇団合唱部 (合唱指揮:及川貢)
バレエ : マリアーノ・ブランカッチョ 伊藤範子 演出 : 粟国淳
2004年5月23日 15:00 新国立劇場 中劇場
このオペラ、アリアと言えるアリアはないし、だれが主演というわけでもない。皆のアンサンブルで進められていくオペラ。ですから、キャストにでこぼこがあるとうまく行かない。今日のキャストは演技力があって歌唱力ももちろんある人達が集められていて、各人が各役のキャラクターを良く消化していました。アンサンブルもよく練られていました。特に、女役の2人(コゾッティと持木弘)はいじわるばあさんみたいなキャラクターの道化役をコミカルに演じていて素晴らしかった。この2人がよくないとこのオペラ成り立たないですからね、おそらく。あと、オルゾラのドバイもこれから伸びて生きそうな素晴らしい歌声で、おばさん役にしとくのはもったいない。ガスパリーナのマッズカートはやんちゃな感じがよく出ていました。ニェーゼの砂川涼子は初々しい感じが役にあってました。頼りなさげな中鉢のソルゼート、豪気な谷のアンゾレートも好演でした。
生き生きとした音楽作りで全体を好サポートしたのは、指揮のベラルディネッリ。冒頭のベネツィアの水面を表した繊細な音楽から、広場でのどたばたの喧騒までヴォルフ=フェラーリの書いた音楽を余すところなく表現していたと思います。舞台上とのバランスもとてもよかった。東京シティ・フィルは3幕冒頭の弦のピッチが気になりましたが、それ以外は指揮によく応えていました。ベラルディネッリ、また聞いてみたい指揮者ですね。
粟国淳の演出はいつもどおりオーソドックスなもの。冒頭の水面と船の描写の印象的なこと。広場でのどたばたのおおげさにならない描写。2幕での同時並行的な進め方。深刻になりかねない場面での、笑いとのバランスのとりかた。3幕のファブリツィーオが広場の住人を怒鳴っているところでの笑いなんか最高(笑、賛否両論あるかもしれないけど)。どれをとってもよく考えれたもので、安心して見ていられました。
今日のような上演で聞くと(そうでなくても?)、ヴォルフ=フェラーリの音楽はとてもよく出来ています。改めて感心しました。もっと彼のオペラは上演されてよいのではないかと思いますね。
中劇場の空間にぴったりで、終演後の後味のとても良い上演でした。
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